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・手回し発電機(技術科教材)アクリルケースの製作(2015.05)
 

都内の私立中高等学校の技術科より、手回し発電機(生徒教材)を組み込むアクリル製ケース製作のご依頼をいただきました。
ご担当の先生は、教育効果が高くデザイン性に優れた数々の技術科教材を考案されています。
材料加工に関する学習の一環として、本来ならば生徒に製作させるのが望ましいと考えられます。
しかし、昨今の年間授業時間数の減少からしてそれだけの余裕がありません。
学習内容(エネルギー変換)に直接関わらない部分をキット化することは、製作時間を節約する一方法です。
ところが、受注数は235+5セット(生徒数分)! 個人事業の当工房でどうやってこの数をこなすかトライしました

 
製作品の仕様
 
内蔵される手回し発電機のユニット(左写真)と実際にケースに収めたところ(右写真)。80(幅)×60(奥)×28(高)
 
部品図の作成
 
CADを使用して指示された通りの部品図を描きます。12枚分を同時に切り出すようレザーカッターを設定します。
 
レザーカッターによる切り出し
 
出力60Wのレザーカッティングマシンを使用して450×300(2mm厚)のアクリル板から12枚分を一挙に切り出します。
 
アクリル折り曲げヒータを使った折り曲げ加工
 
普及品のアクリル折り曲げヒータを使用します。簡易的折り曲げ機であり、高い加工精度は望めそうにありません。
レバーを操作することで任意の角度に曲げられますが、正確に90度に曲げるためストッパーを取り付けました。
 
 
折り曲げ位置を正確に決めるために治具を製作しました。クリップを用いて材料台の手前にセットします。
 
 
折り曲げ時には材料にかなりの力が加わるので複数のクリップで固定します。ヒータの温度設定は130~140℃が
作業しやすいようです。調整用のツマミを操作しますが、温度制御が不安定で再現性に乏しく時々温度を確認します。
 
 
治具に合わせて材料をセットしハンドクランプで固定します。同時に時間を計測し始め、35秒(今回)経過したところで
ハンドルを操作して一挙に折り曲げます。その後冷却に30秒置きますが、ドライヤーで送風することで23秒に短縮。
 
 
1段目の折り曲げを終えた材料を取り外し次の材料をセットします。取り外した最初の材料をすぐさま右側の治具に
セットし直します。5秒程度で材料の交換ができれば、1サイクルちょうど1分で作業を進められます。
 
 
2枚の材料を同時に折り曲げます。折り曲げのタイミングを誤った場合、早いとアクリルは固くて曲げられず、遅いと
折り曲げ部分に深刻な溶融跡が残ります。1分きっかりで進行したとしても4時間(240個)かかる作業です。
 
 
治具の寸法決定は慎重に行う必要があります。1段目の折り曲げ位置は88mmに対して90mm、2段目は60mm
に対して62mm程度にしないと、材料の厚みによる影響で指示通りの寸法に仕上がりません。
 
完成・発送

 何とか240個が完成し梱包を終えたところです。やはり市販の折り曲げヒータでは、折線が甘くその周囲に
どうしても溶融跡がのこります。品質を高めるには高周波ヒータを用いた業務用の折り曲げ機と専用の治具を
導入したいところですが、費用対効果でとても無理です。はたしてご担当の先生に満足いただけるでしょうか。
 
 

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