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特注リビングキャビネット製作 その1(2017.8.3)


しばらくぶりに家具製作のご依頼をいただきました。リビングでソファー背面の空間に
ちょうど良いサイズのキャビネットをご希望です。A4ファイルと書類トレイを収納し、
前面に開き戸を取り付け、キャスターで簡単に移動できるようになさりたいそうです。


 
 1.設計


実際にリビングにお邪魔してご希望のサイズを
確認しました。横900mm、高さ600mm、
 


奥行きは250mm程度とのことです。
CADで図面を描いてみました。
 

立体図を印刷し確認と了解をいただきます。部品加工から全て
製作していくと、時間・手間がかかり、費用も高くつきます。

 

ホームセンターで組み立て式家具の中から
最も設計仕様に近いものを探します。
 
 

同一サイズの製品がある・・はずはなく、870mm
×600mm×294mmのこの製品が流用できそうです。
 
 
 2.主要部品の加工


製品に含まれる全部品(ボード)です。接合部はダボ組
なので、このまま組み立てて終了ならば、楽なのですが。


 

全ボードの奥行きを修正します。294mmを
260mm(10mmの余裕を含む)にカットします。

 

フラッシュ式ボードで内部が空洞の
ためあっけなく切れてしまいます。

 

切断位置が芯材を外れて空洞部にあるため、
化粧合板に挟まれた切断面が開放状態になります。

 

著しい強度の低下を招くので、新たに芯材を入れて
補強しなければなりません。空洞の幅を測ります。

 

12mm幅の芯材が必要です。昇降盤の
フェンス位置を12mmにセットします。

 

ストックの中からMDF材を選びました。
12mm厚の芯材を切り出します。

 

断面の開放部とサイズを確認します。
接着剤が入る分も含めて丁度の幅です。

 

必要な長さを取り切断します。ほとんど
材料が暴れないので造作が簡単です。

 

長手方向のサイズも確認します。
こちらも丁度良い長さです。

 

芯材の左右両面に接着剤を付けます。
塗り広げるほどではないでしょう。

 
 
切断面の空洞開放部に嵌め込みます。
これで元通りの材料強度を維持できます。

 

接着剤が乾燥するまで、
クリップで固定しておきます。

 

他の芯材と干渉する部分は、面倒でも
それぞれ分割しながら補強します。

 
 
接着剤が完全に乾燥する
まで、しばらく放置します。

 

左右の側板の長さを調整します。
600mmを555mmに切断します。

 

キャスターの高さが45mmなので
合計600mmの高さになります。

 

切断により再び芯材が失われ
断面が空洞開放状態になりました。

 

こちらも芯材を入れて
ボードを補強します。

 

仕切りになるボードです。上段用の
1枚は172.5mmに切断します。
 

逆に下段用の2枚は、切り落とした端材を
継ぎ足して330mmに修正します。

 

再び断面に空洞開放部が出たので、
ここにも芯材を入れて補強します。

 

棚板の取り付け位置も変更しなければ
なりません。ダボ穴を開け直します。

 

棚板側のダボの位置は変更できないので、
ダボ穴の位置をできるだけ正確にとります。

 

表側に貫通してしまうと台無しになるので、
ストッパーを取り付けて深さを一定にします。

 
 3.本体組み立て


準備が整ったので本体を組み立てます。
元のダボ加工を最大限に利用します。

 


上段仕切り板の下側は、ダボが切り落とされているので
中段棚板の裏面から木ネジを打って固定します。

 

製品の組み立て説明書には、ダボ部分のみ接着剤を
入れるよう指示されています。それでは不十分です。

 

化粧合板表面は接着剤が効かないので
接合部の表皮を削り落としておきます。

 

クランプをかけて固定します。が、
フラッシュ材なので無理は禁物です。

 

他方の側板は、底板と同時に組み込む必要があり
ます。下段仕切り板に端金をかけて固定します。

 

最後に底板を取り付けます。下面側から
木ネジを打って、下段仕切り板を固定します。

 

ご要望通りに移動用キャスターを取り付け
ます。前側2個にロック付を使用します。

 

リサイズされた特注キャビネットが形になってきました。原材料加工から
始めていたら、ここまで来るのも大変です。既製品を元にした製作は、
塗装仕上げの必要もなく、時間や手間を大幅に省くことができます。

 
 4.開き戸の製作


元の製品には開き戸がなく、ご要望に
沿うためには追加製作するしかありません。

 


本体と色合いの揃った化粧合板を利用します。
MDF材から芯材にする桟を切り出します。

 

開き戸の裏面側は3mm厚のラワンベニヤを
当てます。ベニヤ板を落し込む溝を加工します。

 

先に周囲の桟から接着します。
クリップで固定しておきます。

 

周囲の木端面を仕上げるのは面倒なので、
出来るだけ面(つら)を合わせて接着します。

 

裏面に貼り付ける3mm厚ベニヤ板を用意します。
中の桟はベニヤ板の厚み分、薄く切り出しています。

 

周囲の桟は溝の内側へ、中の桟は
上・下面に接着剤を付けます。

 

ベニヤ板を置きます。正確に採寸されていれば
周囲の桟の内側に嵌まり込むはずです。

 

開き戸が歪んでいると、閉まり具合に支障が
出ます。昇降盤の定盤上で平面を維持します。

 

左右2枚の開き戸を重ね、ウェイトを
置いて固定し接着剤の乾燥を待ちます。

 

開き戸の裏面を、艶消し黒スプレーで塗装します。表側化粧面に
塗料が回らないように注意します。3回ほど重ね塗りします。

 

稜線に沿って僅かでも木地が露出すると非常に
目立ちます。サインペンで塗り潰しておきます。

 

木端・木口の仕上げには木口テープを使用
します。ほとんど同色のものを入手できました。

 

裏紙を剥がしながら表側の面(つら)を合わせながら
貼り付けていきます。コーナーごとに切り離します。

 

木口テープの幅が開き戸の厚みを僅かに
上回っており、微妙にはみ出ています。

 

専用の面取りカッターが市販されている
のを知っていますが、小鉋で片付けます。

 

折角塗装した木地を削らないようぎりぎりに攻め
ます。が、木口テープの断面が白く見えています。

 

そのままでは戸を開けた時に意外と
目立つものです。サインペンを使います。

 

木地の艶消し黒と同化して
ほとんど目立ちません。

 

開き戸2枚の完成です。製品本体の表面処理は、ビニル系の木目プリントコーティングで
若干の艶があります。開き戸に使用した化粧ベニヤは同色で艶のない突板処理です。
開き戸も含めて全体がビニルぽい仕上げになるよりも、落ち着いた高級感のある印象です。

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