守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ

スーツケースのキャスターホイール交換(2018.1.6)


長年愛用しているキャスター付きスーツケースです。容量が小さく
大して荷物を詰め込めませんが、機内に持ち込めるサイズです。

 

いつの頃からか移動中にゴロゴロと異音がするようになり、
最近は引いて歩くのが恥ずかしいほど大きな音がします。

 

異音は底部に取り付けられている
キャスターから生じています。

 

ホイールのトレッド(おそらく硬質ゴム製)が脱落し、段付きの
ホイール中心部が露出しています。段が異音の発生源です。
 

旅行先でテープを巻き付けたりして応急修理を試みた
こともありますが、ともあれホイールを取り外します。

 

シャフトピンの先をカシメ固定してあるだけ
です。カシメをほどきピンを抜き取ります。

 

ホイールやシャフトの材質、構造ともかなり
合理的に・・つまり安く造られています。

 

シャフトが抜けると同時にホイールが外れて
きます。軸受周りは堅牢に出来ています。

 

何と、ホイールにはベアリングが装填されています。
ゴミが詰まったのかひどく転がりが劣化しています。

 

洗浄剤と高圧エアでベアリング内部を清掃すると、転がりが戻ってきました。この段付き
ハブの外側を、硬質ゴム製のトレッドが覆っていたのでしょう。ゴムブロックを加工しトレッドを
復元するには大変な手間がかかります。相当品がなければホイールごと交換も出来ません。
 

取り外したホイールとシャフトを眺めながら解決方法を考え
ます。製造元に補修部品を問い合わせる・・面倒です。

 

ホームセンターに並んでいる汎用ホイールの中から
取りあえず元の径に近そうなものを購入してきました。

 

問題はホイールの幅が大きく異なる点です。
両側のベアリング端で比べるとかなり細いです。

 

これは取り付け方を工夫することで解決します。
六角ナットとワッシャを余分に用意します。

 

シャフトの代わりにボルトを使用します。ホイールの中心
ホール径にISOネジは合いません。インチネジを選びます。

 

インチネジは品数が限られ、丁度良い長さの
ものが手に入りません。長めのものを用意し、

 

ハンドグラインダで切断し長さを調整します。
バイスに固定し切断砥石を使います。

 

新しい切断砥石は切れ味が良好です。
数秒で切断が終わり切り口も綺麗です。

 

もう1本を出来るだけ同じ長さに切り揃えたい
ものです。2本を並べてバイスに固定します。

 

最初の1本を長さのガイド代わりにし
2本目にハンドグラインダを当てます。

 

同じ長さです。ハンドグラインダが舐めた跡が
ささくれて、このままではナットが通りません

 

ディスクグラインダに先端を回転させながら
ごく軽く当て、ささくれを取り除きます。

 

もう一つ以前と異なる点はシャフトがボルトに変更されることです。ホイールが回転
する際にネジ溝がホールの内側を切削してしまうことが心配です。もちろん、ネジ溝の
範囲が限られる半ネジを探しましたが、流用可能なものは見つかりませんでした。

 

外側の軸受からボルトをねじ込んでいきます。
軸受の穴を通ったところでボルトを一つ入れます。

 

その先にワッシャを入れます。ホイールの両側にボルトと
ワッシャを入れることで、ホイール幅の違いを解消します。

 

新しいホイールを通します。インチネジではなく
M6ネジを使うと、ホイールがかなりガタ付きます。

 

実は左右軸受の間隔は、ナットとワッシャを
2枚ずつ加えるにはほんの僅か足りません。

 

そこで、力を加えて軸受を少し広げ
ながらもう1個のナットを挿入します。

 

ひたすらボルトをねじ込んでいきます。このままでは
両側から圧迫され、ホイールの回転が重くなります。

 

再びスーツケースの置き方を変え、ソケットレンチで
ボルトをねじ込みます。軸受の広がりは僅かです。

 

ようやく反対側の軸受に
到達・貫通しました。

 

ここからホイール固定の微調整にかかります。まず、
最初のナットを固定しレンチでボルトを強く締め込みます

 

次に2個目のナットを回し左右に移動させて、
ホイールが軽く回転しガタ付かない位置を探します。

 

丁度良い位置でボルトに最後のナット(3個目)を
入れ、2個目のナットが動かないよう締め込みます。

 

ホイールが軽く回ることを確認します。2個目の
ナットは軸受間隔の調整機能を担っています。

 

ネジ溝によりホール内側が削れてしまうことが心配です。しかし、ガタ付いてきたら
再度ホイールを交換するまでです。ボルト類も安いユニクローム製なのでそのうち錆が
出るでしょう。ステンレス製を使いたいところですが、これも錆びたら取り換えるまでです。
多分本体のどこかがより深刻な問題に見舞われる事態が、先に来るでしょうから。

 

立ててスーツケースを引いてみます。軽く、音もなく、引いた方向に素直に付いて
きます。思い起こすと、駅や空港でずいぶん多くの人に迷惑をかけたものです。

 

スーツケースにとってキャスターはかなり重要な部品です(本修理品は安物でしたが)。
しかし、そのキャスターが壊れただけでスーツケース自体を買い替えるべきでしょうか。
危うく洗練されたデザイン・機能の新型に手を出すところでした。部品代1000円以下

 
守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