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ピアノ用椅子の修復 本体修復編(2016.11.2)


厄介な座板の複製作業を終え、脚部の修復に移ります。
座板ほどの手間はかからないと思われますが、長い年月を経て、
あるいは少々元気良く扱われてきたのか、傷みは深刻です。

 
 1.本体下地調整

座板を昇降させる際に、左右で爪を
固定する金具です。取り外します。
 

足底のパッドを抜き取ります。
4本のうち1本は欠損していました。
 

120番のペーパーを取り付けて
全体にハンドサンダーをかけます。

 
劣化した塗装表面を除去し
傷をひと通り取り除きます。
 

ハンドサンダーの届かない部分は
手作業で研磨スポンジシートをかけます。
 
 
塗装を全て剥がして木地を
出すことは適切ではありません。
 

不透明塗装は下地を整えて上塗りすることで
修復可能です。掃除機で研磨滓を除去します。
 
 
最初の下地調整を終えました。まだ、
大小の傷が残りますが先に進みます。
 

くまなくプラサフを吹き付けます。速乾性でムラなく吹き付けることができ
研磨性も良好です。吹き付け面積当たりの費用が高いことが難点です。
 

全体にプラサフがかかりました。下地の良好な
部分は、既に上塗り可能な状態にあります。
 
 
しかし、よく点検してみると表面の荒れている
部分もあります。下地が荒れていた結果です。
 

かなり大きな傷跡もあります。プラサフを吹く
ことで問題のある部分が浮き上がってきます。
 
 
釘を打った痕のような大きな穴もあります。
補修の必要がある部分が顕著になります。
 

脚の先端近くは移動時にぶつかることが多い
せいでしょう、塗膜の剥がれも目立ちます。
 
 
最初のプラサフ吹き付けにより問題個所を
明確にし、木工パテを使った補修を加えます。
 

木工パテを無駄なく効率的に
当てることができます。
 
 
木工パテの乾燥を待って
ハンドサンダーで研磨します。
 

最初のプラサフはいわば問題個所の発見用
なので、研磨で落ちてしまっても構いません。
 


木工パテやプラサフが色濃く残っている
部分は、元々傷等が深かった箇所です。
 

手作業による研磨も加えて
表面を丁寧に調整します。
 

再度プラサフを吹き付けます。
一挙に表面が整っていきます。
 

背もたれ部分の吹き付けを終えました。塗装面との
距離、吹き付け速度が塗膜の厚みを決定します。
 

全体に吹き付けを終えました。吹き付けと研磨を
繰り返すことで塗装の品質が向上します。
 

全体には2回の吹き付けで十分ですが、部分により研磨と
吹き付けを追加します。十分乾燥させて上塗りに入ります。

 
 2.座面張り替え

元のレザーシートは一部に穴が開いており、
長い年月を経て変色し材質も劣化しています。
 
 
レザーシートの穴は、中の
スポンジシートにも達しています。
 

折り返し部分を広げると、変色の具合がよく
分かります。同色の新しいシートを用意しました。
 

スポンジシートも新しいものに交換します。
黒色の硬質スポンジシートを用意しました。
 

合板に合わせてスポンジ
シートを型取りします。
 

5mm厚のシートなので軟質スポンジでは合板の硬さが
出てしまいます。演奏に集中するには硬質が良いでしょう。
 

新しいレザーシートを形に合わせて切り
取ります。周囲に4cmほど余裕を残します。
 

余分を合板の裏側に折り返し、シートの
隅を引きながらホチキスで固定します。
 

4辺の固定を終えてから、角の始末にかかります。
鋏で切り込みを入れながらホチキス止めします。
 

角の始末はシートの厚みが影響しない
よう、できるだけスリムに仕上げます。
 

クッション板の完成です。新しいレザー
シートが新品の雰囲気を醸し出します。
 

座板と合体させてみます。中に何か所か接着剤を入れて
圧着します。ぎりぎりで取り外し可能な固定とします。

 
 3.金具再塗装

修復(元の状態を再現する)を目指す
以上、金具にも手を加えます。

 

汚れがまとわり付いた金具を
洗剤を使って水洗いします。
 

十分乾燥させてから、本体と同じ
艶消し黒で塗装し直します。
 

汚れて劣化した塗膜が消失し
品の良い材質感が戻ってきました。
 

付属する小物金具も
全て再塗装します。
 

パンタグラフ機構の前部スライドを保持
する金具です。錆が生じていました。
 

昇降機構を開放するためのレバー
です。宙吊りにして塗装します。

 

