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オーブントースター「Delonghiピザ&トースト」修理(2016.1.14)

平成28年新年最初のリペア案件です。家庭用オーブントースターの修理を依頼されました。
重量感のある筐体で室内も広く、全体的に造作の大きい製品です。リゾートにあるキッチン付
コンドの雰囲気がします。ご依頼の修理内容は、調理終了時に「チン」という鈴音がしなく
なった・・とのことです。(おそらく)修理は簡単でしょうけれど、現代の家電製品は、筐体の
構造を理解して、故障個所まで辿り着くのが大変です。2次災害を起こさないよう分解します。

 

ゆとりのある前面ドアを開けてみます。プレートが静かに
せせり出てきます。日本製のようにカチャカチャしません。
 


前面右端に縦方向に揃えられた操作ダイヤルです。
調理中は室内で15Wの電球が穏やかに点灯します。
 

背面の左下に製品シールが貼り付けられています。
Delonghi社(イタリア)製です。確かにデロンギの雰囲気です。
 

Delonghi international
WEBページです。
 


デロンギ ジャパン
WEBページです。
 

分解に先立って、前面パネルにある
操作ダイヤルを全て取り外します。

ダイヤル内側の軸周りにスプリングが巻き
付けられており、シャフトに固定されます。
 

ベルは本体右端のスペースに組み込まれて
いるので、右側面パネルを取り外します。
 


上の操作ダイヤル内側のネジは
右側面パネルを固定しています。
 

パネルの背面を固定している2本のネジは溝が星形の特殊
ネジです。専用のドライバが必要ですが・・何とか緩めます。
 


本体に固定されている金具にスリット加工が
あり、右側面パネル内側の爪が嵌っています。
 

爪がスライドして外れるよう
パネルを後方に移動させます。
 


ここまで来るのがひと山です。
内部の電気配線が現れました。
 

「チン」という音がするのはこの鈴です。
これが鳴らない・・分かりやすいです。
 


鈴は真中にある操作ダイヤルに取り付けられて
います。正面側からネジを緩めて取り外します。
 

調理時間を決める機械式タイマーです。時間が経過すると
何か槌のようなものが鈴に当たって音がするのでしょう。
 

小さなナットを緩めて鈴を取り外しました。内側に
見える丸形の金属部品が槌代わりのようです。
 

表側を分解していきます。爪やネジによって
なかなか堅牢に組み立てられています。
 

外側の金属カバーを取り外すと
タイマーの機構が見えてきました。
 

驚くことに・・そこに組み込まれているのは「時計」
です。ゼンマイ・ガンギ・テンプ・・が見えます。
 

(たかが?)調理時間設定用のタイマーに、ほとんど本物の時計メカ
使われています! ウェストミンスター置時計の修理が甦ります。
 

シャフトが裏側に飛び出た部分に、精巧なカムが取り付けられています。
カムの溝にストッパーが落ちて、回転が止まり電源スイッチを切ります。
 

電源が切れる際に、ストッパーから
伸びる突起が槌を動作させるようです。
 

槌の代わりをする小さな金属部品です。窓の手前に
かかるアーム部が、ストッパーの突起と交差します。
 

金属部品を鈴から遠ざけておくために、
繊細なスプリングが取り付けられています。
 

しかし、分解直後のスプリングの状態(位置)には
違和感を覚えます。槌を引き戻す力が強過ぎます。
 

スプリングの右端はシャフトにかかるのではなく、鈴の内側に
大人しく収まって極小さな力で槌を引き戻しているはずです。
 

スプリングの小さな力を押しのけて槌を叩くのは、電極
切片に取り付けられているこのコイルスプリングです。
 

コイルスプリングとのバランスを取るには、引き戻し用
スプリングがシャフトにかかっていてはいけません。
 

表側の部品を元通り組み戻します。爪折に
よる固定とネジ止めが併用されています。
 

ツメを折り曲げるとダイヤルとして
部品全体の強度が高まります。
 

スプリング同士の微妙なバランスの上で槌が作動します。ダイヤルを
操作すると、置時計にも似た繊細な「チン」が聞こえてきました。
 

各部を丁寧に組み戻して修理完了です。クリスタル発振子で無用に精密な時間を測り、
電子合成の耳障りな「ピピピッ」を鳴らす日本製家電とは世界が異なります。華美にあらず
精悍でもなく、程良い品とゆとりを感じさせるDelonghi社の普通で秀逸な製品でした。

 
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