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置時計の修理 その3(2015.12.27)

シャフトの折れ曲がり、シャフト端の折断を修理した歯車ですが、
僅かなセンターの偏心が連続回転を阻害しているようです。
 

シャフトが折れた痕にステンレス線埋め込みのため開けた穴が正確ではなかった
ということです。シャフト径が軸穴よりも小さかったので、2.0mmのドリル刃で穴を
開け直し、直径がほぼ2.0mmの棒材(30mmの鉄釘を流用)を半田付けしました。
軸穴の内径よりも若干太いため、小型旋盤でシャフト径を微調整します。その結果は、
最初の修理に比較すると回転が連続するようになりましたが、やはり数時間のうちに
停止
します。あの気の滅入るムーブメントを挟むプレートを、既に幾度となく分解し組み
立てています。伝統的な機械式時計のメカニズムは、繊細で実に奥深いものです。

 
7.歯車シャフトの再修理

シャフト端のセンター偏心を解消するには、
何か別の方法を考えなければなりません。
 


先に埋め込んであったシャフトを、
半田を溶かして取り除きます。
 

穴の内部に残る半田を
いったん綺麗に除去します。
 


シャフトを偏心させるもう一つの要因として、
棒材が垂直に立っていない可能性があります。
 

そこで、半田付けの際に棒材を垂直に
保持するための治具を考えます。

上下に分かれた木材のブロックを
2枚の合板の内側に並べます。
 

上側の木材ブロックのみ合板の内側に接着し、
それぞれにシャフト径に合った穴を開けます。
 


木材ブロックを重ねた時、穴は完全に
一致して貫通していなければなりません。
 

木材ブロックの一方に歯車の
シャフトを差し込みます。
 


合板の内側に歯車ごと
木材ブロックを入れます。
 

他方の木材ブロックの外側から
シャフト(鉄釘を流用)を差し込みます。
 


作業中に位置がずれないよう、クランプを
かけて木材ブロックを固定します。
 

この状態を保ったまま、シャフト
基部に半田ごてを当てます。
 


必要な長さに切断します。垂直度が改善
された結果、偏心は低減するはずです。
 

理想的には歯車のセンター(回転中心)に
正確にシャフトが付いていることが必要です。
 

しかし、小型旋盤の加工精度等により
多少のずれ・誤差は避けられません。
 

埋め込んだシャフトに一定の偏心があると仮定します。
この状態からある程度偏心を低減させる方法を考えます。
 

シャフト径を調整する際に、バイトあるいはヤスリを
このようにオフセットを加えて斜めに当てます。
 

元のシャフトのセンターから影響を受けて、このようにシャフトの先端が
切削・研磨されるはずです。元々シャフト径は軸穴内径よりも大きいので、
テーパー部分のどこかで軸穴と(より少ない偏心で)密着するはずです。
 

加工の終わった歯車です。周囲にかなり半田が広がり見た目が
悪くなりましたが、連続して回転してくれることを期待します。

 
8.歯車の再組み込みと動作確認

15分毎にハンマーを駆動して音叉を叩き、しかも各々異なった
メロディを奏でる仕掛けがこの部分です。巧妙に形状加工された
カムとその回転制御機構が見事に調和しながら動作します。
 


最後の時報が鳴り終わり、
数分が経過した状態です。

 

この時、カムは写真の位置にあり、カムの溝に
レバーから突き出たピンが落ちています。
 

毎時15分の位置に、手で
長針をゆっくり移動させると、
 

レバーが押し上げられて回転制御が
解除され、カムが回転し始めます。
 

カムに刻まれた最初の小さな山を越えたところで、ピンが溝に落ち、
回転制御が働いて停止します。この間にチャイムが短く鳴ります。
 

カムが回転している時間に応じて、異なった長さのチャイムが
鳴ります。毎時30分を過ぎ、さらに毎時45分を過ぎると・・
 

毎時30分の溝にピンが落ちて停止した状態から
再び回転し、毎時45分の溝に落ちて停止します。
 

再び時報時刻になりました。最も長いチャイムと、
続いて時刻に応じた回数だけ時報が鳴ります。
 

カムの山部分が最も長く作られています。
ウェストミンスターがフルに奏でられます。
 

時報時刻を割り当てられたカムをよく見ると、山部分の最後が
一段と高く刻まれています。連動してレバーも持ち上げられます。、
 

時報用音叉の駆動部分にある、
時報開始を制御するレバーです。
 

カムの山によりレバーが持ち上げられると、時報開始の
制御レバーが左方向に倒れてロックが外れます。
 
 
長針を手で直接回しながら、15分毎のチャイムと60分毎の時報を確認します。
ゼンマイを6割方巻き上げた状態から、12時間分は正常動作を確認することが
できました。修理した歯車は1回転以上しているはずなので、この段階では取り
あえず回転は阻害されていないように思われます。ただし、時計が自力で動作
していたわけではないので、機能が元に戻ったと言い切ることはできません。
 

複雑な輪列の中にまだ動きが重く鈍い部分が隠れているかも知れません。また、
破断がなくてもゼンマイがへたるなど特性が変化している可能性もあります。
これらは長時間(数日間)にわたる動作確認を経ないと十分に把握することは
できないでしょう。例の歯車を新品に交換することが最善の解決策ですが、
時計修理店のWEBを見るに費用は高額です。ご依頼主のご意向次第です。

 
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