Repair2

守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ

VHS-DVDプレーヤー修理(2018.7.26)


VHSビデオデッキとDVDプレーヤーが一体になった懐かしい雰囲気漂う
製品です。VHS1号機は1976年、DVD1号機は1996年に登場して
いるので、20年前と20年後の技術が同居する何とも奇怪な製品です。

 

不具合は、CD再生時に曲のスキップができない、
VHSテープが全く再生されない、の2点です。

 

シャープ製DV-NC700、VTR一体型DVDビデオプレーヤーが
正式製品名です。2004年製で、実はさほど古くはありません。

 

目まぐるしく技術が進歩するも、人々が置き去りに
されかねないことを象徴するかのような製品です。

 

ひとつ目の不具合、曲のスキップができない
問題を確認します。CDを再生してみます。

 

ご依頼主の指示通り「選局・トラッキング」と表示の
あるボタンを操作してみます。確かに無反応です。

 

ボタン内部に組み込まれている
タクトスイッチの劣化が原因でしょう。

 

タクトスイッチの接点を回復するか、スイッチ
ごと交換すれば、間違いなく直るでしょう。

 

側面と背面の固定ネジを緩めて
金属製の上側カバーを外します。

 

露わになった内部を眺めています。底面に大型の回路基板が収められ、
その上にDVDプレーヤーユニットと、今思うと巨大なVHSメカが並びます。

 

タクトスイッチにアクセスするには
前面パネルを外す必要があります。

 

上下に大きなツメによる篏合が
あります。ネジ固定はありません。

 

前面パネルには、一切のスイッチ、照明用
LEDなど何も取り付けられていません。

 

「選局・トラッキング」のボタンを
外部から操作する(押し込む)と、

 

パネル裏側のレバーが連動し、
方向を変えて下に押し下げます。

 

レバーが下がるところにタクトスイッチが取り付けられて
います。接続ケーブルを不要とする巧妙な設計です。

 

接点復活を試みるも機能が回復しません。点検すると
スイッチは正常です。ネットから取扱説明書をDLします。

 

「選局・トラッキング」ボタンでは曲をスキップ
できません。リモコンで操作するそうです。

 

技術と人々のコントを見ているようで楽しくなり
ます。気を取り直してVHSの修理にかかります。

 

VHSテープをローディングさせてみます。
取りあえず内部に吸い込まれて行きますが、

 

左右2本のローディングロッドがテープをヘッドの周囲に巻き
付けるところまで進むと、動作が全て停止してしまいます。

 

イジェクトボタンを押すと、ヘッドからテープを引き戻して
再び停止します。カセット内にテープが巻き取られません。

 

カセットの外に出たままのテープが、内部のローラーやピンにかかり
デッキからカセットを取り出せなくなります。テープは折れて傷みます。

 

VHSデッキは機械部品による機構で成り立っており、数多い
部品の機械的動作不良が、様々な不具合を引き起こします。

 

動作を伴う機械部品なので、油切れ、錆、摩耗、
変形、強度低下、固着などが常に付きまといます。

 

機械装置として高度に複雑化したVHSデッキは、
不具合個所を特定することが容易ではありません。

 

機械部品の不具合は直接手に取って確認するしか
方法がありません。そのため、ひたすら分解します。

 

DVDプレーヤーと共存させるため、実装が複雑さを
極めています。DVDプレーヤーも外す必要があります。

 

背面の入出力端子パネルの固定ネジを緩めます。
合理的な設計とはいえ、メンテ的には厄介です。

 

DVDユニットをマウントする樹脂製の部品です。ここまで
周囲を整理してようやくVHSデッキにアクセスできます。

 

回路基板を通して底側樹脂製カバーに固定している
ネジを緩めると、ようやくVHSデッキが外れてきます。

 

底側カバーを取り外すと、回路基板とVHSデッキのみ残ります。カバー
内に収まった状態よりも、はるかに点検や修理を加えやすくなりました。

 

TVチューナーを含む回路基板を裏側から見ています。ディスク
リート部品が並び、アナログ末期で集積化が止まっています。

 

ピンチローラーの取り付けアームが、
リンク全体にわたり固着しています。

 

注油しながら馴染みを取ると、再生時に
何とかテープが送られるようになりました。

 

テープのローディング動作、イジェクト動作ともに動きが鈍い
のは、駆動モーターからの動力伝達ベルトの経年劣化です。

 

テープ巻き取りリールの動作を制御する、複雑なカムが刻まれた回転部品です。
浮き上がっています。イジェクト時にテープが巻き取られないのは、この部品が
機能していないからです。ドライバーの先で元の位置に軽く押し込むだけです。

 

再生・早送り・巻き戻しの各モードを切り替えるため
水平方向に往復移動する直線形状の樹脂部品です。

 

埃の混入や樹脂材料表面の劣化により、摺動
抵抗が徐々に大きくなり、いずれ固着します。

 

決して最善の方法ではありませんが、シリコンスプレーを
吹いて、樹脂表面を洗浄しながら摺動抵抗を取り除きます。

 

機構部品が一挙に息を吹き返してきます。
再びカセットをローディングさせてみます。

 

動作が軽快になり、テープが素早く
内部に吸い込まれて行きます。

 

ローディングロッドの動作も機敏で、ヘッドの
周囲にテープが安定して巻き付いています。

 

VHSデッキの一連の動作を確認します。全体的に馴染みを
取り戻し、弱点の高速巻き戻し動作も調子が出てきました。

 

動力伝達機構の各部が、動作設計通りに連結し
切り離れなければ初期の機能を発揮しません。

 

カバーが開いているうちに、専用洗浄液を使用
して録再ヘッドを徹底的にクリーニングします。

 

元通りに全体を組み上げ、
再度動作確認を行います。

 

底面のゴム足が紛失しているので、
汎用部品を使用して補います。

 

バランスを均等にするため、4か所
全てに同じ部品を取り付けます。

 

テレビを接続し、市販のテープライブラリを再生してみます。
テープローディングも問題ありません、滑らかに吸い込まれます。

 

曲のスキップ用と取り違えていた「選局・トラッキング」ボタンを操作すると、間もなく画面が
安定し綺麗なビデオ映像が再生されます。ヘッドの状態は良好で、累積再生時間があまり
長くないようです。ヘッドの摩耗よりも先に、駆動機構の劣化が進んでしまったのでしょう。
20年分の技術的進歩が、同じ展示ケースに押し込められた博物館のような製品でした。
技術はDVDあるいはそのはるか先に到達しているのに、VHSテープが鑑賞できないと
困ると言う人々、その声に応えてこのような製品が本当に出てきてしまう「現代」とは?

 
守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