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FMV-K5270電源修理 徒労編(2016.3.12)

学校のコンピュータ室で利用されているPCの修理を依頼されました。電源が入らなくなって
います。富士通社が法人向けに販売しているモニター一体型PCで、コンパクトな筐体ゆえ
設置や取り回しに非常に優れています。予めお断りしますが、本編の修理作業は残念
ながら失敗に終わります。一体型PCの分解過程を参考になさるなどの目的でご覧下さい。
 

2009年発売のFUJITSU製FMV-K5270
インテルCore2DuoP8600(2.40GHz)搭載機です。



電源スイッチを押すといったん起動するものの、
OSの読み込み段階で電源が落ちてしまいます


 
・本体分解作業

典型的な電源ユニットの不具合と思われます。
同様の故障を何度か修理したことがあります。 

一体型のため筐体の構造が複雑で、
分解・組立は簡単ではありません。
 

ESPRIMO・Kシリーズは、数世代(当時)に
わたりほぼ同様の構造に設計されています。
 

 
順序良く外側カバーを外していきます。
サイドに続きトップカバーを外します。
 

サイドカバーが外れていれば、トップ
カバーは横にスライドさせるだけです。
 
 
トップカバーの中に背面カバーの固定
ネジが隠れています。2本とも緩めます。
 

背面カバーは、まず上の方に
少し引き上げておいてから・・
 


後方に取り外します。ここまではユーザが
メンテナンス時にアクセスできる範囲内です。
 

問題のある電源ユニットは、この金属製
カバーの下に取り付けられています。

 

 
ここから先に分解を進めた場合、製造メーカーは
有償・無償いずれの補償もしないと思われます。

 
・電源ユニットの取り出し

発売から10年近く経過するので、有償によるメーカー修理も終了していると
思います。補修部品の在庫がなければ修理のしようがありません。しかし、
学校は簡単に設備更新の予算措置もできず、何とかするしかありません。
 

この1台を修理できないと、生徒1名が授業でPCを使用
できない事態を生みます。金属製カバーを取り外します。
 

このネジを最後に計5本の
ネジで固定されていました。
  

金属製カバー側面にあるD-SUB9ピンと
25ピンコネクタへのFケーブル配線です。
 

シリアル・パラレルコネクタへの
Fケーブル配線を抜いておきます。
 

金属製カバーが外れると、中から
電源ユニットやマザーボードが現れます。
 

電源ユニットを取り外すため、
接続ケーブルを全て抜きます。
 

液晶パネルのバックライトへの電源供給ラインで
しょう。もう1枚のカバーの中で接続されています。
 

先に取り外した金属製カバーと
巧妙に嵌合構造になっています。
 

このケーブルが外れると電源ユニットは
完全に解放状態になるはずですが・・、
 

電源ユニット本体は、本体のボトムカバーの中でも
固定されています。カバーを外さねばなりません。
 

ボトムカバー左右のネジを緩めますが、
これだけではカバーは外れません。
 

先に回転台を外しておく必要が
あります。4本のネジを緩めます。
 

回転台が外れると、電源ユニットに
付属するクーリングファンが見えます。
 

ボトムカバーは、中心部の1本を含め
計5本のネジで固定されています。
 

さらに、前面スイッチパネルの
固定ネジも緩める必要があります。
 
 
ボトムカバーが外れ、これで完全に
電源ユニットにアクセス可能になります。
 

電源ユニットの固定ネジを緩めます(ボトムカバーが
まだ付いているのは写真が前後したためです)。
 

電源コードソケット・電源スイッチ周りの
樹脂製グリルパーツを外します。
 

固定ネジが電源ユニット筐体内部に届いて、
筐体を分解できない可能性があります。
 

電源ユニットと干渉するカバー類、
および固定ネジを全て取り除きました。

 

電源ユニットをゆっくり移動させて
見ます。特に障害はないようです。

 
・本体内部のメンテナンス

せっかくPC内部が露出しているので、奥深く
入り込んでいる埃等を掃除機で取り除きます。
 

クーリングファンの本体内部側(CPU放熱
器側)に大量の綿埃が集積しています。
 

冷却効果が著しく低下していたはずです。
こちらも掃除機を使って完全に取り除きます。
 

念のため放熱器やCPU
周辺の状態も点検します。
  

CPU放熱器の固定金具を外します。省スペースの
ためか放熱器用のクーリングファンは略されています。
 

放熱器を外します。プロセッサ
Core2DuoP8600が見えます。

 

