守谷工房のMachineへ                守谷工房Topへ

Voxelab Ariesセットアップ1(2022.3.19)


ひとつ前の記事「次期3Dプリンタの模索」において、Voxelab Aries
既に1台導入済みであることを紹介しました。その後でセットアップに
ついて記事を掲載するのは順番が違いますが、実は理由がありまして。
FDM方式の難点はとにかく出力に時間がかかること、LCDなど他の
方式でもおよそそうですが。いい加減テストプリント段階は卒業して
まとまった製作を進めようとすると、この膨大な出力時間は生産性を
恐ろしく低下させます。1個のパーツ出力に5時間10時間などざらで、
生産性を維持するにはプリンタの台数を増やすしかありません。

 

1台目の試運転結果が悪くなかったので、
即もう1台の導入を決定した次第です。

 

あいにくAmazonのタイムセールが終了して
しまい、1台目より高額になってしまいました。

 

段ボール製梱包箱を開けていきます。
最上段に取扱説明書があります。

 

しっかりした緩衝材が被せられています。
製品形状に合わせて成形された再生紙製です。

 

ポリシートに入れられた製品
本体をそのまま取り出します。

 

ポリシートを外します・・、何というかちゃんとした梱包
です。製品自体もちゃんとしていればいいのですが。

 

上面に嵌め込まれた再生紙緩衝材、その
くぼみの中に電源コードが収められています。

 

緩衝材は本体の内側にも
入れ込まれています。

 

上面の緩衝材を引き抜きます。再生古紙が
利用されており、環境への配慮を感じます。

 

次に本体中段、テーブルの上に入れ
られている緩衝材を引き出します。
 

この緩衝材の中には付属の
ツールセットが入っています。
 

最下段の緩衝材を取り出すにはテーブルを
少し持ち上げなければなりません。
 

テーブルの下に手を入れ上方向に
ゆっくり力を加えると移動できます。

 

取り出した緩衝材の中に、フィラメントハンガーと
テストプリント用赤色のフィラメントが入っています。

 

Voxelab Ariesが全貌を現します。
やや小振りなデスクトップサイズです。

 

Youtubeを見ていると、○○のUNBOXING的な
動画(ほとんどが無意味)が溢れています。

 

大枚はたいて手に入れた嬉しさは分かる
けれど、シビアなレビューが伴わないとねぇ・・

 

Amazonのカスタマーレビューの方が
よほど的を得ているように思いますが。

 

保護シールを引き剥がしたところで2階の作業室に運び上げます。
作業台の上では最初に購入した1台目が既に稼働しており、その
隣に2台目を並べます。この方が格段にメンテ性が向上します。
元々この場所には、幾度も改良を加えたデルタ型Prusa型
設置されていました。いずれも既に役目を終えて引退しています。

 

セットアップを続けます。造形テーブルはビニルシートで
保護されており、頑丈なインシュロックが掛けられています。

 

インシュロックをニッパで
切断し取り除きます。

 

ビニルシートの一部は粘着シートで、
かなりしっかり貼り付いています。
 

無理をするとテーブルの昇降機構に
負荷を加えるので、いったん外します。
 

手前左右のレバーを開放する
だけでテーブルは外れるはず・・

 

ですが、奥側を押さえている金具が異常に
強力で、かなり力を入れなければなりません。

 

ビニルシートを完全に剥がします。ガラス板の
表面にカーボン材が印刷されたテーブルです。

 

テーブルを元に戻しますが、奥の金具が
きつく左右にこじりながら押し込みます。

 

輸送中の破損・損傷を防止するためガントリー
機構もインシュロックで固定されています。

 

ニッパを滑り込ませて切断します。
硬めの樹脂製でやけに頑丈です。

 

破損・損傷防止用にここまで強力な
インシュロックは必要ないと思いますが。

 

強く締め過ぎてシャフトを湾曲させるなど
逆にガントリーを損傷しないか心配です。

 

切断する際に間接的に機構に負荷を
かけないよう慎重にニッパを使います。

 

ガントリー周辺に注意書きの
ラベルが取り付けられています。

 

ガントリーの各駆動ベルトも
インシュロックにて固定されています。

 

駆動ベルトを直接押さえているので、切断する
際にベルトを巻き添えにしないよう注意します。
 

Y軸(前後)方向に2本、およびX軸(左右)方向に
1本駆動ベルトがあり、いずれも固定されています。

 

Ariesのフィラメントエクストルーダは
ボーデン式で、本体背面から供給されます。
 

梱包内で押さえ付けられていたようで
PTFEチューブに変形が残っています。

 

付属していたクリップの位置を変更し
できるだけクセを元に戻します。

 

Ariesに付属するツール類です。簡易的なスパナ2本、+と-のドライバー、
テーブルから造形物を引き剥がすスクレーパ、ノズルクリーナ、交換用ホット
エンドノズル、5本セットの6角レンチ・・が含まれます。中国製品にありがちな
おまけ
テンコ盛り状態でもなく、必要最小限で節度があってよろしいかと。

 

印刷された本体マニュアルと、ソフトウェア(スライサー)や
ドキュメント類、サンプルデータが保存されたUSBメモリです。

 

Voxelabのサポートに連絡すると日本語版
マニュアル(PDF)が送られてきます。

 

