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キッチンキャビネット扉のリフォーム(2018.12.23)


築30年近いお宅からキッチンキャビネット扉の修理をご用命いただきました。
築年数に伴い設備も老朽化が進みます。システムキッチンを新しくすることも
検討されたそうですが、住設備専門店のご紹介で工房に問い合わせを頂戴
しました。扉をリフォームすることで、新品に近い外観と機能を取り戻します。
 

もちろんシステムキッチンの総入れ替え工事よりも
はるかに安く短い時間で済ませることが出来ます。

 

施工に先立ち現状を確認させていただきます。
パネル化粧面が全体的に劣化し老朽感が漂います。

 

老朽感の原因は、汚れに加えて退色・艶の喪失に
よるものです。ブラウンの木目調も古さを感じさせます。

 

シンク下部のキャビネットは、両開き2枚分の扉が無くなって
います。カーテンを取り付けて凌いでこられたそうです。

 

扉を動かしてみると、開け閉めしにくく
中には外れかけているものもあります。

 

スライド丁番が破損しているか、
あるいは破損寸前の状態です。

 

金具が破断し扉側のベースと分離して
スライド部分がボックス側に残っています。

 

スライド丁番の交換も含め、全て工房に
引き上げてリフォームを進めます。

 

扉はMDF材にビニル地の化粧シートを貼り付けた
ものです。シートが劣化し端から剥がれ出しています。

 

パネルの表側までめくってみると、いとも簡単に「綺麗」に
剥がれてきます。接着剤の粘着性が完全に失われています。

 

スライド丁番を全て取り外します。修理できる
ものは再利用し出来るだけ費用を抑えます。

 

スライド丁番の扉側ベースは、径35mmの
穴繰りの中に完全に埋め込まれます。

 

取っ手を外します。パネル裏側から
2本の固定ネジを緩めます。

 

シンプルなデザインの取っ手は
無垢の木材から削り出されたものです。

 

粘着力の失われた化粧シートが気持ち
良いくらいに綺麗に剥がれてきます。

 

接着剤が僅かでも効いている部分は
ありません。剥がし残しが全く出ません。

 

リフォーム前に全体を清掃します。特に上部キャビ
ネットの扉は、油汚れが裏面まで及んでいます。

 

裏面の化粧シートはほとんど傷みがありま
せん。清掃するだけでそのまま使用します。

 

表側のMDF材が剥き出しになりました。
新しい化粧シートを貼り付けるリフォームです。

 

MDF材の白っぽい色が、シートを貼り付けた
端部から僅かに見える可能性があります。

 

化粧シートの端が当たる部分に艶消し
黒のカラースプレーを吹いておきます。

 

ペイントしておくことでシート端の接着性を
高め、端から剥がれてくることを防ぎます。

 

ご依頼主に数種類のサンプルを見ていただき、黒ベースのこの化粧シートを
選びました。熟年のご夫妻が生活される住まいには、自己主張を伴う有彩色は
適切ではありません。落ち着きがあり、かつアーバンなルックスを重視します。

 

扉の上にシートを重ね、4辺に10~20mmの
余裕を見込んで必要サイズを把握します。

 

必要サイズに裁断したシートの上に扉を
置き、貼り合わせ位置を正確に合わせます。

 

位置関係がずれないよう表に返します。
シートが動かないよう手で押さえています。

 

シートがずれないようウエイトを置きます。
シート表面に傷が付かないよう留意します。

 

シートの固定をウエイトに任せ、シートの
端を持ち上げて裏紙の一部を剥がします。

 

15cmほど一定幅で剥がした裏紙を持ち上げます。
粘着面が露出した状態でシートを折り返しておきます。

 

持ち上げた裏紙を二つ折りにし、
パネルとシートの間に入れます。

 

二つ折りした折り目をしごいて
段差を小さくしておきます。

 

折り返しておいたシートを元に戻し、
取りあえず粘着面をパネルに当てます。

 

シート全体の位置がずれないよう手で
押さえ付け、貼り付け開始位置を決めます。

 

貼り付け開始位置が固定された
ので、ウエイトを取り去ります。

 

折り返した裏紙が見えるところ
まで、シートを持ち上げます。

 

折り返しておいた裏紙の端を掴み、
手前に引きながら均一に剥がします。

 

シートを元に戻し、裏紙の剥がれた部分を押さえ
付け、間の空気を追い出しながら密着させます。

 

裏紙を引いて少しずつ剥がしながら、剥がれた部分を密着させていきます。
シートが柔らかく粘着力がやや弱めなので、空気はほとんど残りません。

 

空気が残って膨らんでいる部分は、
押さえ付けたまま手を移動させます。

 

裏紙の境界まで移動させて追い出します。
スクレーパー代わりに素手で十分です。

 

シートの端まで到達し裏紙が分離してきます。
パネル表面の表情が一変しています。

 

シート表面を傷付けないよう作業台テーブル面を
綺麗にしてから、再びパネルを裏返します。

 

パネルの左右木端面はR加工されています。
R面に合わせてシートを貼り付けます。

 

全体を均一に押さえ付け密着させます。
粘着性を高めるため時間をかけます。

 

R加工面に沿ってシートが密着しています。貼り付け直後は粘着力が
十分ではなく、時間経過とともに増していきます。しばらく時間を置いて
シート端が剥がれ出していないか確認し、何度か押さえ直します。

 

化粧シートのはみ出し部分を処理します。
刃厚0.2mmの内装用カッターを使用します。

 

MDF材表面に刃を密着させ、MDF材に喰い
込まないぎりぎりの角度でカッターを引きます。

 

化粧シート側にカッターが滑ると、
当然シートの切り残しが出ます。

 

