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浸水ダイナブックPC臓器移植(2018.8.15)


日本製ノートPCの代表格、東芝dynabookです。起動しないとお聞きし、ブートセクターの
破損だろうくらいに思っておりました。実際には使用中に水をこぼし、浸水したとのことです。

 

ACアダプターを接続するとバッテリーの充電ランプが点灯、
電源スイッチを押すと、電源ランプが一時的に点灯します。

 

間もなく電源ランプが消え、再び一時的に点灯・・を繰り
返します。画面には何も表示されず起動出来ません。

 

R731/36EBK、CORE i5(2.5GHz)を搭載する
まだまだいける13.3インチスリムコンパクトPCです。

 

本体を分解し内部の状態を確認します。
ストレージは500GBのSSDです。

 

加えて4GB×2で8GBのメモリ、購入時オプションか後で
増設されたものでしょう。SSD・メモリは問題ありません。

 

本体底側のカバーを取り外します。
20本ものネジで固定されています。

 

固定ネジを全て緩めると簡単にカバーが外れます。
マグネシウム合金製の軽量で強固なカバーです。

 

CPUを含むメイン基板です。外観的には損傷はありませんが、
浸水による回路短絡で部品が破損している可能性があります。

 

左上のディスプレイヒンジの周囲です。USB3.0、サウンド
関係のサブ基板にフラットケーブルが接続されています。

 

右上のヒンジ周りです。メイン基板に電源が取り込まれ、バック
ライト用も含む各電圧を供給します。浸水の影響は致命的です。

 

右下にクーリングファンが配置されています。
SATA、HDMI端子基板が周囲を取り囲みます。

 

左下はSDカードスロット基板です。基板上で
DVDドライブの接続ケーブルが分岐しています。

 

材料の機械的破損ではなく、浸水による電気的破壊が原因で起動不能に陥っています。
弱電流による電気的破壊は外観的に発見が困難で、しかも浸水は一挙に広範囲に
及びます。PCのように非常に複雑でLSIに依存するシステムは、故障部位の発見が
不可能、つまり修理は不可能です。代替策として、同型機からの移植を考えます。

 

急遽手に入れた同型機です。動作保証のある中古品で、
実際電源を入れるとセットアップ直後のOSが起動します。

 

安価に修理するため、多少難があっても低価格のものを
探し出しました。タッチパッド横の塗装が剥がれています。

 

元の外装を再利用するので問題ありませんが、R731/36Eに
対して入手したのはR731/C、仕様上若干の違いがあります。

 

DVDドライブの有無以外に、サウンド基板との接続ケーブルや
Expressカードスロットの仕様が異なっています。分解します。

 

移植を受ける元のPC(右側)と、ドナーとなる同型中古PC(左側)です。
ドナーは問題なく動作しているPCなので、移植手術(作業)に失敗しな
ければ、元のSSDを再利用してセットアップ環境を再現できるはずです。

 

SDカードスロット基板を外します。DVDドライブへの
分岐ケーブルは元のPCのものを付け替えて利用します。

 

メイン基板からキーボード、タッチパッドへの
接続ケーブル(フラットケーブル)を抜きます。

 

サウンド基板への接続ケーブルを抜きます。元の
PCでは2枚、ドナーは1枚に省略されています。

 

メイン基板横のD-subコネクタの固定ネジを
緩めます。クーリングファンも取り外します。

 

本体キーボード側カバーに、さらに2本の固定ネジが
あります。緩めると基板が浮き上がってきます。

 

右上にディスプレイの接続コネクタがあります。
PC関係で恐らく最も細密なコネクタでしょう。

 

SATA・HDMIサブ基板はケーブルが付いたままで取り
外します。ケーブルを固定している粘着テープが厄介です。

 

メイン基板左辺下部に、LANコネクタへの配線と
バックアップ電池の配線があります。引き抜きます。

 

これでメイン基板が完全に分離します。ケーブルも
含め絶対に損傷させないよう慎重に取り出します。

 

そのまま元のPCに移動します。夏場で湿度が
高いので、静電気破壊は気にしていません。

 

ケーブルやサブ基板を引きずりながら、
ドナーのメイン基板を元のPCに収めます。

 

USB3.0、サウンド基板も、浸水
した可能性があるので交換します。

 

元のPCで2枚の接続ケーブルが、ドナーでは1枚仕様に
変更されています。影響が出る可能性があります。

 

メイン・サブ両基板をよると、もう1枚のケーブル用にコネクタが
付いています。ドライバーの変更で対処しているのでしょうか。

 

ケーブルを全て接続しDVDドライブを収めて底側カバーを
被せると、オーディオ端子周りの形状が微妙に合いません。

 

止むを得ず、USB3.0、サウンド基板を元のものに戻し
ます。浸水とケーブル数の影響が無いことを祈ります。

 

全てのケーブル接続を再度確認し、基板のネジ固定も確認します。1点だけ、底側カバーに
取り付けられているExpressカードスロットはDVDドライブの有無により形状・取り付け位置・
接続ケーブルなど仕様が異なります。DVDドライブとの共存と、ケーブル接続の可否が排他
的関係にあるため、DVDドライブを優先しExpressカードスロットは接続しないことにします。

 

一般的な利用でExpressカードスロットの出番はまず無い
でしょう。ここでバッテリーを仮接続し、電源を入れてみます。

 

起動時のクレジットが表示されています、取りあえず移植
作業成功のようです。本体底側カバーを取り付けます。

 

元のSSDを組み込み、起動後に無事デスクトップが表示されました。デバイスマネージャーにも
トラブルはありません。また、メイン基板を交換していますがWindowsはライセンス認証済みで
再アクチベーションの必要はありません。 実は、ご依頼主は工房においでになる前、購入店の
○○デポに修理を依頼されたそうです。○○デポ経由で東芝に連絡が行き戻ってきた修理見積
金額が(○○デポの手数料も含め)17万円!。同店のメンテナンス保障(月額約8千円)に加入
されていたものの、免責金額が10万円で差額7万円の請求(2年前に同店で7万円ほどで購入
されたPCです)。修理を断り解約を申し込んだところ、WiFi契約の途中解約金を合わせ6万円
近くを請求されたとのことです。最近、PC修理店が急に増えてきて、料金がかなり高いように
思っていましたが、ここまで凄まじい状況になっているとは・・。 どうか、守谷工房にもご一報を。

 
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