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BOSEレシーバーのBluetooth化(2024.1.20)


これまで数百台を修理してきたBOSE社WMS(Wave Music System)
です。莫大な販売台数と根強い人気で、修理依頼が後を絶ちません。
実は自分も1台所有しておりますが、唯一不満な点はスマートフォン等と
WiFi接続できないことです。近年は多くのオーディオ機器がBluetooth
機能を内蔵し、スマートフォンでストリーミング、あるいはダウンロードした
無限の音楽ソースを、ソファに寝ながら楽しむスタイルが常識化しています。

 

WMSもPLSのシリーズもとっくに生産を終え、その後発表された
製品はユーティリティを劇的に変化させています。この水筒のような
単体のスピーカーは、テーブル上に置くだけで周囲に驚異的な音場を
作り出します。Bluetooth経由で音源と無線接続することが前提で、
「SoundLink」の製品名を冠しています。プレーヤーやレシーバに
ディスクをセットし、PLAYボタンを操作するスタイルを葬り去りました。



WMSシリーズには外付けでBluetooth機能を追加する製品が
ありましたが、それではサウンドリンクシリーズに対し下から目線
になるだけです。Amazonを覗いていて偶然見つけたモジュール
です。コンパクトなBluetooth基板で、電源接続のみで使用できます。

 

数種類販売されていますが、5枚組のこの
製品を入手しました。購入時は800円以下です。

 

1枚180円以下・・信じがたい価格なので
まともに動作するのか疑わしい限りです。

 

説明書など一切付属しません。基板上にオーディオ出力の
ステレオミニジャックと配線接続用の端子が付いてます。

 

USB端子から給電できるようですが、別途
基板上にバッテリー(電源)の端子もあります。

 

USBなのでおそらく5Vの電源を供給し、オーディオ
出力をWMSの入力端子に接続すれば良いはずです。

 

何とかなりそうな雰囲気だけで分解を始めて
しまいます。自分の所有物なのでお気楽です。

 

初期のWMSと基本構造は変わりません。
数百回分解・組み立てを繰り返してきました。


最終型のWMSⅣでは、悪評のスピーカーコード保護材が
ついに改良されています。ベトベト・ボロボロになりません。
 

手前のディスプレイパネルを外します。
視認性の良い蛍光表示管が使われています。

 

WMSシリーズのディスプレイは何故か輝度の低下が
ほとんど見られません。PLSシリーズはダメですけど。

 

WMS内部にモジュールを組み込むには、(1)電気信号的に接続が
可能か、(2)構造的に干渉せず組み込むことができるか、の2点を
クリアしなければなりません。(1)については作業にかかる前に既に
実験済みで、WiFi経由でしっかり伝送できることが分かっています。

 

従って、このタイトに設計された筐体内に
モジュールを組み込めるかどうかが問題です。

 

CDドライブの真下あたり、僅かな
隙間に何とか入りそうです。

 

制御基板の端に、絶縁を兼ねて両面テープで
接着でもすればよろしいのではないでしょうか。

 

しかし、スピーカーユニットを元に
戻すと基板に干渉しそうな感じです。

 

もっと広範囲に組み込み
場所を探すことにします。

 

ケーブルを引き抜き、スピーカー
ユニットを電源トランスごと外します。

 

CDドライブも外します。制御信号FFCと
ピックアップのFFCも引き抜きます。

 

スピーカーユニットとCDドライブが無く
なると、そこには広々とした大空間が。

 

パワーICの手前に余裕でモジュールを置くことができます。
初期~中期型のAWRCCXモデルでは、この辺りに多くの
電子部品が実装されていて、こんなスペースはありません。
部品が集積化され、部品点数が大幅に減っています。

 

それでもメイン基板の大きさ・形状を変更せず、
従来の筐体がそのまま継続使用されています。

 

WMSは一貫して外部入力端子(AUX)を
備えているので、ここから信号が入りそうです。

 

メイン基板の裏側を探ります。制御
基板を接続するFFCを抜きます。

 

WMSⅣではバーアンテナ配線の
接続もコネクタに置き換えられています。

 

基板の固定ネジを緩めます。ネジ
穴の位置も従来の基板と同一です。

 

電源周りやパワーアンプは従来の回路を踏襲しています。
日本製品では前モデルの設計をぶち壊してしまいますが。
 

外装カバー背面の刻印で、背面端子の
機能を確認します。右から2番目がAUXです。

 

