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ルームエアコン入れ替え(2019.8.13)


梅雨明けの前後からエアコン関係のご依頼が続いています。英会話の先生を
しておられるイギリス人の方から、当初はこのエアコンを修理して欲しいとの
ご用命でした。10数年が経過するコロナ製で、冷房も暖房も機能しません。

 

2階以上に設置されている場合、高所作業には
危険が伴うため原則的にお断りしているのですが、

 

冷媒ガスの不足が原因で、ガスを追加するだけで
済むのであれば、高所作業にはなりません

 

配管のどこかにリークがあるのでしょうか。
室内機の電源を入れ、室外機を観察します。

 

しばらく待っても室外機が作動し始めません。冷媒ガス
以外に制御基板やコンプレッサーの故障が考えられます。

 

基板やコンプレッサーを交換するには新品購入と
同じくらい費用がかかります。修理は諦めます。

 

元のエアコンを取り外して処分します。コンプレッサーが
動かないのでポンプダウンによる冷媒回収が出来ません。

 

しかし、少しずつバルブを開放してみると配管内のガスは
ほんの僅かでした。回収機を用意するまでもありません。

 

修理不能の場合はこちらのエアコンを取り付けるよう指示
されていました。シャープ製プラズマクラスター内蔵型です。

 

以前のお住まいで利用されていたそうで、ご自身で取り外されたとのことです。
室内機・室外機は入れ替えますが、高所作業のこともあり配管は既存のものを
再利用させてもらいます(リークを防ぐには配管も新しく交換すべきです)。比較的
新しい製品でまだ綺麗ですが、取り外す時にフレアナット部を分離するのではなく、
何と配管を丸ごと途中で切断しています。これを修復するのは容易ではありません。

 

えらい仕事を引き受けてしまったと思いつつも
作業を先に進めます。室内機を取り外します。

 

配管類は本体右端からの取り出しです。
ここで、さらに嫌な予感が漂います。

 

2階の窓から配管カバーを確認します。フレアナット
接続部は、室外に出た配管カバー内にあります。

 

本来ならばお断りする高所作業になります。窓から
身を半分乗り出しての作業(これが一番危険)です。
 

取り外す時はまだしも、取り付ける際は身を
乗り出しての作業は完全に無理です。

 

取りあえず既存エアコンの取り外し作業は終了
です。配管の両端(開口部)を養生しておきます。

 

入れ替える新しいエアコンは、フレアナット部が切り落とされています。
が、取り外した旧エアコンのフレアナット部を再利用(移植)する方法が
あります。見通しの暗い中、問題のひとつに解決法が見えてきました。

 

フレアナット部を移植する作業は現場では無理
です。室内機を工房に持ち帰って作業します。

 

まず、金切り鋸でギザギザに切られた
配管をパイプカッターで切断し直します。

 

切り口が綺麗に揃います。内部に異物が
入り込んでいないか、祈るしかありません。

 

次に、旧エアコンのフレアナット部を
フレア管に余裕を持たせて切り取ります。

 

切り屑が入り込まないよう
下向きのまま作業します。

 

フレア管の突き出し長さ(フレアナット部の位置)を
決めるため、切り離した元の位置を確認します。

 

新しいエアコンにおいて、切り離した元の
位置あたりにフレア管の端を合わせます。

 

連結させるべき位置にマークします。再利用する配管位置は
変更できないので、正確に長さを決める必要があります。

  

マークした位置にパイプ
カッターを当てます。

 

グリップを少しずつ締め込み
ながらブレードを回転させます。

 

金切り鋸が鬱陶しくなる
ほど見事に切れます。

 

液側(2分)・ガス側(3分)とも
マーク位置で切断します。

 

銅管同士の接続はもちろんロウ付けです。イモ付けにはできないので接続用
ソケットを使用します。2分用は6.35mm、3分用は9.52mmにそれぞれ
内径が加工されているので、2分管・3分管とも丁度嵌まり込むサイズです。
 

僅かに余裕が残されており、溶けたロウ
(半田)が隙間に入り込むことが出来ます。

 

トーチの熱が内部に伝わらないよう
途中部分を濡れ雑巾で覆います。

 

配管表面は酸化が進んでいるので
フラックスを少量塗り付けます。

 

トーチに点火し配管表面
(接合部)を十分に加熱します。

 

十分加熱してからいったんトーチを離し、
表面に半田を押し当てて溶かし付けます。

 

再びトーチで加熱しながら
ソケットを嵌め込みます。

 

液側(2分)・ガス側(3分)とも
先にソケットを取り付けます。

 

次にフレアナット部を接続します。
表面を加熱し半田を溶かし付けます。

 

加熱しながらソケットに嵌め込みます。接続部に半田を
溶かし付けると、毛管現象で隙間に入り込んでいきます。

 

ロウ付け技能っぽい作業で、接続部が
完全に密閉されたのか不安が残ります。

 

配管を組み付けた後で真空ポンプを接続し、真空圧が維持されるか確認するしか
ありません。また、配管内に半田のゴミやフラックスが残っている可能性も・・否定
出来ません(厳密には)。しかし、明日に予定している高所作業での配管接続、その
無事を祈る方が先決問題です。同じく切り落とされていた排水管も修復しました。

 

作業2日目です。新しい室外機を設置しました。
取り外し時にポンプダウンを行っていないそうです。

 

そうすると、配管内残留分の冷媒ガスが
失われていて不足することが心配です。

 

室内機の取り付けを進めます。配管の接続は、
外壁に長い梯子をかけて作業しました(恐怖)。

 

配管取り出し部の収まりも良好です。
フレアナット部の位置は見込み通りでした。

 

全ての配管接続を終え、ポンプを接続
して配管内の真空引きを行います。

 

ポンプを停止し30分程度放置します。真空圧が変化しない
ことを確認します。ロウ付け部分も含めて問題ないようです。

 

液側・ガス側ともバルブを開放し
配管内に冷媒ガスを送り込みます。

 

猛暑の中2日間に渡る作業の結果が出ます。エアコンの
電源を入れます。エラーコードが出なければ良いのですが。

 

久しぶりに動作を再開したせいか、しばらく
間があって冷風が吹き出てきました。

 

十分冷えてはいますが、ガツンという冷たさでは
ありません。やはり冷媒ガスの不足のせいでしょうか。

 

ご依頼主にしばらく様子をみていただくことにします。かなり念入りにロウ付けしましたし、
フレア部にはリーク防止用のシール材を十分に入れました。冷暖房能力に物足りなさを
感じたり消費電力が急に増加するようであれば、冷媒ガスの不足が深刻だということです。
その際はいつでも補充に伺います。「フレアナット部の修復」+「高所作業」+「猛暑」に
「英語でのやり取り」が加わり、台風前のなかなかハードな仕事になりました。

 
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