気流方向に合わせて放熱フィンが配置されて
います。ほとんど埃が付着しておらず綺麗です。
 

プロセッサもいったん
取り外して見ます。
 

プロセッサ・ソケットの双方にエアを吹き付けて
埃を飛ばします。ピンの状態を確認します。

 

放熱器とプロセッサの接触面に
熱伝導グリスを補っておきます。

 
・電源ユニットの点検・修理

電源関係の故障はほとんど電解コンデンサの劣化に起因
します。先にマザーボード上のコンデンサを点検します。
 

劣化したコンデンサは頂上部が膨張したり変色
したりします。が、特に異常は見当たりません。
 

ACコードを接続し電源を入れ、マザー
ボードに供給される+5Vを確認します。
 

+2Vを下回りかつ安定しません。しばらくすると
完全に0Vになりました。明らかに異常です。
 

PS-ON端子をショートさせることで電源ユニット単体でも動作確認を
行いました。結果は同じで、しばらくすると電源が落ちてしまいます。
この時点で、電源ユニット側に問題があることが明らかです。
 

電源ユニットはDELTA社(台湾)製、148WのATXです。
形状からして富士通製一体型PC専用かと思われます。
 

内部の回路(おそらく電解コンデンサ)に
問題があることは明らかです。分解します。
 

クーリングファンの取り付け方がユニークです。
1台でCPUと電源ユニット両方を冷却しています。
 

外側カバー、絶縁シートの下に高圧発生・
整流側の基板が組み込まれています。
 

基板は外側カバーから独立して取り付け
られています。基板の固定ネジを緩めます。
 

高圧側基板を持ち上げると、反対側に分圧側の基板が
見えます。両者は4本のコードで接続されています。
 

外側カバーは、クーリングファンの
取り付けブラケットを兼ねています。
 

分圧側基板の裏側を見ています。多くの
チップパーツが表面実装されています。
 

2枚の基板を取り外しました。両者は+B(赤)、-B(白)、
PS(緑)、SB(青)の4本のコードで互いに接続されています。
 

電解コンデンサを確認します。マザーボード
同様、見たところ特に異常がありません。
 

見た目ではなく電気的特性に劣化があるかも
知れません。取り外す前に番号を記入します。
 

大容量(1500μF)のコンデンサが使用されて
います。取り外して1本ずつ点検します。
 

導通を調べます。チャージが進むにつれて
抵抗が大きくなります。問題ありません。
 

回路計の容量測定モードでも確認します。
1500μFに対して1508μFと正常です。
 

3本が1500μFに対して1800μF近くを示しましたが、
容量抜けなどの明らかな劣化はありませんでした。
 

不具合の原因になりがちな電解コンデンサ
なので、念のため全て新品に交換します。
 

背の高さと太さは相反する関係にあります。
同サイズのパーツがないと実装に苦労します。
 

元のコンデンサを取り外した後、半田クリーナを
使ってランド周りを綺麗にしておきます。
 

電源回路には容量の大きい(80~100W)
半田ごてを使用し、半田を十分に流します。
 

電解コンデンサの交換で不具合が解決したか確認
します。クリップを使ってAC100Vを仮接続します。
 
 
動作確認の全体風景です。400V以上の高電圧が
発生しているので短絡や感電に十分留意します。
 

コネクタのPS-ON端子(緑)を
短絡し電源ユニットを起動します。
 

起動してしばらくクーリングファンが回り
ますが、間もなく停止してしまいます。
 

+5Vの出力を確認すると、マザーボードに接続して確認した時と同様に電圧が異常に
低く安定しません。間もなく0Vに戻ってしまいます。電解コンデンサが原因ではなかった
ようです。劣化はなかったと言えます。残念ながら交換作業は徒労だったということです。
このPCは「直らなかった」では済みません。電解コンデンサ以外で不具合の原因を探し
当てるか、何か別の解決方法を考えなければなりません。その後の顛末は続編にて。

 
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