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押し入れ棚取り付け(2018.2.14)


市内にある集会所の押し入れです。以前に襖紙の張り替えをご用命いただきました。
今回は、同じ押し入れの中に棚を取り付けて欲しいとのご要望です。事前に下見に
伺うと、棚がないため確かに押し入れ内の空間の利用効率がよろしくありません。
 

家庭にある押し入れでは、布団を上下に分けて
収納するため棚が付いていることが一般的です。

 

反対側もうひとつの押し入れです。やはり棚が
ないため、座布団を高く重ねて収容しています。

 

こちら側は、右奥の角がPSか何かのため
30cmほど手前に飛び出た部分があります。

 

飛び出しは天井から床面まで続きます。この
部分を避けて棚を取り付けなければなりません。

 

作業当日です。伺う前に物品を全て運び
出しておいて下さいました。助かります。

 

向かって左側の押し入れの見取り図です。
材料を調達するための簡単な設計図です。

  

向かって右側、飛び出しのある側の押し入れです。
こちらも中の物品が綺麗に運び出されています。

 

飛び出し部分を含めた見取り図です。周囲と中間に
支えとなる板材を巡らせ、上から合板を打ち付けます。

  

見取り図を元に材料の必要量を割り出しHCにて調達、現場搬入しました。
支え材になる1×4材は、事前に工房にてサイズの調整を終えています。

 

最初に奥側の支えを取り付けます。必要な長さを測る
際、コンベックスを折り曲げる方法は誤差が伴います。

 

面倒ですが、コンベックスを2方向
から当て直して正確に測定します。

 

高さは3尺(900mm)、支え板の幅を見込んで
940mmとします。取り付け位置を決定します。

 

レーザー水準器があるので、正確な水平を出す
のは簡単です。この手の場面で失敗は皆無です。

 

スライドソーを搬入しているので、材料の切断も簡単
・正確に作業できます。奥側の支え材を固定します。

 

38mmのコーススレッドを電動ドライバで打ち
込んでいきます。壁面内部はコンパネのようです。

 

左側側面の支え材です。手前柱までの長さを
現物合わせで採り、板厚2枚分を差し引きます。

 

こちらもレーザー水準器で水平を割り出し
ながら、コーススレッドを打ち込みます。

 

手前の支え材は、左右側面の支え材の木口に、
接着剤を併用しコーススレッドを打って固定します。

 

間隔均等に中間の支え材を入れ
ます。支え材枠の出来上がりです。

 

棚板となる合板を用意します。夏場の湿気と強度を
考慮し、5.5mm厚の耐水性合板を選びました。

 

ほとんどの家屋に共通する問題として、
床面形状は正確な四角形ではありません。

 

角が直角でないため、縦横の寸法のみを正確に
把握しても、合板を入れることは出来ないのです。

 

縦横に加えて対角線方向の寸法を測り、複数の
三角形に分割することで正確な形状を決定します。

 

測定結果を基に左側押し入れの平面形状を描くとこのようになり
ます(デフォルメしています)。四隅の全てが鋭角か鈍角です。

 

支え材の取り付けまでは順調に進みましたが、
平面の不定形を再現する作業で時間が過ぎます。

 

電動丸鋸で寸法線通り丁寧に切断しました。
結果は、嵌め込んでみないと分かりません。

 

すんなり嵌まってしまいました。
4辺にほとんど隙間は見られません。

 

手前の支え材は、化粧を兼ねA級グレード材を重ねて
取り付けます。合板の厚み分、幅を広くしてあります。

 

幅を広くしたのではなく、他の支え材の幅を厚み分
だけ狭くしてあります。これで合板の木端が隠れます。

 

取り付けは、奥側の支え材から32mmの
コーススレッドを打ち込み固定します。

 

白色に着色された建具用ほぞ釘を
等間隔に打ち、合板を固定します。

 

シャッターボタンが右側にあり、右手で操作するため
どうしても左利きの写真になります。実際は右利きです。

 

左側押し入れの棚の取り付け完了です。合板を嵌め込むだけで
半分以上の時間を費やしています。化粧板を兼ねた手前の
支え材があるので、コーススレッドの頭が一切見えません。

 

右側もう一つの押し入れの作業にかかります。平面形状が
複雑でも、レーザー水準器があれば簡単に水平が出ます。

 

スライドソーで材料を切断し、能率
良く壁面に固定していきます。

 

予め材料にコーススレッドを途中まで(反対側に先が
出る寸前まで)打ち込んでおくと、能率が上がります。

 

飛び出し部分も現物合わせで寸法を採り、
正確に支え材を取り付けていきます。。

 

こちらの押し入れも壁面内部はコンパネ、あるいは何か
木質材料のようで、コーススレッドが効くので助かります。

 

左右支え材の木口のみ接着剤を併用します。
手前支え材の取り付け強度確保のためです。

 

木口に向けてコーススレッドを打ち込みます。材料端が
割れないようここだけ細いコーススレッドを使用します。

 

中間の補強材を入れます。一方を固定する
まで、他方をクランプで仮固定しています。

 

直角に切断されている端材を当て、
補強材取り付け位置を垂直に保ちます。

 

手前支え材の外側からコーススレッドを打ちます。
奥側は斜め方向に細いコーススレッドで固定します。

 

飛び出しのある変則的な形状ですが、支え材の取り付け終了です。
左側の押し入れ同様、ここまでは特に問題なく進んできました・・が、

 

現場で即製した直角定規を各隅に当ててみます。
およそ直角ではありません、かなり歪みがあります。

 

ひとつとして直角(ほぼ直角)な隅はありません。
左側の押し入れ以上に厄介なことになりそうです。

 

実測の結果を描き出してみるとこのようになります。右奥に飛び出しがあるため対角線
方向長さの把握も困難です。職人である大工さんたちはどのように解決するのでしょう。

 

対角線の長さを頼りに三角形を割り出し、合板上に
切断線を下書きするも頂点がなかなか一致しません。

 

今一つ自信が持てないまま切断に入ります。クランクの
部分は電動丸鋸が入らないので手引きで作業します。

 

切り終わりでは鋸を垂直に立てます。5.5mm厚の
耐水合板は材質が硬く、切断に時間がかかります。

 

把握した(つもりの)寸法に切断し終わりました。
上手く嵌まるか否か、当ててみないと分かりません。

 

躊躇したところで他に打つ手がありません。一か八か載せてみます。
取りあえず、センチメートル単位で大きく間違えてはいないようです。

 

手前にかなりはみ出しています。どこかで
奥方向につかえていることが分かります。

 

飛び出し部分では奥が詰まり手前が
空いています。かなり調整が必要です。

 

詰まっている部分、すなわち材料が飛び
出ている部分を鉋で削り落とします。

 

左側側面への当たりも、もう少し調整が
必要です。手前が詰まっています。

 

何とかここまで追い込みました。深追いすると逆に削り過ぎて
隙間が広がり、手に負えない事態になりかねません。

 

本職プロの大工さんがどれだけ緻密で鮮やかな技を身に着けているのか、心底思い知ら
されます。彼らの仕事は、単に正確な直線や四角を出すことではないのです。曲がった
もの、狂っているものに合わせて正確無比に寸法や形状を出せるところが凄いのです。

 

最後に化粧を兼ねて、A級グレード材を手前支え材に重ねます。奥側や左右
側面のように、支え材が壁面に固定されないので2枚を重ね合わせ強度を向上
させる意味があります。結果は、体重〇〇kgの自分が乗っても全く撓みません。
上下に分かれた押し入れを、多くの物品の整理に利用いただけると幸いです。

 
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