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FMV-K5270電源修理 挽回編(2016.3.12)

電解コンデンサの交換では復旧しなかった電源ユニット(DELTA製DPS-148BB A)です。
修理作業は振り出しに戻り、不具合の原因を最初から探し直さねばなりません。PS端子を
短絡すると短時間だけ電圧が出ること、SB(スタンバイ)出力は正常に出ていることなど、
複数の不可解な症状に攻略を妨げられています。特殊な一体型PC専用のユニットなのか、
ネットショップ・オークション、頼みのAliexpressにも同等品・類似品は見当たりません。
 

再度この状態に戻して原因を探ります。裏面に表面実装
されているチップパーツが多く、解析は極めて困難です。

 

比較的近いものとして入手できた回路図です。チップ
パーツによる細かい制御系は含まれていません。

 
・代替電源ユニットの用意

解析中に代替の電解コンデンサから火花が飛び、SB電圧も
停止してしまいました。元の回路は放棄せざるを得ません。
 


廃棄されたPCを分解し取り出された電源ユニットを
手に入れました。点検したところ正常に動作します。
 

出力240Wで十分です。元のユニットが一体型PC用で
比較的小型のため、大容量のものは必要ありません。
 

これを移植利用することを考えます。ただし、K5270の電源
ユニットケース(写真)内に完全に収めなければばなりません。
 

代替用の電源ユニットを分解します。外形から
想像するに、何とか収まりそうに見えますが・・
 

 
内部の回路基板が見えてきました。
240Wにしてはコンパクトな設計です。
 

AC電源のソケットは元のユニットと同サイズのもの
です。110V・220Vの切り替えスイッチがあります。
 
 
固定ネジを全て緩め、ACソケットからの
配線を切断して基板を取り出します。
 

元の回路基板は2枚組になっていました。それに比べて
かなりコンパクトです。十分収めることが出来そうです。
 

実際に元のケースに収めて見ます。
幅方向は十分余裕があります。
 

 
奥行き方向は、この一部飛び出した
基板が、ケースから完全にはみ出ます。
 

このように、飛び出しているのは基板のごく
一部で、他の部分はケース内に収まります。
 

高さ方向にも余裕があり、部品や半田面が
ケースに接触することなく収納できます。
  

110V・220Vの切り替えスイッチは、短絡状態で
110V対応なので、基板側で短絡させて省略します。

 

AC100Vソケットは再利用する
ので、予め取り外しておきます。

 
・代替電源ユニットの移植

代替電源ユニットの電源取り出しコードです。各種電源(+5V、±12V、
+3.3V・・)が1カ所からまとめて引き出されハーネスを構成しています。
 

このハーネスはコネクタ規格も長さも異なるため
利用できません。半田を溶かして取り外します。
 

元のハーネスを移植するため、コードの接続ランドは
クリーナを使い余分な半田を綺麗に取り除いておきます。
 

代替電源ユニットからハーネスが切り離され
ました。コードの色分けはほぼ共通です。
 

K5270の元の電源ユニットの
電源取り出しコードです。
 

この白(FAN-M)とピンク(FAN-SYS)の2本だけ、
代替電源ユニットには該当するコードがありません。
 

元のハーネスは再利用するので、傷めない
ように丁寧に半田を溶かして取り外します。
 

ハーネスの移植作業にかかります(白・ピンクを
除く)。コードの絡まりや位置関係に留意します。
 

全てのコードを接続し終わりました。ハーネスの引き
回しを考え一部のコードは延長(継ぎ足し)しました。
 

移植の上で大きな問題となるのが、
この基板の飛び出し部分です。
 

飛び出し部分の根元の様子を確認します。
境界を跨ぐパーツはセラコン1個だけです。
 

セラコンとランドによる接続を維持すれば、
飛び出し部分は切り離しても問題ありません。
 
 
電力の供給は、1本は切断されたランド、
もう1本はビニルコードによる配線です。
 

代替用の基板が2つに分割されました。
移植先での実装に目途が立って来ました。
 

移植先、元の電源ユニットケースに
代替用基板を収め、按配を見ます。
  

ハーネスの引き出し口が明らかに狭い
ため、ケースを加工して拡大します。
 

金切り鋸で切り込みを入れます。ケースの
強度を確保するため、ほどほどにします。
 

2方向から切り込みを入れて
間口を四角形に拡大しました。
 

ケースの切り口でハーネス(ビニルコード)の
被覆を傷付け、短絡を引き起こす恐れがあります。
 

別途太めのビニルコードの被覆を
加工し、保護カバーを作ります。
 

被覆の一部を、カッターナイフで
軸方向に切り裂いておきます。
 

切り口に被せることでハーネスの
被覆は損傷の心配がなくなります。
  

代替用基板をスペーサを介して元のケースにしっかりネジ止めします。ケース
内壁表面と十分なクリアランスがあるので、接触の危険性はありません。
 

切り離した基板と、電力供給ライン
(2本)とセラコンを配線・接続します。
 

周りを囲むカバーを取り付けて見ます。
ケース内にまだ余裕があります。
 

ここに切り離した基板が収まりそうです。
ACソケットとの接続も配線済みです。

 

このスペース内でネジ止めは無理ですが、絶縁
保護材を含めて基板を押し込むことは可能です。

 
・電源ユニット実装、動作確認

クーリングファンを取り付けて通電してみます。
ファンが回転し各電圧が正常に出力されます。
 

ところで、白・ピンクのコードが放置されています。
BIOS起動時に「FANエラー」の表示が出ます。
 

電源ユニット基板のパターンを調べると
このような回路を構成しています。
 

ダイオードを介し電源ユニットの+12Vを引き出して白へ、
クーリングファンのパルス出力(青)をピンクへ接続します。
 

元の電源ユニットケースに回路基板を収めた状態でPC(K5270)に
一度載せて見ます。ハーネスの取り回し具合を慎重に確認します。
 

ハーネスを取り回し、コネクタを
各々の接続先に差し込みます。
 

クーリングファンともに電源ケースのカバーを取り
付けます。ケース内での配線の干渉に留意します。
 

電源投入後、BIOSが正常に起動しています。
「FANエラー」も表示されなくなりました。
 

撮り残しておいた写真を頼りに、本体を
元通りに正しく組み上げていきます。
 

あらためてOSの再インストールを
行います。USBから起動させています。
 

無事にセットアップが終了しました。メーカーの設計によりマッチングのとられた
電源ユニットではないため、長期間にわたり安定して動作するか不安が残ります。
そのため現在、工房内でランニングテスト中です。電源のON・OFF、24時間
程度の連続稼働、その後の発熱状態などを確認した上で学校へ納品します。

 
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