守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ

CDプレーヤPD-5070修理(2017.10.20)


PanasonicVHSデッキNV-HC1を納品に伺ったところ、続いて
高級CDプレーヤ修理のご依頼をいただきました。PIONEER製
PD-7050、1987年発売で定価6万円以上もする高級機です。

 

重厚感のあるブラック塗装に、軽くヘア
ラインを入れメタル感を出しています。
 

とても覚えきれない多くの機能が搭載され、
前面パネルに操作ボタンがひしめきます。

 

ピンジャックによるアナログ出力の他、デジタル
出力を備えます(オプティカルではありません)。

 

背面に型番が印刷されています。故障してから長い
年月保管されていたそうで、全体的に埃まみれです。

 

30年前のオーディオ機器とあって、PIONEER社WEB
製品情報はありません。個人のWEBに残っていました。

 

その一方で、英語版のサービスマニュアルが閲覧できます。
ピックアップのサーボ機構なども詳しく解説されています。

 

CDを再生できない、とだけ聞いており、
あらためて動作確認を行います。

 

電源を入れると、前面パネルのディスプレイに
トラック情報やカウンタが表示されます。

 

CDトレイのオープン・クローズボタンを
操作します。何の反応もありません

 

本体の分解に入ります。まず左右
側面各2本の固定ネジを緩めます。

 

背面の上部にさらに2本
固定ネジがあります。

 

磁気シールドや放熱・振動対策のため、当時は
筐体材料に全面的に金属板が使用されていました。

 

PIONEER社の高級オーディオ機器へのこだわりでしょう、
底部筐体には鮮やかに銅メッキされた鋼板が使用されています。

 

CDトレイが出入りしない
原因を先に調べます。

 

外側からの目視では不具合個所を特定でき
ません。CDドライブユニットを取り外します。

 

ユニットを筐体に固定していると
思われるネジを緩めていきます。

 

トレイのロックが解除されて、外に出てきました。
トレイのローディング機構は下部にあるようです。

 

やはり前面パネルが障害になります。
固定ネジを緩め取り外すことにします。

 

CDトレイの化粧パネルが前面パネルの
枠に干渉します。スライドさせて外します。

 

前面パネルが外れました。ケーブル類を引き
ずりますが、CDユニットにアクセスできます。

 

前面パネルがない状態でCDユニット
手前部分を覗き込んで見ると・・

 

トレイが出入りできない原因が分かりました。トレイを前後にスライドさせる
プーリからゴムベルトが脱落しています。手前の駆動モータから、回転軸の
方向を90度ひねりながらベルトが掛かる構造です。モータは正常に回ります。

 

ネットを検索してみると、まったく同様の
不具合、および修理事例が見つかります。

 

こちらのサイトでもトレイ駆動ベルトの
劣化が原因として指摘されています。

 

ゴムベルトを取り外して点検します。
伸び切った状態で固化、変形しています。

 

工房の在庫からサイズの
合う1本を選び出します。

 

方向変換用の中間プーリを介して
モータプーリと駆動プーリに掛けます。

 

この時点で、いったん
動作確認を行います。

 

CDトレイがスムーズに出てきました。再度
ボタンを操作すると、静かにトレイが引き込みます。

 

年月が経過しているプレーヤで最も心配な
点は、光学ピックアップの劣化です。

 

トラッキングゲインやレーザーレベルがずれたり、
レーザー出力が低下していることも少なくありません。

 

ですが、音楽CDを入れてみると、間もなく
ピックアップのシーク音が聞こえてきます。

 

ディスプレイにはCDのトラック情報が
表示され、カウンタが進んでいきます。

 

よもやと思い、ヘッドホンを接続してみると
何の問題もなく音楽が再生されています。

 

1本のゴムベルト交換で修理完了です。
コンパウンドを使い長年の汚れを落とします。

 

往時の輝きが戻ってきました。
精悍なブラックフェイスです。

 

カバーを取り付け、さらに全体を
クリーニングして作業完了・・のはずが、

 

CDの再生を繰り返していると、TOCの読み出しやトラック間の移動にやや時間が
かかることがあります。再度分解してみると、もう1本ベルトの劣化を見つけました。

 

ピックアップ位置をCDにトレースさせるモータです。
プーリに掛かるゴムベルトが伸びて固化しています。

 

20mm径ほどの小さなベルトで、
あいにく補修部品の在庫がありません。

 

補修用ベルトを入手するまでの措置として
輪ゴムから同サイズのものを作成します。

 

輪ゴムを適切な長さに切断し、その
断面に少量の瞬間接着剤を付けます。

 

家庭用の輪ゴムでカーボンが含まれて
おらず、ほとんど耐久性はありません。

 

ベルトを再度交換する際に、トラッキングや
レーザーのゲインも調整し直すことにします。

 

このベルトが劣化したままでは、TOC読み取りやトラック間移動に問題が生じる
はずです。他の修理事例では、ピックアップをリニアに移動させるウォームギヤ
部分でグリスの固着が報告されていますが、このプレーヤでは問題ないようです。

 

やはり、TOC読み取りやトラック間移動のレスポンスが改善されました。折角の
ダブルオーバーサンプリングデジタルフィルターも、ベルトの劣化ごときで台無しです。

 
守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