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LASER VELOCITY AQLV-400 ジャンク品の整備(2017.4.19~)


昨年9月にオークションサイトで見つけ、墨田区内のリユース業者から購入した
レーザー加工機です。担当者は何の情報・知識もなく、ジャンク品扱いでした。
ほとんど廃棄物置き場の中にあった本機は、内外ともひどく汚れ怪しさ・危うさの
漂う1品でした。電源を入れると初期化によりX・Y軸が動作して原点に復帰します。
また、各部に使用されている部品を確認すると、どれも一級品ばかりです。50kgも
ある本体を直接引取りに出向いたので、交渉の末1万円値引きしてもらいました。

 
ネームタグには「LASER VELOCITY」、
「AQLV-400」と型番の表示があります。
 

ネット上にもほとんど情報がありません。過去に
商品が紹介された形跡が辛うじて残っています。
 

本体を支える底のゴム足4個のうち1個が紛失して
います。本体が安定しない問題を先に片付けます。
 

ホームセンターで同規格のゴム足を
購入してきました。新品は柔軟です。
 

1個当たり12kgを支えることになります。50kgの
本体は移動させるのも傾けるのも大変です。
 

機能・動作の確認よりもクリーニングを先行させます。
部品の劣化等を確認しやすく、効果的にメンテできます。
 

心臓部であるレーザー管です。ガラス表面全体に
水性とも油性ともつかない汚れがまとわりついています。
 

洗剤を吹きかけウェスを丁寧に当てて汚れを拭き取ります。周囲の雰囲気による
汚れなので簡単に落ちてガラス面の光沢が蘇ります。内部の冷却系もよく見えます。
 

加工テーブル周囲の汚れです。ハニカムテーブルの
内側にはヤニやスラッジがこびり付いています。
 

ハニカムテーブル下の受け皿です。ヤニや
スラッジに加え大量の加工屑が残っています。
 

ハニカムテーブル・受け皿いずれも取り外して
大掃除します。引取り時からの異臭源はここです。
 

クレンザーを併用し束子でこすり洗いしました。
さすがに塗装面に残るレーザーの跡は取れません。
 

ハニカムテーブルもコア内部にブラシを入れて荒っぽく掃除しました。
汚れが残ってもハニカム自体に損傷がないので問題なく使用できます。
 

加工テーブルの周囲も材料が焼けて生じたヤニが付着して
います。作業場の雰囲気による汚れも広がっています。
 

家庭用洗剤と部分的にクレンザーを
併用しながらひたすら汚れを落とします。
 

駆動部のレールや摺動部品等もクリーナーを吹きかけて丁寧にクリーニングします。一部に錆が
生じているので、防錆効果のあるケミカルも使用します。外観的には見違えるほど綺麗になりました。

 

購入時の事前確認でX・Y軸の駆動機構が動作する
ことは分かっています。あらためて電源を入れます。
 

工房内の静かな環境で電源を入れると、
内部からひどい騒音が聞こえてきます。
 

側面パネルを開けた底部分に制御系の電源ユニットが
組み込まれています。騒音の発生源はここです。
 

電源ユニット内のクーリングファンが劣化しています。
ところが、電源ユニットを取り外すことができません。
 

シールドを兼ねた大きな金属プレートに内側からネジ止め
されています。本体内部からのアクセスに切り替えます。
 

加工テーブルを固定する40mm角の
アルミチャンネルを取り外します。
 

アルミチャンネルを保持するステーが見えます。
金属プレートはステー昇降軸の奥にあります。
 

昇降軸はブラケットを介して上下で本体に固定されて
います。各4本の6角ネジを脱着しなければなりません。
 

電源ユニット内の冷却ファンをメンテしたいだけ
なのに、途方もない作業を余儀なくされます。
 

ようやく金属プレートにアクセスできます。奥のボックスは
別途用意されたレーザー管用の高圧電源ユニットです。
 

金属プレートを傾けた隙間から手を入れて、何とか
電源ユニット底面の固定ネジを外すことができました。
 

電源ユニットのカバーを開けました。大型の
放熱器が組み込まれた高品質の製品です。
 

騒音源の冷却ファンです。本体電源が入っている限り常時回転し続け、寿命時間を過ぎると
軸受にトラブルが生じます。新品に交換すべきですが今回は注油で何とかなりそうです。
 

