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ゴムベルトを自製する(2023.2.9)


ラジカセやテープデッキを修理する際に、必ず必要になるゴムベルトです。
製品や使用箇所により様々な径(周長)・断面形状・太さのものを使い
分けます。Amazonなどで数十本入り数百円と安価で購入できますが、
実際に利用できるのは数本に過ぎず、使いそうにないサイズのベルトが
この通り増えるばかりです。必要なベルトを工房内で自製できれば無駄も
なく好都合なのですが、長年その製作方法を編み出せずにいました。

 

朝起きてぼーっとしている時に、どういう訳なのか閃きました。
ホームセンターにあるゴムシートを材料に使用します。必要な
ベルトの太さによりシート厚を選びます。カーボンの含有量や
弾性・耐久性など駆動ベルトに適したゴム材があるでしょう
けれど、試作段階では取りあえず用が足りれば良しとします。

 

工房在庫の1mm厚シートです。
適当なサイズ(50mm角)に切ります。



300mm四方で数百円、1枚から大量に
製作できるので圧倒的なC/Pです。
 

5mm厚のアクリル板を
加工し土台を製作します。

 

直径50mmの円形をくり抜き、その
中心に10mmの同心円をマークします。

 

このディスクを土台にしてゴムシートをカットする
作戦です。表面ができるだけ平滑で、かつ撓ま
ないよう5mm厚のアクリル板を使用します。

 

次に10mm径のアクリル丸棒を
用意し、50mmほどの長さに切ります。

 

丸棒をレース盤に
セットします。

 

手鋸で切断した丸棒の断面は
垂直でも平面でもありません。

 

切断面をレース盤で垂直
かつ平面に切削します。

 

先ほど用意した5mm厚
アクリルのディスクです。

 

中心にマークした10mmの同心円に
合わせて丸棒を正確に接着します。

 

それなりに応力が加わりそうなので
接着剤を十分に流し込み密着させます。

 

レース盤のチャックにあてがい、3本の
ツメの先端との当たりを確認します。

 

ディスクの表面に
両面テープを貼ります。

 

両面テープの幅が足りないので
2枚に分け全面に貼ります。

 

ディスクの周囲外側に
はみ出た分を切り取ります。

 

裏紙を剥がします。できるだけ薄手の両面テープを
使いたいところですが、今回は試作なので在庫品です。

 

ゴムシートを貼り付けます。強く
押さえ付けて密着させます。

 

ディスクの周囲外側にはみ出した
ゴムシートをカッターで切り取ります。

 

これで材料側の準備が整います、レース盤のチャックにセットします。
レース盤を利用してディスク上のゴムシートを正確に回転させ、何か
刃物を当てることで同心円状にゴムベルトを切り出すアイデアです。

 

刃物にはカッターナイフを使用します。手軽に用意できて切れ味の
良い刃物として悪くはないと思います。できれば刃厚0.25mmの
内装プロ用を使用したいところです。問題は刃物をどのように取り
付けるかで、今回はバイト締め付けボルトにより強引にカッターを
固定します。いずれは、単体のカッター刃を直接刃物台に固定
できるよう、専用のホルダーのようなものを用意したいと思います。

 

刃物台送りハンドルを操作しカッター刃の
先端をディスク面(ゴムシート面)に近付けます。

 

チャックを低速(200rpmくらい)で回転させ
刃の先端をシート面にそっと当てます。

 

刃物台送りハンドルを少しずつ回し、シートを切り込んで
行きます。切削音の変化から切り込み深さを判断します。

 

刃先がディスク面に達すると明らかに切削音が変わります。
刃先を元の位置に戻し横送り台送りハンドルを回します。

 

横送りハンドルによりベルト厚み分だけ
内側に移動した位置で切り込みます。

 

ゴムベルト1本分の切り込みを終え、
いったんディスクを外して結果をみます。

 

切り込みはゴムシート、両面テープを通過してディスク面まで
到達し、1本のゴムベルトとなって剥がすことができます。

 

再びディスクをチャックに
セットし続きを切り込みます。

 

シート厚が1mmなので、ベルトの厚みも
同じく1mmとして数本分を切り込みます。

 

切り出されたゴムベルトを剥がします。
ディスクに両面テープで貼り付いています。

 

一見したところではまともに切れているようです。
市販の円切りカッターなどではまず不可能です。

 

調子に乗り、少し厚みのある
ゴムシートで量産してみます。

 

面白いようにゴムベルトが出来上がってきます。触診した
ところでは、一般的なラジカセ類に使用する分には十分な
品質です。この方法の欠点(?)を挙げるとすれば、1枚の
ゴムシートから同一径のベルトが1本しか取れないことです。

 

さらに拡大して出来映えを確認してみます。よく見るとカッター刃で
切断した跡が、やはり綺麗ではありません。ゴム材が毟(むし)れた
ようでボソボソしています。ひとつはカッター刃の切れ味が原因で
しょう。内装プロ用の刃厚0.25mmあるいは0.2mmを使用し、
頻繁に刃先を折って切れ味を維持することが必要です。次に刃先の
固定方法を改善しなければならないと思います。刃先が片持ち梁
状態で固定される以上、どうしても先端が振動しぶれるはずです。
さらに、両面テープでディスクに貼り付けられていた面に、毟れが
顕著に出ています。これは両面テープの柔らかさに原因があると
思われます。出来るだけ薄いテープ、固い材質のテープを使用
するか、あるいは両面テープに代わる固定方法を考え出す必要が
あります。可能ならば、ウォークマンなどに使用される幅0.6mmと
いった極細のベルトがいつか製作できると素晴らしいのですが。

 

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