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SONYハンディカムCCD-TRV80(2019.7.7)


懐かしい平成初期のビデオカメラがやって来ました。当時、向かうところ敵無しの
SONYが、矢継ぎ早に投入し続けたハンディカムシリーズの1台です。Hi8規格の
テープが登場し、映像画質が目に見えて向上して行った頃を思い出します。

 

そうは言いましても、まだアナログ信号を磁気テープに記録する方式です。
極薄のテープを駆動し小型の回転ヘッドが信号を記録するには、恐ろしく
細密で複雑なメカニズムを伴います。修理にはそれなりの覚悟が必要です。

 

型番はCCD-TRV80、ヤフオクメルカリジモティ
あたりでしか中古品も入手できなくなっています。

 

CCD-TRV80PKの取扱説明書
SONYのWEBサイトに残っています。

 

再生・録画とも出来なくなっている
そうです。まず録再ヘッドを疑います。

 

テープ収納部のカバー取り付けネジを緩め
ます。が、1本が錆びて固着しています。

 

潤滑剤を差し、溝を舐めないように
ドライバーを交換しながら緩めます。

 

SONYハンディカムの精密
世界に足を踏み入れます。

 

アナログ式ビデオのHi8は、それまでのビデオデッキ(VHS・Beta)と基本は
変わりませんが、一挙にヘッドを含めたテープ駆動機構の小型化が図られました。
超小型の回転ヘッドは、円周面に3個の録再ヘッド(ギャップ)を装備しています。

 

ギャップ部は円周表面から僅かに凹んでいるため、
クリーニングテープでは汚れを除去し切れません。

 

アルコールを染み込ませた綿棒で
ギャップ部を繰り返し掃除します。

 

カバーが外れたままテープをセットしてます。
精巧なリンク動作により引き込まれて行きます。

 

本体上部の再生ボタンを操作します。
付属リモコンによる操作も可能です。

 

あっさり映像が出て来ました。ヘッドギャップの汚れによる映像再生不良です。
あまり頻繁にヘッドクリーニングをなさってこなかったのか、もしそうだとすれば
逆にヘッドの摩耗はさほど進んでいない可能性があり、まだ利用可能です。
 

もう一つの不具合は、カメラ撮影時に電源が入りません。
おそらくスイッチの機械的な故障かと思いますが・・。

 

電源切り替えスイッチは撮影レンズ部カバーの
外側にあり、カバーを分解しなければなりません。

 

精密ドライバーを使い、本体カバーを
固定している小ネジを緩めて行きます。

 

バッテリー装着部の内側にも
数本の固定ネジがあります。

 

撮影レンズ部カバーを固定
している小ネジを緩めます。

 

ビデオ信号入出力端子の
樹脂製カバーを外しておきます。

 

先に撮影レンズ部上側の
化粧カバーが外れてきます。

 

化粧カバーが外れた内側に
さらに固定ネジがあります。

 

バッテリー装着部の脇に
もう1本小ネジがあります。

 

これでようやく本体が
左右に分離します。

 

本体左側半分にLCDディスプレイとファインダースコープ。撮影レンズ、テープ収納部、
テープ駆動部、信号処理基板、バッテリー部など主要な機能が右半分に組み込まれ
ています。左右はフラットケーブル1枚と数本のビニルコード束で接続されています。

 

CCD-TRV80PKの発売が2000年3月、末尾にPKの付かないCCD-TRV80は
前年1999年の発売ではないかと思います。家電品の中で20年前に既に到達していた
この細密な実装技術に驚きます。メイン基板右上は信号処理用のカスタムLSIでしょう。

 

最後に撮影レンズ部を覆うカバーを外さないと
電源切り替えスイッチにアクセス出来ません。

 

ようやくカバーが外れました。電源切り替え
スイッチはこのカバーの内側にあるはずです。

 

カバーの内側にも小型基板が取り付けられています。
基板の縁2か所に実装用リミットスイッチがあります。

 

電源スイッチをスライドさせるとレンズ部内側にある
リングが回転し、突起がリミットスイッチをONにします。

 

電源スイッチをビデオ撮影
(カメラ)側に切り替えてみます。

 

リングが回転し突起がカメラ側の
スイッチに当たり押し込みます。

  

正常であればこれで電源が
入らなければなりません。

 

ドライバーの先でスイッチを
もう少し押し込んでみると・・

 

・・電源が入ります。接点の接触劣化によるスイッチの動作不良、
リング突起によるスイッチの押し込み量不足が考えられます。

 

接点の接触劣化を改善する
ため潤滑剤を入れてみます。

 

直接吹きかけると内部を汚すので
ピンセットの先に取り隙間に入れます。

 

スイッチの押し込み量不足も改善を図ります。
瞬間接着剤をピンの先に少量取り分け、
 

リング突起の頂上部に盛り付けます。
突起の高さ=押し込み量を増やします。

 

硬化促進剤を吹き付けます。瞬間接着剤が
必要のない部分に流れると面倒です。

 

機械的にスイッチを押し込んでいるので
長年の間に摩耗が生じたのかも知れません。

 

スイッチの修復を終えた時点で
本体はここまでバラバラです。

 

分解作業時以上に注意を払い、
慎重に組み立てて行きます。

 

バラバラの段階で一度動作確認済みですが、組み立てを終えてあらためて念入りに確認
します。電源切り替えスイッチのみならず再生・撮影に関する基本機能を一通り確認します。

 

ディスプレイパネル部外側の液晶表示も正常です。強いて言えば、付属の
リチウムイオンバッテリーが既に寿命で、充電しても復活しません。最後に、
レンズ表面がひどく汚れているのでクリーニングを施して作業を終了します。

 
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