つまり、このステレオミニ
ジャックがAUX入力端子です。

 

メイン基板の裏側を確認します。AUXミニジャックの
基板取り付け端子4ピンが半田付けされています。

 

ミニプラグを差し込み、回路計で
オーディオ信号のLとR調べます。

 

コモン(グランド)端子も
調べておきます。

 

2番ピンがR(右)信号、4番ピンがL(左)信号と
判明しました。コモン(グランド)は1番ピンです。

 

Bluetoothモジュールのオーディオ出力を先ほどの
AUX入力に接続します。シールド線を用意します。

 

久しぶりのシールド線加工です。
先端を丁寧に半田上げして、

 

モジュール基板に
直接半田付けします。

 

配線作業ついでに電源用の
コードも接続しておきます。

 

電源の端子に赤(+用)・黒(-用)の
ビニルコードを半田付けしておきます。

 

モジュールの固定はおよそ簡単に作業します。
スポンジベースの厚い両面テープを使います。

 

WMS側メイン基板の空き地にゆったりと貼り付けます。
理由があり、後でグルースティックによる固定に変更します。

 

オーディオ信号のシールド線、電源用の
赤・黒ビニル線とも、裏側に回り込ませます。

 

オーディオ配線をAUXの2番ピン(R)、4番ピン(L)に接続
します。ノイズが回り込まないようシールドは接続しません。

 

次の問題は電源をどこから供給するかです。
必要な電流は20mAにも及びません。

 

電源回路に組み込まれている最大の電力
供給源・・と思われる、電解コンデンサです。

 

10000μFの大容量から20mA程度
頂戴しても、回路全体に影響はないでしょう。

 

電源トランスやACコードを接続し、電解
コンデンサ両端の電圧を確認します。

 

15Vほど出ているので、レギュレーターを
介して+5Vを作り出すことにします。

 

パーツボックスに残っている
5Vの3端子レギュレーターです。

 

メイン基板の裏側、本体底カバー
との隙間に何とか収まりそうです。

 

空中配線で強引に組み込むため
レギュレーターの端子を加工します。

 

レギュレーターの1次側入力とコモン(グランド)を
電解コンデンサの+・ー端子に直接半田付けします。

 

半田を盛ることでレギュレーターの
固定を兼ねさせます。ただし、

 

放熱器のあたりが他の部品端子に接触するので
熱収縮チューブで完全に覆い絶縁します。

 

熱を加えてチューブを密着させます。・・・後で
チューブを破って短絡が起こり惨事を招きます

 

オーディオ信号の配線が終っている
ので、残るは電源の配線だけです。

 

赤ビニルコードをレギュレーターの2次側出力へ、
黒ビニルコードをコモン(グランド)に接続するだけです。

 

この状態ではまるでWMSの体を成していませんが、
作業は全て終了です。スマートフォンから音源を送り
込むことができるか、この状態で動作を確認してみます。

 

WMSの電源を入れ、入力を
AUXに切り替えておきます。

 

WMSから電源が供給されて、Bluetooth
モジュール基板上のLEDが点灯します。

 

スマートフォンからデバイス接続の操作を
行います。「XFW-BT」に接続されます。

 

音楽を再生してみます。WMSのパワフルな
サウンドでQUEENが響き渡ります。

 

成功したのを良いことに、ウキウキ
しつつ本体を元通りに組み戻します。

 

外観からはBluetooth内蔵とは分かりません。
SoundLinkに肩を並べたと言って良いのでは・・

 

3端子レギュレーターを熱収縮チューブで絶縁したはずですが、
他の部品の端子がチューブを貫通し短絡する事故を招きます。
そこで、レギュレーターの取り付け場所をメイン基板表側に変更
することに。また、やはりオーディオ信号にかすかな電源ノイズが
乗っていたので、コモン(グランド)配線の取り回しを変更して、
オーディオ配線のシールドを接地、電源配線は+側のみ接続
としました。ノイズは完全に消え、いよいよWMSのクリアな
サウンドが広がります。WMSのAUX入力は、回路のどこかで
ミュートをかけているようで、有線で接続しても再生音量が低め
です。アッテネータを構成している抵抗器をスキップさせようと
試みましたが、表面実装用チップ部品の小ささに阻まれ断念

 

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