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ビルトインマルチエアコンの故障と修理(2016.2.02)
   大陸から寒波が南下してきて厳しい寒さが続いています。その最中、工房に設備されているビルトイン(天井埋め込み型)マルチエアコンが故障しました。
 実は今回で3度目の故障で、最初は室内機から大量の水漏れ、次は室外機内部でリークがあり漏電ブレーカーが飛ぶ、いずれもメーカーから出張修理に来てもらいましたが、原因不明かつ部品の供給が終了しているとの理由で、何も修理せずお金だけ取って帰って行きました。
 水漏れの原因は排水ポンプの取り付けブラケットが、樹脂の経年劣化により破損し排水ポンプが脱落したためで、取り付けネジの長さを変えて自分で修理しました。
 漏電は室外機に組み込まれているリアクタのフレームに錆が
 
広がったためで、絶縁体を挟み固定し直して解決しました。
 室内機(CS-BMG40RC2)は2階と3階に設置され、2階のベランダに室外機(CU-MG67R2)が置かれています。冷房能力6.8kwの室外機に4.0kwの室内機が2台接続されています。いずれも20年以上前のNational社(現Panasonic社)製品です。
 同クラスの現行機種で機器更新の見積もりを取り寄せてみると、工事費用・処分費用を含めて35~36万円、機材だけ購入して自力で取り付けると25万円弱になります。
 工房の経営状態からしてとても賄える範囲ではありません。かくなる上は、「Repair」を営業品目にする守谷工房の技術力を発揮して、故障原因の究明と修理に挑みます。

リモコンでスイッチを入れても室外機は全く動き出しません。
しばらくすると室内機の3個のLEDが同時に点滅し始めます。
 

おそらく、制御部品や制御基板が集中している
室外機側に故障原因があると思われますが・・
 

トラブルシューティングのヒントを得ようとネット検索してところ、
素晴らしいWEBサイトを見つけました。アスナロネットです。
 

「室内機の全てのLED点滅で停止する」はDCピークの
エラー! 基板とパワーTRの交換が必要とあります。
 

固定ネジを緩めて室外機の上蓋を開けます。巨大なコンデンサや回路基板が
見えます。回路図もなく基板やパワートランジスタに手を出すのは気が引けます。
接続されている電源は単相AC200Vです。作業前にブレーカーを切っておきます。
 

室外機の制御基板です。エアコンの制御機能が凝集し何本もの
ケーブルが接続されています。下側は電源の受配電端子です。
 


制御基板を取り出しました。中央にプロセッサがありほとんど
PCの基板のようです。デジタル系に問題があると厄介です。
 

取り外す前にケーブル(コネクタ)の接続関係を
写真に残しておきます。基板左上部分です。

基板右上部分。プロセッサはD78328、NEC製
16/8bitの1チップマイクロコントローラです。
 

基板左下部分です。黄・青・赤と並ぶコネクタからは
インバーターのパワーTRを駆動する制御信号が出ます。
 


基板右下部分です。8セグメントの数字LEDが1個取り
付けられています。室外機の動作状況をモニターします。
 
 
 制御基板を裏側から点検します。基板表面に保護剤のコーティングがなく、筐体内とは言え長年寒暑に晒されてきたわけです。
 半田の腐食やクラックの発生が十分考えられます。電子部品やケーブルの接続不良であれば、比較的簡単に復旧させることができるでしょう。
 しかし、意外と半田の状態は良好で明らかな接続・接触不良は見当たりません。それでもアスナロネットのアドバイスに従い、
 
コンデンサなど背の高い部品、力のかかるソケットは再半田付けしておきます。

 制御基板を元に戻しケーブルを全て接続して再度電源をれてみます。結果は・・変化なしです。接続不良個所が他に残っているのか、電子部品の破損があるのか、制御基板以外に故障原因があるのか・・、泥の中へ潜り込んで行きます。
 

