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ホンダこまめF200 キャブレター交換(2016.10.18)



近県にお住まいの方から、家庭用耕運機本田こまめF200の整備の依頼を
頂戴しました。最近エンジンが不調になり、キャブレターを交換されたいとの
ことです。ご自身で新しいキャブレターを既に入手済みです。WEBの記事
ご覧になり腕を見込んで下さったようです。何とも有難いことです。軽トラック
(私も喉から手が出るほど欲しい)に載せて工房を訪ねておいでになりました。

 
 1.状況の確認

工房に到着直後のこまめF200です。
発売から30数年を経て年季が漂います。
 

トップカバーの樹脂表面は、長年にわたり
太陽光に晒されて退色が進んでいます。
 

エアクリーナーカバーの側も、荒れた
表面に汚れが入り込み年代を感じます。



しかし、各部パーツの状態は悪くありません。
以前に工房で再生したF200よりも良い状態です。

 
 2.分解作業

分解作業を開始すると、以前に整備した
時の記憶が一挙に蘇ってきます。
 
 
エアクリーナーカバーを取り外し、ボックス
底部を固定しているボルトも緩めます。
 

トップカバーの固定ネジを緩めます。
白い樹脂がひどく汚れています。
 


トップカバーを取り外します。中に
リコイルスターターが見えます。
 

リコイルスターターはフライホイールカバーと
ともに3本のボルトで固定されています。
 

リコイルスターターに続いてフライ
ホイールカバーを取り外します。
 

交換対象となるキャブレター周りを見ています。オイル混じりの
泥汚れに覆われていますが、各部に目立った損傷は見られません。
 

燃料コックの前後配管にガソリンの滲みが見られ
ます。燃料コックから僅かに漏れているようです。
 

前回と同じく、燃料タンクを保持する金属ベルトの
固定ネジが固着しています。レンチを併用します。
 

エアクリーナーボックスとキャブレターを固定
しているボルトです。六角ナットを緩めます。
 

奥側の六角ナットにはレンチが入りません。
ラジオペンチを伸ばして少しずつ緩めます。
 

エアクリーナーボックスの外側を這う
ブローバイ用配管を外しておきます。
 

燃料タンクからの配管を外します。
固着しているのでニッパを利用します。
 

燃料タンクからガソリンが落ちてくるので
ドライバの先を差し込んでおきます。
 

キャブレターとシリンダーの接続口にあたる
マニホールドの固定フランジナットを緩めます。
 

ようやくエアクリーナーボックスを
分離させることができます。
 
 
過給燃料の戻り経路やブローバイなど
数本の配管状態を確認しながら外します。
 

スロットルのガバナーロッドおよび
リターンスプリングも外します。
 

ガバナースプリングも点検します。
特にヘタリ等はないようです。
 

マニホールドごとキャブレターが外れてきました。マニホールドから
延びる長いボルトがキャブレターの両サイドを貫通しています。

 
 3.キャブレター周りの整備

取り外した元のキャブレターです。ガソリンのヤニ
成分を含む汚れが広がり、一部に錆も出ています。
 

ご依頼主が入手された新品の
キャブレターと比べてみます。
 

配管の一部に問題を見つけました。キャブレターに
燃料を供給するチューブの端が破れています。
 

破損個所からガソリンが
漏れていた形跡があります。
 

このチューブはストレーナを出て大きく
方向を変えてキャブレターに入ります。
 

純正パーツもこの形状に作られており、
汎用品のチューブは折れてしまい使えません。
 

配管の屈折を防ぐため、肉厚の
あるゴム管を代用します。
 

ストレーナとキャブレターを接続しました。
うまく湾曲するか組み付け時に確認します。
 

長い年月を経ているのでストレーナ
(燃料フィルタ)の状態も確認します。
 

樹脂製ストレーナの内部が黒ずんで見え
ます。ゴミや汚れが溜まっているようです。
 

入り口側を下にして軽く叩くとこのようにゴミが出て
きます。本来ならば新品に交換したいところです・・
 

が、この小さな部品が1000円近くします。
逆方向にエアを吹いて清掃・再利用します。
 

マニホールドとの接合部パッキンは、新品
キャブレターに付属してきたものを使用します。

 

