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パナソニック食器洗浄機NP-TM1徹底洗浄(2017.2.15)

自宅と同じ町内の方から食器洗浄機(食洗機)修理のご依頼をいただきました。
食洗機のような高級家電?とは縁がなく、実際に利用したことがないので修理
できる自信はありません。お客さんが守谷工房をよくご存知で、「ダメモトで結構
です」と言われてお引き受けしました。食器を入れて運転を始めると、給水の後、
洗浄が開始されずいきなり排水されてしまうそうです。水が無駄になるだけです。
 

パナソニック製NP-TM1、9年間お使いに
なっているそうで既に生産を終了しています。
 

パナソニック社WEBには現在も
取扱説明書(PDF)があります。
 

外観および洗浄室内を点検します。長年
使用されてきた割にはきれいな印象です。
 

試運転をしようにも色々と準備が必要です。
水道の蛇口を交換し接続栓を取り付けます。
 

給水管を接続し水漏れがないことを確認
します。排水管と電源も接続します。
 

ご依頼者がおっしゃっていた通りです。
給水後にいきなり排水されてしまいます。
 

試運転後の室内は全く濡れていま
せん。水が回っていないからです。
 

家電製品の多くはクリーニングにより不具合が解消
したりするものですが・・、確信もなく分解を始めます。
 

手前の開閉ドアが作業の妨げになる
ので、取りあえず上側の1枚を外します。
 

強力なバネによる跳ね上げ式です。
下側のドアに荷重をかけて固定します。
 

下側ドアの直下にある洗剤ホッパーです。
ネジで固定されているので緩めます。
 

ホッパーを持ち上げると底部に
何かがまとわりついています。
 

溶け切れずゴミと合体して固化した洗剤のスラッジです。
洗剤の流入路をほとんど塞いでいます。取り除きます。
 

洗浄室内底面の一部は樹脂パネルで、洗浄水加熱
ヒータ部はパンチングメタルでカバーされています。
 

樹脂パネルの方から
固定ネジを緩めます。
 

ステンレス製パンチングメタルは
表面にカルキ膜が成長しています。
 

ステンレスのカバーを外します。内側の
ヒータや固定金具もカルキまみれです。
 

樹脂パネルを開けると
その内側には・・・
 

長期間使用してきた結果、食材の残渣が
厚いスラッジとなり張り付いています。
 

邪魔なので下側ドアも取り外しました。
洗浄室内を見渡すことができます。
 

洗浄水を導く流路ユニットを
ノズルごと取り出します。
 

流路ユニットを取り外したその
奥にもスラッジが付いています。
 

作業に当たり、いくつかのWEBが参考になりました。
こちらは同型機の分解手順が掲載されています。
 

こちらは型番違いNP-BM2の事例で、庫内洗浄方法に
続いて水位検知タンクの問題が説明されています。
 

こちらも型番違いNP-40SX1の事例で、同じく水位
検知タンク内のセンサーの問題を取り上げています。
 

この辺りまできてようやく躊躇も吹き飛び、
本腰を入れて分解を進めることにします。
 

流路の水を完全に排水してから本体を
寝かせ、前面の操作パネルを外します。
 

底部のカバーを固定して
いるネジを全て緩めます。
 

底部カバーが外れ、内部の
機器類が見えてきました。
 

本体前面側(写真右側)に制御基盤、奥側(写真左側)に温風ファン、
給水電磁弁、水位検知タンク、洗浄水圧送・排水兼用ポンプが並びます。
 

給排水の水位を検知するための貯留タンクです。
内部が赤味がかっていることが外観から分かります。
 

2本の固定ネジを緩めタンクを取り外します。
タンクは本体と上部蓋の2ピース構造です。
 

本体と上部蓋を分離してみると・・、
すごいことになっています。
 

水位を検知するためのフロート、およびタンク本体の
内壁面に、スラッジがペースト状に集積しています。
 

フロートがまともに動作するはずがありません。つまり水位が正しく検知されて
いなかったことになります。ブラシと中性洗剤を用いて徹底的に清掃します。
 

フロートの浮沈は外に出たレバーを介して
マイクロスイッチをON・OFFしています。
 

一見問題がなさそうに思えますが、長期間
劣悪な環境下に晒されていたので・・
 

導通を確認してみます。やはりON時に
僅かに接触抵抗が生じています。
 

新品に交換したいところですが、これほど柔らかく動作する
製品は見当たりません。潤滑剤で接点の回復を図ります。
 

水位が低く、フロートが沈んでレバーを押し込み
マイクロスイッチをOFF(NC)にしている状態です。
 

給水が進み水位が上昇してフロートが浮くと
レバーが引いてマイクロスイッチをONにします。
 

水位タンク上部蓋に取り付けられている2本の電極です。何らかの原因で水位が上部
まで到達した場合、電極間に微電流が流れて検知します。つまり溢水センサです。
故障の原因が判明
しました。マイクロスイッチによる水位検知が機能せず、水位タンク
上部まで水面が上昇し、溢水センサが動作して強制的に排水動作に移行するのです。
 

メーカー修理では水位タンクを丸ごと交換します。隅々に入り
込んでいるスラッジを掃除しながら元通りに組み立てます。
 

大量のスラッジが除去され清潔感を取り戻し
ました。排水・電源を接続し再度試運転します。
 

6分間の除菌ミスト噴霧終了後、内部から
勢いのあるシャワー音が聞こえてきました。。
 

洗い→排水→給水→濯ぎ→・・の
シーケンスも問題なく進行します。
 

清潔感が戻り修理完了と思いきや、
手前ドアの裏カバーを外してみると・・
 

スラッジの除去はまだ終わっていませんでした。ドア
パネルの内部にまでスラッジが浸入・成長しています。
 

気を取り直してひたすら掃除します。
食器洗浄機のそのまた洗浄・・です。
 

最後に、洗浄室内全体に広がるカルキ膜を
除去するため、クエン酸洗浄を行います。
 

「高温パワフル」のモードでクエン酸
洗浄を行った後の洗浄室内の状態です。
 

爪を立てるとキーキー鳴っていた壁面に、
樹脂材料の柔らかい平滑感が戻っています。
 

全面に粉が噴き出したような状態は解消されています。
金属部には固化したカルキの付着が残っています。
 

形状が複雑に入り組んだドア周辺部も
隅々まで丁寧に清掃を行いました。
 

現在の家庭用食器洗浄機、あらためてその機能・性能の
高さ、洗練された構造と高い合理性を思い知らされました。
 

ただし、長年にわたり食洗器をトラブルなく使用するには、周到な注意と徹底的な日常メンテが
不可欠です。「汚れた食器を入れない!」くらいの注意が必要かも知れません(冗談ですよ)。
不可解なことに、水位検知タンクは汚水が出入りする(通過ではない)ことに全く無防備で、
時間とともにスラッジが溜まり続けます。他のWEBにも指摘があるように、設計上の不備で
ある可能性が考えられます。現状では定期的に水位検知タンクの分解・清掃が必要です。

 
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