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海外製FMラジオの受信帯域変更 その2(2018.3.23)

海外仕様のFMラジオを、日本国内の放送を受信できるよう改造を依頼された
Tivoli Audio社製、アラーム機能付きAM・FMレシーバーSong Bookです。



外国車に搭載されているFMラジオを、日本国内で使用できるようにするカー用品を
内蔵させてみましたが、結果は失敗。使用した「FMバンドの周波数コンバーター」を
あらためて調べてみると、低い方へ14MHzシフトさせるコンバーターだったようです。
日本仕様のカーオーディオを、逆に海外で使用できるようにする製品のようでした。

 

次に選んだのはこの製品です。高いものは数万円もする中で、またしても「大丈夫か?」と思う
ほど低価格です。「アルミ合金FM帯周波数パンダコンバーター」なる訳の分からない製品名
です。レビューに動作に関する高評価があり、間違いなく高い方へシフトするコンバーターです。

 

Amazonで購入しても、中国本国から発送される製品が少なくなく、
その場合、到着まで半月以上も待たされます。大概、送料は無料ですが。

 

「ブルーアルミ合金」は本体ケースの材質のことです。
車上への取り付けにはこのくらいの堅牢さが必要です。

 

片側側面に車のアンテナ線を差し込むソケットがあり、
反対側からアンテナ出力プラグと電源コードが出ています。

 

このままでも十分小型ですが、Song Bookに
内蔵させるため内部の基板を取り出します。

 

アンテナ出力と電源コードの出ている側に
アルミ板のカバーがネジ止めされています。

 

ソケット側のアルミ板カバーも取り
外します。まぁまぁの加工精度です。

 

これで内部の回路基板が
取り出せるはずです。

 

アルミチャンネル内側のスリットに
回路基板が差し込まれています。

 

アルミチャンネル製のケースは、周波数を変換する
回路を完全に電磁シールドするのに適しています。

 

最初に使用した「FMバンドの周波数コンバーター」に比べると、はるかにまともな
回路・実装です。16.000MHz、18.000MHz、20.000MHzの3個の
クリスタルが取り付けられており、シフトする周波数を3段階に切り替えられます。

 

裏側の配線パターンです。RF回路らしく配線の
周りをアースパターンが取り囲んでいます。

 

しかし、出力側アンテナ同軸ケーブルの実装は
いただけません。シールドの処理が下手です。

 

電源を接続する太目で黄色のビニルコードです。
半田付けが下手で、ビニル被覆が一部溶けています。

 

Song Book内部で配線し直すため
太い同軸ケーブルは取り外します。

 

インピーダンス的にはこのまま同軸ケーブルを
使用するべきでしょうが、この太さは邪魔です。

 

代わりにオーディオ用の細いシールド線を用意
します。シールド側にはチューブを被せます。

 

最初に使用した「FMバンドの周波数コンバーター」と
同程度の大きさです。容易に内蔵させられます。

 

アンテナの入力側にもシールド線を配線します。
ソケット金具の端子部分に半田付けします。

 

黄色の電源コードもいったん外します。ソケット
金具は邪魔になるようであれば取り外します。

 

このままでも内蔵させられそうなので
ソケットは付いたままにしておきます。

 

電源コードとして、あらたに
赤黒のペアコードを用意します。

 

電源を取るついでに、基板の
アースを配線してしまいます。

 

Song Book側から電源を取ります。コンバーター回路は5~12Vと広い電源電圧で
動作します。アンテナ入出力のシールド線には、以前と同じ金具付きコードを接続します。

 

3回目の配線と組み付けを終え、
いざ、動作確認に臨みます。

 

ご依頼主様に対し言い訳を考えなければなり
ません。またしても失敗です。何も変わりません。

 

1年以上も月日が経過しています。失敗では気が
済みません。冷静になり配線図を描き起こしてみます。

 

パッケージから取り出したときのコンバーターの写真
です。同軸ケーブル経由でアースが取られています。

 

車載用の機器は「車体に接地」が基本です。アンテナ線もシールド側がオーディオ機器
類の金属製筐体に直接つなげられています。電源コードのマイナス側を勝手に追加し、
逆にアンテナのシールドをフロートにすることは問題ないのでしょうか。コンバーター
本来の結線を基にすると、配線はこのようになるはずです。早速配線を変更します。

 

コンバーターのアンテナ出力をSong Bookの
アンテナ入力に接続していたシールド線です。

 

片側フロート状態で使用するシールド配線ではなく
シールド側でSong Bookにアース接続します。

 

PLLモジュールが内蔵されているらしい
金属製ケースの一端に半田付けします。

 

電源コードはプラス側1本で良いので、
元の黄色コードを再利用します。

 

これで上手く行かなかったら、もう
守谷工房の手には負えません。

 

コンバーターからのアンテナ出力は、
シールド線でメイン基板の裏側に回ります。

 

ロッドアンテナからの配線を差し込んでいた基板の
ピンは使用しません。が、そのままにしておきます。

 

AM用バーアンテナ上の空間に
グルーガンで固定します。

 

コンバーター周りの配線を綺麗に整えます。アースの経路を変更しただけですが、
コンバーターの元の仕様、受信周波数変換という機能からして、アンテナ出力側を
完全にシールドすることは効果があるような「気」がします。RF系には弱いのです。

 

表パネル側カバーとケーブルを接続します。
1年以上も眺めてきた内部の光景です。

 

スピーカー背面周りの吸音材です。
上質の音響へのこだわりでしょう。

 

本体側カバーを背面からネジで固定します。乾電池を
入れ再び動作確認です。これで最後にしたいものです。

 

3段階のうちプラス18MHzのシフトに設定しました。
98MHzで80MHz、FM東京が受信できます。

 

99.3MHzでは、99.3-18=81.3MHz、
J-WAVEがクリアに聴こえてきます。

 

100.5MHzにセットすると82.5MHz、NHK-FMが受信
できます。プリセット機能があるので使いにくさはありません。

 

Tivoli Audio社が目指す上質の音響製品らしく、心地よいサウンドが響きます。
FM電波の受信性能がかなり高いようで、普段聞きなれているFM放送が何かしら
品の良い番組に感じられます(近年のFM放送は低俗なトーク番組ばかりで辟易
しているのです)。ともあれ、長期に渡る難題を解決することが出来て安堵しました。

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