切り残しを取るためカッターを往復させると
切り口が乱れて見栄えを損ないます。

  

パネル木口側のはみ出しを処理します。R加工部分
ではパネルを持ち上げながらカッターを入れます。

 

とにかくカッター刃を最も切れ味の良い状態で
使うことが肝心です。刃先を折りまくります。

 

刃厚0.38mmの文具用カッターでは
この仕上がりは得られません。

 

稜線に沿ってMDF材表面が僅かに見えています。
しかし、黒で塗装しておいたので目立ちません。

 

シート貼り付けの仕上げに、木片を使用してシート端を強くこすります。
MDF材表面が僅かに見えていた部分も完全に密着・潰します。

 

取り外した取っ手を化粧直しします。
油で汚れているので洗剤で落とします。

 

取り付け用のネジを片側だけねじ込み
塗装時の保持具代わりにします。

 

木目を潰して単色塗装で仕上げます。
下地にプラサフを吹き付けます。

 

2・3回の吹き付けで、元の
木目はほとんど隠れます。

 

化粧シートの色柄に合わせ、艶消し黒で塗装します。
写真は吹き付け直後のため艶が残っています。

 

取り外したスライド丁番をひとつひとつ点検します。
清掃や注油により再利用可能なものを残します。

 

ウエスで汚れを落とし磨き上げます。
破損しているものは新品に交換します。

 

スライド丁番は値段の張る金具なので、出来るだけ
元の丁番を利用します。35mm穴の中に取り付けます。

 

塗装の乾燥を待って取っ手を取り
付けると、扉のリフォーム完了です。

 

続いて引き出し面板のリフォームに移り
ます。取っ手を外し塗装し直します。

 

引き出しの面板も、元のシートは
粘着力が完全に無くなっています。

 

母材のMDF材は、傷ひとつなく
良い状態に保たれています。

 

扉と同様に新しい化粧シートを張り直しました。
取っ手固定用のネジを通す穴を開けます。

 

面板を固定するネジが材料内で腐食し、緩める際に途中で
折れました。残っていた頭をグラインダーで落としました。

 

そのため面板裏側に傷が残っていますが、
引き出し本体に取り付けると隠れて見えません。

 

化粧シートの色合いと取っ手の艶消し黒が良く合っています。
面板の化粧シート柄は、4段の引き出しで上下に連続させています。

 

最も手間のかかる作業にかかります。
無くなっている2枚の扉を新調します。

 

反りのない平らな15mm厚MDF材から
材料取りします。左右木端面をRに加工します。

 

工房のギンナンビットは12.7mm径が最大
ですが、少し小さい方が自然に仕上がります。

 

裏面にカラースプレーで艶消し黒を吹きます。元の
扉(木目のブラウン)に合わせる必要はありません。

 

艶消し塗装は、斑が目立た
ないので作業が簡単です。

 

口部分には化粧シートが載らないので
忘れずに艶消し黒を吹いておきます。

 

化粧シートを張り直す工程は略します。
スライド丁番を取り付ける穴を開けます。

 

正確に位置決めをしてから、35mm径
フォスナービットで一挙に穴を掘ります。

 

ホームセンター取り扱いの安物ビット
なので、切れ味はよろしくありません。

 

MDF材の切削屑は粉末状に飛散
します。掃除機で吸いながら作業します。

 

穴の深さを確かめます。15mmのMDF材に
対して、金具は13mmとぎりぎりです。

 

スライド丁番のアームがパネルから直角に
出るよう、固定用の穴の位置を正確に決めます。

 

ネジ下穴のセンターが狂わないよう、
冶具付きドリルを使用して穴を開けます。

 

新しいパネルにはスライド丁番も新たに追加しますが、
問題は、パネルとともに失われた木製のツマミです。

 

ホームセンターを数軒回るも、同じツマミは見つかりません(・・わけがありません)。
ですが、こういう時のための3Dプリンターです。採寸結果をCADに入れます。

 

工房を引き上げる前に出力を開始し、
翌日出かけてくると完成しています。

 

プラサフ吹き付けと研磨を3・4回
繰り返し、積層痕を目立たなくします。

 

他の扉や引き出しと同じく、艶消し黒で塗装
します。外観的にはPLA樹脂製と分かりません。

 

塗装が乾燥するのを待って
裏側からネジで固定します。

 

複製とはいえ新品の扉なので、傷や汚れを避けるため保護紙で
ラップしておきます。工房での準備を終え、再び現場へ出向きます。

 

リフォームした扉を取り付ける前に、劣化に
より変色したパッキンを全て交換します。

 

まずキッチン下部、ビルトインオーブンの左右です。
左側にハーフサイズの扉、右側に引き出しが入ります。

 

引き出しから右側に並ぶ3枚半の扉です。中の2枚が新調した扉です。スライド丁番は
全てスムーズに機能しています。後で取り付け位置(高さ・出入り)を微調整します。

 

上部キャビネットの4枚半の扉です。天井照明により新しい化粧シートの
色合いが明瞭に確認できます。控えめで品の良い現代的な印象です。

 

この角度からは、裏口窓からの外光が加わりシート地の真新しさが引き立ちます。
写真をクリックするとリフォーム前の写真にジャンプします、比べてみて下さい。

 

同じ角度から下部キャビネットを眺めてみます。スライド丁番の再調整を終え、
扉の高さや面(つら)が揃っています。リフォームの成果を非常に喜んで下さって
いるご依頼主にお礼申し上げます。同時に、工房の得手不得手を理解され、この
ようなお客様に結び付けて下さった住設備専門店のI社長に感謝申し上げます。

 
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