レバー操作の際に指をかける金具です。
落ち着いた艶消し面に近づいています。

 
 4.本体再塗装

プラサフの乾燥・固化を待ち、サンド
ペーパーで全体を研磨します。
 

表面をできるだけ滑らかに仕上げます。掃除機で研磨滓を
吸い取りながら、ひたすら指先で撫でて確認します。
 

艶消し黒スプレーを吹き付けます。
数回に分けて仕上げていきます。
 

乾燥が進み吹き付け直後の艶が引くと、
生まれ変わったような印象に変化します。
 

丹念に下地を整えたつもりですが、上塗りの段階で
あらためて調整の足りない部分が見つかります。
 

塗膜の完全乾燥を待って、再度サンド
ペーパーで問題のある表面を研磨します。
 

吹き付けを急いだ結果、塗膜に小さな
泡が生じている部分もあります。
 

研磨を終えた後、研磨滓を完全に
取り除き再度塗料を吹き付けます。
 

修復品としてほぼ満足できる
仕上がり状態でしょう。
 

スプレー缶による吹き付け塗装を終え、十分な乾燥に入ります。1昼夜でほぼ
実用的な乾燥状態に到達しますが、塗膜に強度が出るには1週間ほどかかります。

 
 5.金具取り付け

座板の上にパンタグラフを載せてみます。
手前部分は別金具の中をスライドします。
 

金具を固定するネジ穴を開ける際、
この蝶番用ドリルが重宝します。
 

金具に予め開けられている穴からセンターが
割り出され、正確な位置に穴が開きます。
 

後部プレートを正確な位置に取り付けることは、昇降
ロック機構をスムーズに機能させるうえで重要です。
 

スライド保持用の金具を取り付けます。
元の座板の穴位置を参考にします。
 

取り外しておいた木ネジです。ネジ類も
また錆や汚れで見た目が良くありません。
 

皿ネジの頭をヤスリで軽く
磨き、錆や汚れを落とします。
 

後部プレートの真下には大きな溝が加工されており、
座板強度が十分ではありません。ネジを正確に締めます。
 

座板を昇降させるパンタグラフ金具を取り付けました。
組み込まれた2個のスプリングでスムーズに上下します。
 

昇降機構のロック・解除を行う
金具を取り付けました。
 

レバーを押し上げる(実際には押し下げる)
ことにより、左右端の爪が出入りします。
 

左右端の爪を受けて座板を保持する金具です。
左右背もたれの内側の溝に埋め込みます。

 
 6.全体の組み立て~完成

昇降機構を備えた座板を
脚部と合体させます。
 

丁寧に塗装を仕上げたので、不用意に
傷などを付けないよう気を配ります。
 

脚部の座面位置にある測板に
パンタグラフがネジ止めされます。
 

元の穴に再度ネジ止めするので
位置決めなどの面倒はありません。
 

元のネジ穴は破損もなく再利用可能です。
木ネジのサイズ変更も必要ありません。
 

体重を受け止める重要な部分なので、締め
込みに十分トルクが生じることを確認します。
 

ネジの頭を研磨した結果、却って
金属色が目立っています。
 

フェルトペンで頭の部分を
塗り潰しておきます。
 

かなり目立たなくなりました。底側なので
あまり気にする必要はありませんが。
 

足底のパッドは4個単位でしか購入できません
でした。全く同等のものが市販されています。
 

足底に叩き込みます。高さ調整ができませんが、
撓み易い脚の構造からして必要ないでしょう。
 

座板と脚部の合体を終えました。購入
された当時のピアノ椅子が蘇ります。
 

艶消し黒の塗装は実に無難です。
プラサフの効果もあり綺麗に仕上がりました。
 

この写真は800×600ドットの解像度を、500×374ドットに変更
して表示しています。タブレットPCやスマートフォンをお使いの場合、
拡大してご覧になると塗装の成果をより明瞭に確認いただけます。
 

オーソドックスなピアノの椅子らしい品の良さが蘇りました。座板の材質は残念でしたが、
脚部は僅かなガタもなく堅牢に組み立てられており、製作した職人さんの腕前を感じます。

 

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