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木製灯籠を作る その3(2020.8.21)


いよいよ本体箱組み部分の製作に入ります。灯籠全体を同じ材料(樹種)で
製作した方が統一感があり好ましいでしょうが、箱組み部分には面積のある
薄板を使用する必要があり、大概の単板材は採用できません。元の灯籠も
そうであったように、無理をせず合板(シナ合板)を使用することにします。
各辺の実測長をひたすらCADに入力し、部品形状を構成していきます。

 

半世紀以上も前のベニヤ板に比べ、現在の
合板は耐水性がはるかに向上しています。

 

箱組みの周囲4面分の合板を用意します。
昇降盤で粗方の寸法に裁断しておきます。

 

シナ合板の難点は、化粧面側も自然木と
しての杢理が損なわれ風合いを欠く点です。

 

突板で化粧し直すか塗装を工夫するか・・、
いずれにしても加工性の高さが勝ります。

 

4mm厚合板は工房のレザー加工機で自在に
カットできます。しかも、正確で綺麗です。

 

満月をあしらった本体右側の側板です。
切断面は焼け焦げて黒く変色します。

  

本体前方の正面板をカットしています。
上部の細いスリットを精密にくり抜きます。

 

元の灯籠では、糸鋸で手引きしてくり抜いた
はずです。正確な手加工に驚かされます。

 

本体箱組みに必要な4面分の部品が切り出されました。左側面には半月を
あしらっています。レザー加工中の焼煙により、材料表面が薄く焦げたように
変色しています。組み立てる前に軽くペーパーをかけて取り除いておきます。

 

マスキングテープで部品同士をつなぎ、
接合面に接着剤を入れていきます。

 

稜線の全長にマスキングテープを渡すと、
全体として剛性感のある固定ができます。

 

接着剤はここでも耐水性の
あるタイプを使用しています。

 

1か所当て木をして垂直を保ちます。また、
箱組みが歪まないようテープを追加しています。

 

接着剤が乾燥・固化しマスキングテープを取り去ると、自立する箱組みとなります。
もう一度表面にペーパーをかけ、接合部の僅かな目違い(段差)を取り除きます。
元の灯籠はこのままの構造ですが、さすがに接合部の強度が十分ではありません。

 

加えて、接合部稜線の美的外観があまり
よろしくありません。新たに化粧を施します。

 

セン材を加工してカギ型の桟を作ります。昇降盤で
溝を加工すると、どうしても焦げ跡が残ります。
 

表側の見える部分は、軽く鉋を
かけて地肌を出しておきます。
 

この桟を稜線に沿って貼り付けることで
外観を改善しながら強度も向上させます。
 

桟との当たりは正確な90度ではなく、完全には
密着しないので接着剤を多めに入れて充填します。
 

端を底面側に合わせ、後で屋根側を
切断して長さを合わせることにします。
 

既に出来上がっている台座に載せてみます。まだ屋根無しですが、箱組み建屋の
全体像が見えてきます。桟を貼り付けたことで箱組みの強度が向上しています。
 

屋根方向に飛び出して
いる桟を切り詰めます。
 

屋根の傾斜に合わせて切断する
ことで、屋根板との干渉を避けます。
 

さらに軒桁との干渉も避けなければなり
ません。桟の一部を切り欠くことにします。
 

シナ合板との接合面に
慎重に鋸を入れます。
 

軒桁を取り付けると隠れるので
鑿で仕上げるほどではありません。
 

軒桁となる材料は、断面が屋根の傾斜角に
対して補角となる平行四辺形に加工します。
 

桟を切り欠いた部分に当ててみます。
屋根の製作はまだ後になります。
 

内側の塗装に備えて
外側を養生します。
 

箱組み建屋の内部は
艶消し黒で塗り潰します。
 

内部を覗き込んだ際に、外部との
陰影関係を醸し出すためです。
 

カラースプレーが吹き出さないよう貼り
付けたマスキングテープを剥がします。
 

内部の黒色に連続することで、レザー加工機の
焦げ跡がほとんど目立たなくなっています。
 

本体の外装をどのように仕上げるか、決定しなければならない最終段階です。
経験からして、シナ合板への着色はほぼ失敗します。突板を張るには、くり抜き
部分を綺麗に仕上げられそうにありません。木目のビニルシートなど論外です。
 

