守谷工房の製作品へ                守谷工房Topへ

化粧鏡台の修復過程 その3


本体表面を研磨した後、1年近くもそのままにしておりましたが、額縁の修復を終えると
急に後ろめたさと製作意欲が募り、残りの作業を続けることにしました。本体および引き
出しの修復・再塗装を終え、鏡枠の修復段階に入ります。額縁の修復経験が生きます。


 
 5.鏡枠の修理


取り外した鏡木枠の右上の留め部分です。留めが
壊れて隙間が見えます。近くに損傷もあります。
 


簪(かんざし)が入っているので分離しない
ものの、見栄えが悪くぐらついています。

 

背板を取り外します。丁寧なことに固定
ネジは化粧布の下に隠されています。

 

ネジを打ち込んでから布を張ったのでしょう。
布を欠き取るとネジの頭が出てきます。

 

溝が錆び付いているネジもあるので
溝を壊さないよう慎重に緩めます。

 

薄い合板製の背板を外します。ネジ溝が+という
ことは、後から交換されたことがあるのでしょうか。

 

しかし、背板に張り付けられた化粧布は
年数相応にかなり劣化が進んでいます。

 

背板と鏡の間に緩衝材が入っています。ポリエチレンの
クッションシートということは当時のものではありません。

 

鏡の表面がやけに綺麗で傷や腐食が見当たりません。周囲には幅広の
面取加工が施されており、やはり当時のガラス加工技術によるものでは
ないようです。一度鏡が破損し、新しいものに交換されているのでしょう。

 

留め接ぎが完全に破損していますが、修理
しようにも簪が残っているため分離しません。

 

元の簪を除去する必要があります。これは
簪の溝を切り込むため自作した冶具です。

 

90度V字の内側に木枠を合わせ
クランプでしっかり固定します。

 

簪の位置を丸鋸刃が通るようフェンスを
調整し、刃の高さを簪の深さに合わせます。

 

丸鋸刃の厚みが簪の厚みとほぼ同じ
なので、一発で簪が取り除かれました。

 

簪を無理に引きちぎると、留め
接ぎの接合面に凹凸が生じます。

 

職人技により丁寧に製作された家具なので、修復作業にもそれに
見合った慎重さが必要です。無事に留め接ぎを分離できました。

 

下側左右の留め接ぎ部分です。やはり
留めが壊れかけ隙間が生じています。

 

横から釘が打たれているようで
釘穴にはダボが埋められています。

 

ドリルを当ててダボを取り除きます。
間もなく釘の頭に接触します。

 

内部で鉄釘が錆び付き、緩んでいるのに
抜けてきません。当て木をして玄能で叩きます。

 

こちらも無理をすると留めの接合面に
傷が付き、仕上がりを損ないます。

 

固化した元の接着剤が残り、
接合面がかなりあれています。

 

接合面どうしの密着を図るため、スライドソーで
接合面を僅かに切り込み平面に整えます。

 

切り込みすぎると組み付け時に全体の寸法が
縮まり、鏡が入らなくなる恐れがあります。

 

組み立て直す準備が整いました。製作
された当時と同等の仕上がりを目指します。

 

接着剤はタイトボンドを使用します。非常に
硬く固化するので額縁以来、重宝しています。

 

接着剤が固化するまでセロハンテープで養生、固定します。
額縁製作専用の固定具もありますが、この方が精度が出ます。

 

接着剤のみでは耐衝撃性に欠けるので
(釘ではなく)木ネジを打ち込みます。

 

元の釘よりも太いので、木枠を割らない
よう少し大きめの釘穴を開け直します。

 

木ネジを少しずつねじ込みます。
製作当初の強度を上回るはずです。

 

他方の留めも接合を終えました。接合境界の
表面に材料の小さな欠損が見られます。

 

木工パテで補修します。研磨と着色によりほとんど
分からなくなるでしょう。同時に釘穴も埋めます。

 

続いて上側左右の留めを接合します。
新しい簪材(2.7mm合板)を用意します。

 

接着剤を入れて留めを接合し
同時に簪を差し込みます。

 

縦横の木枠に歪みが残らないよう、工作台
テーブル面にクランプで押さえ付けます。

 

木枠表面の各所にこのような欠損が
見られます。何かにぶつかった痕でしょう。

 

木工パテを当てて補修します。研磨後に表面が
同一平面化するよう僅かに高く盛り上げます。

 

鋸で簪の大部分を切り落とし、鉋で
木枠ぎりぎりまで形を整えます。

 

鉋が木枠自体にかかると、木枠の
形状を一挙に変えてしまいます。

 

最後はハンドツールで
ペーパーを丁寧にかけます。

 

十分な強度を持った留め接ぎを復元しました。作業して
いると、製作当時の職人技の繊細さが伝わってきます。

 

木枠全体を研磨します。木工パテで補修
した部分も同時に成型してしまいます。

 

横着をすると側面に不規則な傾斜が生じ
ます。木枠を極力垂直に置いて研磨します。

 

欠損や割れの隙間に木工パテが
入り込み綺麗に成形されています。

 

木枠を裏返して背面側も
軽く研磨し表面を整えます。

 

クリーナーで研磨粉を十分吸い
取り、再塗装の準備を整えます。

 

既に塗装を終えている部分と同じ手順です。
先にオイルステインでムラなく着色します。

 

突板ではなく桑材の薄板を貼り合わせた構造
です。桑の美しい杢が浮かび上がっています。

 

先にカラースプレー(クリア)を下塗りしておきます。乾燥した後、
耐久性に優れるウレタン樹脂塗料を数回にわたり重ね塗りします。

昭和を偲ぶ化粧鏡台の修復へ

化粧鏡台の修復過程 その2へ

化粧鏡台の修復過程 その4へ

 

 

守谷工房の製作品へ               守谷工房Topへ