キャブレターとマニホールドを合体させます。
残るは元通り本体に組み付けるだけです。

 
 4.スリーブ製作

マニホールドからの長いボルトをエア
クリーナーボックスに通そうとしたところ・・
 

貫通穴の中に入れられている金属製
スリーブの一方が脱落しています。
 

スリーブ無しでは樹脂部品が潰れてしまう
ので、8mm径真鍮丸棒から自製します。
 

スリーブの内径は5.3mmです。
真鍮丸棒に貫通穴を加工します。
 

真鍮丸棒をレース盤にセットし
センタードリルで中心を決めます。
 

さすがにブレや振動が全く発生しません。
静かに滑らかに穴加工が進みます。
 

センタードリルを5.2mm径ドリル刃に
変えて必要な内径に加工します。
 

最後にバイトにより真鍮丸棒の端面を
整えながら、スリーブ長を合わせます。
 

この金属製スリーブを仲介させないと、フランジナットに十分なトルクを与えられず、
エアクリーナー・キャブレター・マニホールドの密着、つまり気密性が低下します。

 
 4.新キャブレターの取り付け

自製した真鍮製スリーブを貫通穴に通し
ます。スリーブ無しでは樹脂が潰れます。
 

新しいキャブレターをマニホールドと
合体させ組み付け具合を確認します。
 

手が届くうちにガバナーロッドと
ガバナースプリングを取り付けます。
 

マニホールドの出口側ポートを
エンジンシリンダに組み付けます。
 

配管やスロットル機構が干渉していないか
確認しながら徐々に押し込んでいきます。
 

交換した燃料供給用チューブも、きつい
湾曲に関わらず潰れていないようです。
 

何とか元の位置に収まりました。エアクリーナボックス・キャブレターは、
エンジンシリンダに固定されたマニホールドに支えられる構造です。
 

マニホールドを貫通しているボルトに
フランジナットを締め込みます。

 

ブローバイ配管も元通り取り付けます。再度、
キャブレターの組み付け状態を確認します。

 
 5.試運転

キャブレター内にガソリンが充填されるまでしばらく
時間がかかります。その後スターターを引くと・・
 

無事にエンジンが始動しました。キャブレター内の
ガソリンが安定するまでしばらく回転が上下します。
 

次第に回転が安定してきました。やはり
新品キャブレターの調子は抜群です。

 

アイドリング状態でもローターが回転しようとします。
クラッチが僅かに繋がっているので調整します。

 
 5.フライホイールカバー再塗装

依頼されたわけではないのですが、折角工房で
修理させていただいたので一部を再塗装します。
 

劣化の著しいフライホイールカバーです。
先に洗剤を使って水洗いします。
 

完全に乾燥させた後、プラサフを吹き付けます。
乾燥後にペーパーでざらつきを除去します。
 

「ホンダレッド」を吹き付けます。
一挙に販売当時の輝きが蘇ります。
 

自動車補修用の「ボカシ剤」を併用すると、吹き付けムラを最小限に
抑えることができます。この赤はこまめ現行機種でもトレードカラーです。
 

エアクリーナーカバーや燃料タンクカバーは
樹脂復活剤を用いて表面を処理します。

 

トップカバーも再塗装したいところですが
洗剤と研磨剤を使用した水洗いに留めます。

 
 6.交換作業終了・完成

塗装が完了したフライホイールカバーを
取り付けます。爽快な印象を放ちます。
 

最後にトップカバーを取り付けると
2回目のこまめ整備作業も完了です。
 

できればメインフェンダも、錆を落として白く再塗装したかった
ところです。依頼主のご意向もありますのでここまでにします。
 

後部(作業者の側)から見ています。見た目も再生した
こまめで、畑での作業がより楽しくなるのではないでしょうか。
 

時間をおいて再度エンジンをかけてみました。問題なく始動します。燃料
コックからの微量のガソリン漏れが気になりますが、交換用純正パーツは
税抜きで1500円もします。ご依頼主にお考えを聞いてからにします。

 
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