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電気掃除機カーボンブラシ交換(2017.1.16)

昨年末来お預かりしていた電気掃除機です。事情があり修理作業が
大きく遅れていました。手元スイッチを操作してもモータが起動しません。
当然、全くゴミを吸い込みません。先端のパワーブラシは回転します。
 

従来型のフィルタ方式で、
紙パックのいらないタイプです。


三菱電機ホーム機器製TC-EXD8P-W型、2014年
5月発売、現行機種はD→E・Fと進化しています。
 

基本的な部分から点検を始めます。
まず、本体からホースを抜きます。
 

ソケット部に電極が3本取り付けられています。
AC100Vの電力用とコントロール用でしょう。
 

本体側ソケット部は、内側に
電極の差し込み穴が見えます。
 

電源コードをコンセントに差し込んだ
状態で、電圧の有無を調べます。
 

AC100Vが確認できるので
ここまでは通電しています。
 

手元スイッチ部の不具合が疑われます。
この部分の分解は簡単ではありません。
 

先にソケット周りを分解します。
カバーを固定しているネジを緩めます。
 

ソケット部のカバーがスライド
しながら抜けてきます。
 

電極と回転シューが露わになりました。
回転シューは上下に2分割されています。
 

内側のリング状電極にシューが接触して
自由に回転します。特に問題ありません。
 

手元スイッチ部の分解に移ります。
実装がタイトなので気が進みません。
 

ほとんどの場合、前後2か所
でのネジ止めに過ぎません。
 

頻繁に手に触れて力が加わる部分なので、内側にある強固な篏合に
よりタイトに組み付けられています。無理をすると爪部品を破損します。
 

厄介な手元スイッチ部の分解をいったん
保留にします。本体の分解を進めてみます。
 

一見しただけでは、どのネジが何を
固定しているのか見当が付きません。
 

各部分をくまなく眺めながら、少し力を
加えて変形を確認しながら構造を探ります。
 

前方のホース差し込み部分の構造が見えて
きました。小さなキャップ状のカバーを外します。
 

続いてハンドル部の外側カバーを
手前に傾けるように引き離します。
 

根元部分に鉤爪のような突起があり
基部の穴に噛み合っていました。
 

左右2本の固定ネジが現れました。ハンドル部の
下側と本体上側カバーを同時に固定しています。
 

ハンドル部下側カバーはホースソケット部と一体
成型されており、底部で左右の爪にかかっています。
 

ハンドル部が外れてきました。家庭用掃除機とは
いえ、驚くほど複雑な3次元篏合構造です。
 

ホース差し込み口の内側に電力供給
側の電極が取り付けられています。
 

AC差し込みプラグとの間で導通を確認します。
導通があるような、ないような、よく分かりません。
 

途中に制御回路が入っているので、
単純な導通・不通にはなりません。
 

本体を逆さにした状態で
底部カバーを外します。
 

左右端の固定ネジ2本を緩めると
底部カバーが浮き上がってきます。
 

本体は大きく4ピースで構成されています。
ようやく露出したABS樹脂製の本体です。
 

コードリールを取り外します。ゼンマイバネが緩み、
コードが最後まで巻き取られなくなっています。
  

ハウジングごとモータを取り出しました。
高回転・高出力の整流子電動機です。
 

金属板でシールドされたサイドの
ボックス部分を引き抜きます。
 

ボックスの中にはモータの回転制御を行う基板が
収められています。外見上、特に損傷は見られません。


モータの周囲は騒音低減用のスポンジシートでくるまれて
います。掃除機の宿命で大量の埃を吸い込んでいます。
 

ブラシ(整流子)への配線を確認します。
コードの損傷などもありません。
 

モータ本体をハウジングから取り出します。吸い込み口の
前後は、ラバーシールで気密性が高められています。
 

大量の埃・煤を落としながら
モータが外れてきました。
 

ブラシ横の開口部から内部を覗いています。奥に整流子が見え、
2方向からカーボンブラシがせり出して接触しています。しかし・・、
 

カーボンブラシ先端の整流子との接触
部分で、何やら怪しい感じがします。
 

保持金具を外して、押し込まれている
カーボンブラシを取り出しました。
 

ものの見事に摩耗しています。
特にこちら側の摩耗が深刻です。
 

片側はかなり以前に摩耗限界を超えていた
ようです。左右不均一な摩耗は不自然です。
 

カーボンブラシの摩耗を発見した時点で、年末・年始にかかって
しまいました。補修部品を発注するも到着に日数を要しました。
 

新品の交換用カーボンブラシ(ユニット)です。ソケットと
一体になっており、ネジ1本・ドライバ1本で交換できます。
 

元の劣化したユニットを取り外します。既にブラシは
抜いてあるので、残るソケットを取り出します。
 

新しいカーボンブラシを取り付けます。(ここ
までの分解作業を除けば)実に簡単です。
 

固定ネジを強く締め付けます。電源は
内側の金具経由で勝手に接続されます。
 

開口部から整流子とブラシの接触具合を
確認します。正しくセットされています。
 

取りあえず制御基盤周りの配線を
元に戻し、通電試験を行います。
 

手元スイッチを操作すると、小気味良い空気
圧縮音をたててモータが回転し始めました。
 

カーボンブラシの劣化が、モータが回転しない原因であったことはこれで明らか
です。つまり、手元スイッチを含め他の部分に問題はなかったことになります。
 

メーカーサービスセンターの手慣れたエンジニアで
あれば、真っ先にカーボンブラシを点検するのでしょう。
 

時間や手間は余分にかかりますが、ダメモト守谷
工房は消去法でコツコツ点検するしかありません。
 

ゼンマイバネを2割ほど締め上げ、電源
コードが最後まで巻き取られるようにします。
 

分解に手こずった前部ハンドル
周りを、元通り組み上げます。
 

タイヤを嵌め込む前に、本体の白い
樹脂カバーの汚れをクリーニングします。
 

衝突しながら付着した汚れなので、簡単
には落ちません。コンパウンドを使います
 

収納時に垂直に立てておくため、背面
(立てた時の底面)もひどく汚れています。
 

完全には除去し切れませんが
かなりの美肌になったと思います。
 

この三菱製掃除機、「逃げるは恥だが役に立つ第8話」でガッキーが使っているのと同型
です(どうでもいい話)。アートディレクタの目に留まる無駄のない洗練されたデザインです。

 
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