結局、シナ合板の表面はそのままに
半艶消しのクリアを刷毛塗りすることにします。
 

一定期間屋外で使用されるので、雨天に備えて耐水性を
持たせる必要があります。4・5回重ね塗りします。
 

満月と三日月のくり抜き部に障子紙を当てます。
本体の部品データよりひと回り大きく描きます。
 

元の灯籠には撥水処理された障子紙が張られて
いましたが、今回は1mmのプラ板を使用します。
 

レザー加工機で
正確に切り出します。
 

周囲に接着剤を付けます。
ゴム系の接着剤を使用します。
 

本体上部が開いているうちに
貼り付けてしまいます。
 

やはり障子紙とは違い、ややチープな印象です。
破れて張り替える必要はありませんが・・。
 

同じように三日月も貼り付けます。さて、
蝋燭の炎に対して耐熱性が懸念されます。
 

しかし、一部の難燃性障子紙(高価)を
除き、適当な材料が見当たりません。
 

満月にしても三日月にしても、綺麗に出来て
しまい今ひとつ風情が感じられません。
 

そこで、グリルとなる部品を作り
周囲を縁取ってみることにします。
 

作成済みのデータから、ひと回り
大きくシナ合板から切り出します。
 

艶消し黒で塗装も済ませましたが、実際に本体に
当ててみるとどうも不細工な印象で・・、取り止めます。
 

本体箱組み部と台座との合体方法を考えます。
細い桟を切り出し、両端を留め加工します。
 

箱組みの底面内側の
周囲を巡らせます。
 

留め接合部に隙間が出ないよう、
正確にサイズを調整します。
 

この部品も、同じく艶消し
黒で塗装しておきます。
 

蝋燭を灯す度に内部が覗き込まれるので
一部の部品だけ白木のままには出来ません。
 

留めの接合面にも接着剤を入れながら
底面の内側に組み込んでいきます。
 

クリップを掛けて圧着し、
接着剤の固化を待ちます。
 

内側周囲に巡らせた桟を手掛かりに、
本体箱組みと台座を合体させます。
 

合体させる段階はまだ後ですが、巡らせた
桟に一定間隔でネジ穴を開けておきます。
 

本体内側から木ネジを打ち込むことで、
両者を合体させることが出来ます。
 

本体箱組みと一緒に、既に完成している台座にも塗装を施しました。ウレタン塗料を
4・5回重ね塗りしているので、お墓参りの期間中に屋外で多少の雨に遭っても特に
問題ないと思われます。元の灯籠は、老朽化したとはいえ半世紀以上も持ち応えた
わけです。性能の向上した現在の塗料が同じ年月を耐えるか、その時が来てみないと
分かりません。もちろん、半世紀後の姿を眺めることなど、叶うわけがありませんが。
 

台座が出来上がったところで
蝋燭の受け皿を補修します。
 

50年以上も昔に缶詰の空き缶で作られたもの
です。再利用してさらに後世に残すことにします。
 

表面の蝋や錆びを落とし、下塗りに
プラサフを吹いてから金色に仕上げます。
 

缶の下には、粗い花崗岩を整形したもので
しょうか、耐火性の円盤が入れられています。
 

表面が非常に粗いので、ゴム系の接着剤を多めに入れて台座に接着・固定します。
蝋燭を立てる中心の釘も再利用します。よく見るとこれは断面が四角形の和釘です。
ほんの少しだけですが、当時が偲ばれる古い材料を、新しい灯籠に引き継ぎます。

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