付属のフィラメントは高々2・3mの長さで、テストプリントで
失敗させないため多分上質のものだと思われます。

 

電源コードを接続します。隣に
電源スイッチが並んでいます。

 

その電源スイッチを入れます・・が、
どうしたことか電源がONになりません。

 

本体下部の電源電圧切り替えSWを確認します。
115Vで間違いないですが一度230Vにして戻すと、

 

無事に電源が入り、メロディが流れ
ディスプレイに表示が出ました。

 

「本体内でLEDが点灯します」とはこれですか。
ホットエンドブロック内部に青色LEDが灯ります。

 

システム起動直後の表示画面です。
言語は英語に設定されています。

 

「setting」メニューから「wifi」設定を選び
工房内のWifi環境に接続します。
 

接続完了と同時に本体ファームウェアの
アップデートチェックが始まります。
 

大して操作もしないうちにアップ
デートが完了してしまいました。
 

念のためにもう一度アップデートの有無を
確認すると、確かに最新版になっています。

 

アップデートにより言語オプションで日本語
(何故か「」)を選べるようになります。

 

操作メニューの表示が全て日本語に切り替わります。理解しやすくは
なりましたが、多くの他製品にも共通するように微妙におかしな日本語
です。左上にある「言葉」は「言語」、右下の「工場状態」は「工場出荷
状態」とか「初期設定」でしょう。中国語→日本語の翻訳よりも、中国語
→英語の方がまともかも知れません。ただし、英語訳もまたおかしい
可能性もあり、そのことに私が気付かないだけかも知れませんが。

 

テーブルの水平調整にかかります。過去に
散々時間と労力を費やしてきた調整項目です。

 

Ariesはその簡単さを謳い文句にしていますが、3か所の
支持点を上下調整する方式はこれまでにも存在しました。

 

ノズルとテーブルの間にコピー用紙を1枚挟み、
クリアランスを調整する作業は何度も経験しました。

 

テーブルが上昇しホットエンドが自動的に
移動して、まずZ軸の高さを調整します。

 

「Z軸変位置?」左右にある上・下ボタンを
操作するとテーブルの高さを調整できます。

 

コピー用紙が軽く挟まれて抵抗が生じる
程度・・、これが曖昧で難しいところです。

 

上・下ボタンは0.1mm単位で調整可能のはずですが、
テーブルを下げようとすると一度に0.5mmほど移動します。

 

上げる時だけ0.1mmステップで移動します。
パネルタッチの反応は良好とは言えません。
 

タッチに反応しにくい、全く反応しないことが
度々あります。「次へ」ボタンを押すと、
 

ホットエンドブロックが再び自動的に移動し、手前側
左右2点のキャリブレーションポイントに向かいます。
 

テーブルがいったん下降し、手前左側に
移動すると再び元の高さに上昇します。

 

手前側2点のキャリブレーションポイントは
テーブル下面に出たネジを回して調整します。

 

再び「次へ」ボタンを押し、ホットエンド
ブロックを手前右側に移動させます。

 

ガラス板製の造形テーブルが完全な平面であれば
3点を調整することで水平が保たれるはずです。

 

特に画期的な調整方法でもないので、どの程度
再現性と持続性があるのかは分かりません。

 

「完成?」ボタンを押すと、造形開始位置での
テーブル高さがシステムに記憶されるそうです。

 

フィラメントをセットします。エクストルーダが
フィラメントを送り出す性能が気がかりです。

 

操作メニューの「押出?」を押すと
ホットエンドの加熱が始まります。

 

操作の直後、ホットエンドはまだ室温に近い
23℃です。到達目標温度は230℃。

 

急激に温度が上昇し
200℃に近づいています。

 

このあたりでフィラメントの端を
エクストルーダの挿入口に差し込みます。

 

目標温度の230℃に達するとエクストルーダの
送り出しモーターが高速に回転し始めます。

 

フィラメントの先端がホットエンドに到達するまで
高速で引き込まれ、その後低速に戻ります。

 

ホットエンドの先からフィラメントが射出されてきました。
これだけの動作に、かつてどれだけのトラブルを伴ったか・・
 

エクストルーダが空回りしたりホットエンドが詰まったり・・、
当たり前のように射出される様子が嘘のように感じられます。

 

組み立てキットという自己責任の世界と
完成版製品の世界の決定的違いでしょうか。

 

射出されたフィラメントの先が青色をしています。ホットエンドノズル内に
残っていた製品テスト用のフィラメントでしょう。途中から白色に変化して、
その後は完全に白色に置き換わり元の青色が残留している様子はあり
ません。組み立てキット・・手作りのプリンタでは、ここまでたどり着くのに
どれだけの試行錯誤が不可欠だったか・・。しかし、かつて苦労を余儀なく
された山ほどの経験が、この進化した製品の完成度を冷静に理解する
ことに役立ちます。工房の次期3Dプリンタ導入計画は模索段階を脱した
わけではなく、30~50万円の範囲で機能と性能を追求していきます。
当面Voxelab Ariesを試験運用しながら、長期間にわたり中断したまま
だった3Dプリンタを利用した製品開発を、完全に復活させていきます。

 

守谷工房のMachineへ                守谷工房Topへ