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ドロワーチェスト補修(2019.1.27)


引き出しの付いた木製チェストを修理します。高級感の漂う落ち着いた印象の
デザインです。外見的には特に問題があるように見えませんが、重量のある
本などを入れると、出し入れの際に引き出しが外れる(落ちる)そうです。

 

引き出しを全て抜いてみます。箱組みは
桐製で非常に精度良く作られています。

 

引き出しの一つを
出し入れしてみます。

 

特に問題はないようですが・・。多少左右にガタが
ありますが、普通この程度の余裕を持たせてあります。

 

右側の引き出し側レールと本体側樹脂タイヤです。
タイヤの上にレールがしっかり乗っています。

 

左側のレールとタイヤです。こちらも
しっかり乗っているように見えます。

 

引き出しを右方向に寄せると、レールからタイヤが
少し脱落します。しかし、まだ十分に乗っています。

 

タイヤが完全に脱落すれば引き出しが外れて
落ちるでしょうが、それほどではありません。

 

チェストの左右側板を押さえてさらに力を加えて
みます・・、タイヤがレールの外に出てしまいます。

 

引き出しに入れた本の重みが、側板を広げる方向に
作用すると、引き出しが外れることが起こり得ます。

 

しかし、チェストの側板はこの仕切り板に
より左右とも固定されているはずです。

  

接合部分にドライバーの先を差し込んでみると、
簡単に中に入っていきます。固定されていません。

 

ダボ固定されているはずが、接着剤の
効きが失われてしまったようです。

 

接合面に新たに接着剤を入れます。
造形ヘラを使い接合面全体に行き渡らせます。

 

仕切り板を側板に押し付けると、接合面
から接着剤が一様にはみ出してきます。

 

反対側の接合面も同様に接着が効いていま
せん。隙間を空けて接着剤を入れ込みます。

 

接合面の補修は、本来ならば部材を完全に分解して
組み直したいところですが、損傷が大きくなりそうです。

 

側板の前後に播金をかけて固定します。引き出しが外れる原因は、本の
重みが側板を左右外側に押し広げ、タイヤがレールから脱落するからです。
側板が広がらないようにしたので、おそらくこれで問題は解決するでしょう。

 

接着剤が固化するまで
十分に時間をおきます。

 

乾燥を待っている間に、底板にも
同じ問題があることを見つけました。

 

底板もまた側板との接着が完全に失われて
います。軽く叩くとダボが抜けてきます。

 

中仕切り板と同様に
接合を補修します。

 

造形ナイフを使い、広げた隙間に
接着剤を十分入れます。

 

引き出しの各段に大量の本を収納した状態でチェストを移動
したのではないでしょうか。大きな破壊応力が加わります

 

箱組みの剛性はたかが知れているので、移動の度に
接合部に応力が集中し破壊が進んだのでしょう。

 

クランプ固定した後で、はみ出た
接着剤を綺麗に拭き取ります。

 

引き出しを入れてみます。これで外れることは
ないと思いますが、まだガタが残っています。

 

引き出し側のレールです。正確に取り付け
られていますが、やや内側に傾いています。

 

もうひと工夫することにします。レールの取り付け位置を
調整(拡大)するため、固定ネジをいったん緩めます。

 

レールの内側にスペーサーを挟む
ことにします。厚紙を用意します。

 

レールと同じ高さに切断します。片側
2枚ずつ挟むと丁度良いと思います。

 

レール高さに合わせ15mm幅に
切ります。切断位置を印します。

 

ひたすら切断します。引き出し6段の左右分で24枚必要です。
スペーサーを入れることで、レールの傾きも矯正できるはずです。

 

固定ネジを取り去ったところで、隙間に
スペーサー(厚紙2枚分)を挟み込みます。

 

再びレールをネジで固定します。左右で
厚紙4枚分、レールの間隔が拡大します。

 

ついでに樹脂車輪の車軸に
潤滑剤を吹いておきます。

 

引き出し側レールの他に、側板
内側のレールにも車輪があります。

 

チェストを移動させる際に、何故接合部に応力が
集中するのでしょうか? 理由が分かりました。

 

底板に取り付けられている移動用の
キャスターが、油切れで固着しています。

 

キャスターが回らないので、大きな力を加えないとチェストを移動できません。
チェストを引きずるほどの大きな力が、接合部に破壊をもたらしたのでしょう。

 

2段目引き出しのツマミの横に、塗装の剥がれた
箇所があります。折角お預かりしているので補修します。

 

フローリング補修用のタッチ
アップペンから色を選びます。

 

塗装の剥がれだけではなく、少し深い傷に
なっています。タッチアップを当てます。

 

ツマミの固定が所々緩んで
いるので締め直しておきます。

 

補修作業終了です。これで引き出しが外れる心配はありません。「不具合の
大元原因はキャスターの油切れ」、仮説ではありますが面白いものです。

 
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