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アクリルパーティション 図書館カウンター用2(2021.3.31)


県内にある大学の図書館で、司書カウンターにアクリルパーティションを
設置する作業です。部材が揃い部品加工も終わりましたので、現場での
取り付け作業に出向きます。部品加工を終えたとはいえ、実は左サイドの
湾曲部分はまだです。2mm厚アクリル平板を、半径750mmの4分の1
円にどうやって加工するか決めかねています。無理をせず湾曲部分以外を
先に作業し、時間をかけて湾曲部分の解決方法を考えることにします。

 
・現場設置作業1


左サイドの湾曲部分以外を先に取り付け施工します。パネルと支柱の
平面配置図をプリントし、留意点などを書き込んだものを持参します。
カウンターテーブルのサイズは下見時を含め既に3回確認しています。
工房で加工した部材を現場に持ち込み、そこで寸法違いが発覚すると
作業が進められない・・よりも、お客さんの見ている前で恥をかきます。

 

設計サイズに裁断したアクリルパネル、組み立てを
終えた支柱、その他の必要資材を運び込みます。

 

作業開始前に、ここで再度取付位置を確認します。
支柱の本数が足りない・・なんてことが起こりがちです。

 

設置平面図に従って支柱の
取付位置をマークします。

 

取り合えず支柱を所定位置に
置いてみます。まだ固定しません。

 

支柱に沿ってパネルも並べてみます。
センチ単位の狂いがあればすぐに分かります。

 

支柱の底板をマスキング
テープで仮固定します。

 

最終的な固定は底板の裏面に両面テープを
入れますが、パネルを取り付けてからにします。
 

支柱の縦方向3カ所に開けた穴にネジを通して
パネルを支えます。ではパネルを取り付けます。
 

パネルを持ち上げて短冊に開けた穴の位置を
支柱に合わせ、すかさずネジを通します。
 

2枚のパネルが連続する部分は、それぞれの
短冊が支柱を挟んでネジで固定されます。
 

パネルの取り付けは、思いのほか簡単
です。予想以上に正確に組み上がります。
 

右側サイドを折り返し、正面に連続する
パネルをもう1枚取り付けたところです。
 

カウンターの内側に支柱が並びますが、
特段に目障りな印象はありません。
 

簡単な取り付け方法とはいえ、パネルの重量が
適度に分散されて堅牢かつしなやかな構造です。
 

支柱の取り付け間隔も
必要十分のようです。
 

さらに連続する2mの長いパネルを取り付け
ます。カウンターが完全に覆われていきます。
 

左サイドの奥まった部分です。短いパネルを
1枚取り付けて、湾曲部分に接続させます。
 

左サイド湾曲部分を除いて
パネルを取り付け終わりました。
 

パネルを取り付けた範囲内にある
支柱について、最終的に固定します。
 

パネルが点灯する際は、間違いなく
こちら側が浮き上がるはずです。
 

裏側に両面テープを入れてテーブル面に固定
すれば、利用者側への転倒はほぼ防止できます。
 

両面テープのはみだし部分を取り除き、
位置がずれないように裏紙を剥がします。
 

テーブル面にしっかり
押さえ付けます。
 

よほどの外力が加わった場合は、貼り付け面が
適度にずれることで変形を吸収できるはずです。
 

パネルと支柱を固定している
ネジを最後まで締め込みます。
 

今回予定していた作業の完了です。
最後に保護シートを剥がします。
 

湾曲部分のパネル取り付けが残っていますが、なかなかの
光景です。このスケールのアクリルパーティションを、多分
目にしたことはないと思います。何とか湾曲部分のパネルを
うまく用意して、早く全体を完成させたいものです。しかし・・

 
・コーナー用湾曲パネル製作・・失敗


R750mmの湾曲パネルを作ります。この作業は失敗に
終わりますので、興味のない方は現場設置作業2へどうぞ。

 


レーザー加工機でアクリル板から
R750mmの8分の1円を切り出します。

 

12mm厚のMDF材に円弧を写し取り、
両端に半径方向の直線を入れます。
 

バンドソーで円弧を正確に切り抜きます。
750mmは湾曲パネルの半径です。
 

MDFは均質性が高いので、鋸刃が
素直に追随し作業が比較的容易です。

 

この8分の1円弧を、片側2枚、
両側で4枚切り出します。

 

切断面を整えるため、
8枚をクランプで束ねます。

 

ベルトサンダーで切断面の凹凸を
均し、4枚の形状を揃えます。

 

両端を半径方向に
切り揃えます。

 

アクリルパネルを半径750mmの湾曲形状に
加工するため、元になる型枠を作ろうとしています。

 

8分の1円を2枚ずつ接続し
4分の1円を作ります。

 

マスキングテープで位置を決め
接合面に接着剤を入れます。

 

平面を維持した状態で接着剤の乾燥を待ちます。
昇降盤の定盤面にウェイトをかけて押し当てています。

 

接着剤のみでは強度不足
なので補強材を当てます。

 

4分の1円の両端に
ネジ穴を開けます。

 

パネルの高さに等しい長さ1mの合板を
用意し、4分の1円の両端に取り付けます。

 

まだ構造体として十分な強度に達していない
ので、無理な力が加わらないようにします。

 

上下を逆にします。反対側にも
4分の1円を取り付けます。

 