重要なことを見逃していました。実は同型のマルチエアコンが
1階にも設備されています。こちらは正常に機能しています。
 

基板のように完全に取り出すことのできる部分は、同型機
同士で入れ替えてみれば不良の有無がすぐに分かります。
 

最初に制御基板を交換してみました。が、状況は変わり
ません。つまり、制御基板に問題はないということです。
 


次に疑われるのはインバーターのパワーTR基板です。
250Vに達する高圧回路の配線を先に確認します。
 

太めの赤・青・黄ケーブルで周波数可変の3相
交流がコンプレッサのモータに送り込まれます。
 


パワートランジスタモジュールの隣に整流用ダイオード
ブリッジが2個取り付けられています。配線を記録します。
 

室外機から放熱器ごとパワーTR基板を取り外します。言うまでもなく予め
ブレーカーを切り、大容量コンデンサが十分に放電するのを待って作業します。
 

取り外したパワーTR基板です。大きな放熱器上にパワーTR
モジュールと整流用ダイオードブリッジが固定されています。
 

放熱器の表側です。室外機ファンの送風が
フィン表面にも当たり、パワーTRを冷却します。
 

パワーTR基板を入れ替えると・・・エアコンは正常に動作します
これで、パワーTR基板に問題があることが判明しました。
 

動作しない側のパワーTR基板に戻り、先に整流用
ダイオードブリッジに問題がないか点検します。
 

内蔵されている4個のダイオード、および
相互の接続いずれにも問題ありません。
 

さらに故障個所が絞られて、パワーTR基板すなわち「パワーTR
モジュール」あるいは「ドライブ基板」のどちらかに問題があります。
 

パワーTRモジュールとドライブ基板は、17本の
端子が半田付けされて互いに接続されています。
 

17本の端子はパワーTRモジュールから
直接外部に取り出されています。
 

ドライブ基板を取り外すため、17カ所の半田を除去します。
呼び半田を補いながら固着・変質した半田を溶かします。
 

半田吸取器を使用して、スルーホールの
内側まで半田を完全に取り除きます。
 

スルーホール内で端子の周囲に隙間が見えれば、
基板の取り外しがほぼ可能な状態になっています。
 

ランドや配線パターンを破損しないよう
ドライブ基板を丁寧に取り外します。
 

半田付けの状態を目視にて点検し、制御基板と同様に
コンデンサやコネクタを中心に再度半田付けし直します。
 

フォトカプラーを使った単純なアイソレート回路
なので、故障の可能性は低いと思われます。
 

いったんドライブ基板を取り付けパワーTR基板を
元に戻しますが、まだエアコンは動作しません。
 

100%と断言できないものの、ドライブ基板
(G67RU681)はおそらく正常でしょう。
 

パワーTRモジュール(PM30CEF060-33)が
破損している可能性が高く、交換が必要です。
 

国内には存在しないG67RU681+PM30CEF060の
同等部品が、こちらのサイトに$63で在庫があります。
 

$63の同等部品はUSED(中古)のため、寿命に不安が
あります。他方、PM30CEF060の単体は$28です。
 

パワーTRモジュール(PM30CEF060)の新品を
発注し、交換に備えて元のモジュールを取り外します。
 

熱伝導グリスを介し2本のネジによって
放熱器に強力に固定されていました。
 

インバーターの搭載により劇的な効率化を果たしたエアコンですが、高圧の三相交流を
高速スイッチングするパワーTRのお蔭です。室外機内の厳しい環境下で20年以上も
働き続けたのですから、故障したとは言え十分に耐久性に富んでいると考えるべきです。
それ以外の部分は全て機能しているのですから、メーカーは保証期間(無償保証期間
ではなく補修部品の保管期間や修理対応期間)を20年間以上に拡大するべきです。
 

まだ修理が完了したわけではありません。中国本土へ注文したパワーTR
モジュールが届いてから、1階のマルチエアコンを復活させることにします。

 
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