電源ユニットを両面テープ固定に変更したので次は簡単に取り
外せます。整備しながらこの加工機の全貌が見えてきました。
 

削り出しで製造されていると思われるレーザーヘッドです。
中国製レーザー機でも高価格帯の製品に搭載されています。
 

とにかく堅牢かつ精密そのもです。加工精度を高く保つために
移動によるブレやズレを極力抑え込むための基本構造でしょう。
 

最終段ミラーの格納部分です。削り出しあるいは
ダイキャスト製の堅牢な構造で剛性が高められています。
 

2本のスプリング付きネジでフロート固定され、3本の
精密ネジで傾きを微調整するジンバル機構です。
 

ミラーを取り外して見ました。25mm径のモリブデン
ミラーのようです。ヤニや煤がまとわりついています。
 

2段目ミラーも非常に堅牢・精密に取り付け
られています。こちらも取り外して確認します。
 

ミラー表面を専用洗浄剤を使い慎重にクリーニングしてみました。汚れではなく
表面の腐食が進行しています(特に周辺部)。いずれ新しいものと交換します。
 

本体背面側の開口部から1段目のミラー、Y軸駆動用の
ステッピングモーター、レーザー管の一部を見ています。
 

1段目ミラーの保持部分です。光学機器レベルに
精密加工された台座と3点ジンバル機構です。
 

ミラー固定キャップが固く、いったん取り外してメンテ
します。やはりミラー表面の状態が良くありません。
 

ジンバルを構成する3本の精密ネジは
ツマミ部分が大きく微調整が容易です。
 

Y軸駆動用の76mmステッピングモーター。
2N近いトルクを発生させるはずです。
 

タイミングベルトを介して、左右に渡された
Y軸の駆動軸にモーターの回転が伝達されます。
 

プーリと長いタイミングベルトによりレーザーヘッド
バーを駆動します。ベルトのテンションが強烈です。
 

本体右側に延長されたY軸の駆動軸です。大型の
ベアリングを介してしっかり固定されています。
 

本体手前側でベルトが折り返すプーリです。並んで
リニアモーションレール(LM)が取り付けられています。
 

レール厚は12mmもあります。レーザーヘッドバーの
左右下部にLMブロックが取り付けられています。
 

X軸駆動用も76mmのステッピングモーターです。
8mm厚のL字金具で固定されガタとは無縁です。
 

X軸駆動ベルトテンショナーの構造です。
2本のネジで自在に調整することができます。
 

X軸タイミングベルトが折り返す左側プーリです。
X軸もLMレール+ブロックにより摺動します。
 

Z軸駆動用(加工テーブル昇降用)のステッピングモータ。
中間プーリを介してベルトを引き込む凝った設計です。
 

AQLV-400を制御するボードMPC6515。かなり旧式ですが
必要なファンクションはほぼ備えています。ネット上に解説があります。
 

本体のパネルからMPC6515をモニタ・操作
します。ファームウェアはバージョン4.0.3。
 

本体背面側のパネルに、電源ソケット、ヒューズホルダ、
ACアウトレット、エア接続口、冷却水入出ポートが並びます。
 

本機に付属していなかった冷却系(ポンプ・配管)を用意し
最終動作確認に臨みます。が、レーザーが発光しません。
 

レーザー管の寿命、高圧電源ユニットの故障・・いくつも
原因が考えられます。水流センサーもその一つです。
 

ポンプを駆動しても排水量が少なく、水流の
どこかに抵抗が生じていることが予想されます。
 

センサー内のマグネットプランジャーが水流に
より移動し、リードスイッチをON・OFFさせます。
 

長年の使用による汚れ付着や経路の詰まりも
考えられます。防水シールを除去し分解します。
 

柔らかいスプリングの手前で
プランジャーが上下する構造です。
 

プランジャーを取り出して見ました。先端の内部が黒み
がかっているのはマグネットが内蔵されているからです。
 

用意したポンプの吐き出し圧力が不十分で、スプリングの
張力に負けているようです。いっそ取り除いてしまいます。
 

吐き出し水量がかなり増加しました。
冷却能力的にはこの程度で十分でしょう。
 

水流によりリードスイッチが確かにONに
なります。これで解決することを願います。
 

レーザー管の発光が確認できました。レーザー管も電源ユニットも制御ボードも、
特に問題がないことになります。様々な懸案が一挙に解決に向かいます。
 

レーザー管の出口、1段目ミラーの手前に紙をかざしてみます。
レーザー照射を受けたところに黒く焦げたスポットが生じます。
 

整備作業による影響か、元々引取り時点からなのか、かなり光軸が狂っています。
次は光軸調整を進めます。優れた機構と高い再現性により作業は難しくないと思い
ます。ジャンク品故にリスクの高い挑戦でしたが、業務用途に耐え得る本格的な
(まともな)マシンに巡り合うことができ、多くの知見を得ることができました。

 

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