湾曲したパネルを製作するためとはいえ
この手間のかかり方は何なのでしょう。

 

中間を支える棒材を加工します。
ルーターで肩を丸く落とします。

 

平面のままではパネルに
段が付く恐れがあります。

 

向きを変えて反対側も
肩を丸く落とします。

 

Rの頂点(稜線)部分がパネルと点(線)接触
するだけなので、正確な円弧を再現できるはずです。

 

肩をR加工した棒材を、等間隔に5本配置しました。
この上に薄いべニア合板を張り付ければ、パネルを
加工するための型枠(太鼓)が出来上がります。

 

材料保管庫から2.7mm厚の
古いべニア板を引っ張り出します。

 

型枠に被せ、両端を
クランプで仮固定します。

 

タッカーで周囲をひたすら
固定していきます。

 

R750mm4分の1円弧の
型枠(太鼓)の完成です。

 

たった1枚の湾曲パネルを加工するにしては
大変な木工製作でした。ほぼ1日を費やしました。

 

型枠の上に2mm厚1000mm×
1878mmのアクリル板を載せます。

 

ヒートガンを用いてアクリル板を外側から加熱します。ヒートガンを左右に
ゆっくり振りながら横方向直線上を120℃くらいまで均一に加熱し、円弧に
沿って少しずつ型枠に馴染ませていく作戦です。写真はまだ加熱する前の
状態で、アクリル材の自重のみで既にこれだけ型枠に寄り添います。加熱
作業はさして時間もかからず、軽く片付くだろうと高を括っていたところ・・・。

結果は見るも無残な大失敗です。酷すぎて写真を載せる気になりません。
アクリル板+型枠べニア板の熱容量が大きく、この程度のヒートガンでは
横方向直線上を均一に120℃まで加熱するには時間がかかり過ぎます。
左端から右端まで1分くらいかけて移動させる必要があり、それでは先に
加熱した部分があっけなく冷えてしまいます。放射温度計を持ち出して、
アクリルの表面温度を確認しながら加熱したところ、ようやく塑性変形に
持ち込むことができました。しかし、保護シートを少し剥がしてみると、元の
美しい光沢面が失われ代わって見苦しいゆず肌が広がっています。自棄に
なってシートをめくると、型枠に寄り添うどころか表面は縦横両方向に大きく
波打っているではありませんか。万単位の高価なアクリル板が廃材と化す
瞬間でした。専門の加工所では、加熱炉に入れて200℃以上で軟化させる
ことを後になって知りました。時刻は既に深夜、不勉強がもたらした失態です。

 
・現場設置作業2


再び現場に足を運んでいます。残りの湾曲部分のパネルを取り付けます。
R750mmに綺麗に湾曲したアクリル板が、既に支柱に固定されています。

 

あの大失敗の後、どのような方法で
湾曲加工に成功したのか・・・

 

実は、湾曲加工など一切しておりません。
アクリルを平板のまま直接取り付けています。

 

解決策はどこに転がっているのか、
なかなか分からないものです。

 

2mm厚のアクリル板を、湾曲部分
だけ1mm厚に変更しただけです。

 

1mm厚では平板としての剛性が乏しく、
面積の大きい平面部分には使用できません。

 

しかし、湾曲部分であれば、平板が大きく曲がる
ことで水平方向の剛性が飛躍的に高まります。

 

垂直方向の剛性は支柱が請け負うので、すなわち湾曲部分は1mm厚
アクリル板が使えるということです。1mmの厚さ(薄さ)は、R750mmも
ある大きな湾曲を弾性変形域内で十分吸収できるので、加熱して成型
する必要など全くありません。テーブルの形状通りに円弧を描いています。

 

支柱とのネジ固定を終え、保護
シートを剥がしにかかります。

 

大失敗を振り返りながらの最終
仕上げには複雑な思いが伴います。

 

左サイドの湾曲部分パネルが
取り付けられた状態です。

 

カウンター手前から見た状態です。
相変わらずうまく写真に写り込みません。

 

残っていた支柱を
最終的に固定します。

 

両面テープを挟んでカウンター
テーブルにしっかり貼り付けます。

 

完成です。カウンターの全周にクリアなパーティションがセットされました。
保護シートを取り除いて間もないこともあり、アクリル材の表面は最高に透明な
状態です。うっかりするとパネルに気づかず、手や顔面をぶつけそうです。

 

設置作業を終えて、職員の方々に説明しているところです。やはり、
湾曲部分のパネルが取り付けられて、本当に完成したという印象を
受けると話されていました。パネル上端の高さは床面から1.9mです
ので、身長のある学生さんでも飛沫等の防止は十分かと思われます。

 

カウンター右サイドからのビューです。
支柱の存在もほとんど気になりません。

 

パネルはカウンターの前縁ぎりぎりに位置しています。
テーブル上の物品配置も従来通りで問題ありません。

 

最後にもう一度この角度からの完成状態を示し
ます。受注時に作成したパースと比較してみます。

 

3DCADのおかげで、製作前に完成イメージを
簡単に把握・検討することができます。

 

とりわけご依頼者に完成状態を具体的に説明できる点は、十分に
納得された上で発注いただくことにつながり、受注側としても自信を
持って製作を進めることができます。年度末の大仕事にようやくケリが
付きました。あの大失敗さえ無ければ・・、後悔しても始まりません。

 
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