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Glampalmプロ用ヘアドライヤーの修理(2016.6.5)

グランパームブランドのヘアドライヤー修理のご依頼をいただきました。
どこへ持って行っても修理を断られてしまい、まだ十分新しいのに大変
お困りだったようです。工房WEBのリペアをご覧になりお問い合わせ
下さったそうで、ここは何としてでもご要望にお応えしたいものです。
 

本体側面に「ABSOLUTE STYLING」
「GlamPalm」のロゴがあります。
 


ヘアサロンでも使用されている米国UNIL社GlamPalm
ブランドのプロ用ヘアドライヤー「GP709AS」です

 

グランパームブランドのWEB。日本国内に法人は
ないようで、韓国にアジア地域ディーラーがあります。
 

GP709ASは現行機種です。USD160、
定価で19000円もする高級機種です。
 

シンプルで非常に品の良いデザイン、同時に
プロユースに耐える堅牢で丁寧な造りです。
 

電源コードの根元部分が中で断線して
いるようで、電源が入らないとのことです。
 

電源コードを確認してみると、繰り返し折り曲げられたためでしょうか根元部分の
被覆に損傷があり、この部分で内部の芯線が断線しているものと思われます。
 

本体内部の接続部にアクセスする必要が
あります。本体カバーの分解にかかります。
 


まずエアの吹き出し部を取り外します。
上下2本の小ネジで固定されています。
 

ヒータ回りのメンテ(クリーニング)が考慮されて
いるのか、吹き出し部の取り付けは簡単です。
 


吹き出し部が外れ、中のヒータ
(電熱線)が見えてきました。

 

UNIL社独自技術によるヒータです。電熱線やブラケットの
表面に特殊セラミック(黄土色)がコーティングされています。
 

分解を続けます。背面にもう
1本小ネジが打たれています。
 

グリップ部に伸びる本体カバーは
さらに2本のネジで固定されています。
 

グリップ部のネジは本体内に埋め込まれ、
樹脂製のキャップが嵌められています。
 

精密で気密性の高いキャップが使われており
ピンセットで隙間を作らないと抜けてきません。
 

2本のネジを緩めます。強く固定するため
10mmのタッピングネジが使われています。
 

本体カバーを左右に分離します。噛み合っている
爪を破損させないよう慎重に引き離していきます。
 

日本製品のような凝った噛み合わせ構造
ではありません。すんなりと分離しました。
 

折角内部にアクセスしているので、できるだけのメンテをしておきたいものです。
写真のように送風ファンの流入側に埃が堆積しています。クリーナで吸い取ります。
 

フィンの内側にこびり付いた埃も拭き取り
ます。これでクリーンな気流に戻ります。
 

カールしたヒータの隙間に毛髪が絡まっています。
異臭の原因になるので丁寧に取り除きます。
 

スイッチ基板を引き出します。電源コードは
基板の端の方に半田付けで接続されています。
 

AC電源の接続部(ランド)は2組用意されており、
基板の中央寄りのランドが使用されています。
 

1200Wの電熱器具用なので、2.0平方mmのHHFF
(ゴム平形コード)が使われています。半田を溶かします。
 

半田吸い取り器を用いてランド回りの
余分な半田を綺麗に除去します。
 

電源コードの断線部分を、コードホルダーごと取り外しました。低価格の機種(多くの
日本製)ではコードとコードホルダーがモールド(一体成型)されていて、修理不能か
あるいは無理に修理するとホルダーが壊れてコードを保持できなくなってしまいます。
 

コードの端をラジオペンチで掴み強く引いて
みます。意外にも素直に抜けてきました。
 

驚きました、さすがプロユースです。コードホルダーは2段
構造をしており、金具を内蔵したリングがコードを固定します。
 

ご依頼主のご要望でコード長を1.5mに
変更しました。コードの撚りも取り除きます。
 

コードホルダーの可撓部(フックが付いている
部分)は簡単にコードを通すことができます。
 

固定リングは金具を少し広げた状態で通します。
最後に外側から圧縮すればコードが固定されます。
 

スイッチ基板に接続するため
取り出し長さを適切に決めます。
 

コード端を処理します。太いコード(162芯)なので
綺麗にまとめないと基板の穴を通りません。
 

精緻な設計のため穴の周囲に
ほとんど遊びがありません。
 

12Aもの大電流を通過させるため、十分な
半田を溶かし付けてしっかり固定します。
 

被覆の端面を基板に密着させ、隙間
から芯線が見えないよう注意します。
 

余分な芯線をニッパで切り落とします。
半田の山を少し残すようにカットします。
 

電源コードの接続作業を終えました。
内部断線の問題は解消されます。
 

本体内部にアクセスできた機会に、海外製品の仕様を観察します。
温風のON-OFF切り替えスイッチ部分です。スイッチの左右に
LEDが配置され、押ボタンと一体の樹脂カバーを点灯させます。
 

ヒータへの電力供給コードは、大電流に対応
するためコード端を小ネジで固定しています。
 

スイッチ基板を本体グリップ部に収めます。予め風量
切り替えスイッチのスライドプレートを外しておきます。
 

コードホルダーの固定用リングをたくし上げ、
先に金具を圧縮してから嵌め込みます。
 

続いてコードホルダーの可撓部を
グリップ内の溝に嵌め込みます。
 

本体カバーを元通りに組み合わせます。厄介な
噛み合わせ構造がないので、すんなり収まります。
 

2本のタッピングネジをしっかりねじ込みます。
この2本が本体剛性のほとんどを担います。
 

ネジ穴に樹脂製のキャップを嵌め込みます。
隙間を確保しないと奥まで入りません。
 

吹き出し部を取り付け小ねじで固定
します。ほどほどのトルクに留めます。
 

4段階の風量について、各々温風の有無で
動作テストを行います。LEDも点灯しています。
 

梱包を終えて納品の準備完了です。GP709ASは現行機種なので、グランパームのサービスに
問い合わせれば修理可能だと思います。英語版WEBでは必要書類を添えてロサンゼルスまで
製品を送るように、日本語版では取りあえずフォームから問い合わせるよう説明されています。
おそらく韓国のディーラーが対応するのではないでしょうか。いずれにしてもかなり敷居が高いと
言わざるを得ません。コードの断線程度は十分に対応可能です。守谷工房にお声がけ下さい



 
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