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ヘアドライヤースライドスイッチ修復(2018.8.23)


美容室から業務用ヘアドライヤー修理のご依頼です。工房で動作確認してみると、スライド
スイッチを操作しても電源が入りません。スイッチの動きがぎこちなく、時おり電源が入るも
間もなく切れてしまいます。内部で電気がスパークする「パチッパチッ」という音がします。

 

スライドスイッチに問題があることは明らかです。
本体を分解し、スイッチを含む基板を取り出します。

 

4Pのスライドスイッチを3P(停止・弱風・強風)で使用して
います。停止と弱風の間でクリック感に違和感があります。

 

4本の接続端子が、ガラスエポキシ
基板に直接半田付けされています。

 

大電力を扱う割には繊細な印象のプリント配線です。
もちろん必要な電流容量は確保されています。

 

電熱線へ電力を供給する
2本の配線を取り外します。

 

接続端子4か所の半田を溶かします。
スルーホール基板なので十分熱を加えます。

 

半田吸い取り器で、溶けた半田を吸い取り除去
します。丁寧に作業しないとパターンを傷めます。

 

スルーホール基板はホール内に半田が
残りやすく、なかなか部品が解放されません。

 

ホール内の半田には熱が伝わりにくいためです。
逆に、半田を多めに残しておく方法もあります。

 

このヘアドライヤー専用に設計されたOEM品
でしょう。汎用品には存在しない部品です。

 

高さを調整するためマウントが取り付けられて
います。接続端子(電極)を抜きながら外します。

 

スライドスイッチは本体と上側のカバーから
構成されています。カバーを外します。

 

左右側面に3か所ずつツメによる篏合が
あります。かなりきつい嵌め合わせです。

 

カバーを外すと内部に組み込まれて
いるスイッチ切片が見えてきます。

 

3枚、2.5回路分の銅製切片です。途中に押し込み用の
曲げ突起があり、先端にON・OFF接点が付いています。

 

受け側の接点は金具ごと取り外すことができます。
手前側1回路分の接点を取り出してみます。

 

接点およびその周囲にスパークの跡があり、表面が
カーボンで汚れています。接触不良がありそうです。

 

残りの接点も外します。入力側2回路分が1本にまとめられ
全体として2.5回路です。こちらにもスパーク跡があります。

 

ワイヤーブラシでカーボンや腐食を取り除きます。
またヤスリをかけて接点表面を平らに整えます。

 

こちらの接点は、分岐した片方が使用されて
いなかったため、全く劣化がありません。

 

切片の先端にある接点にも、当然カーボンが付着しているはず
です。サンドペーパーを挟み込み下側から丁寧に研磨します。

 

受け側接点の金具を元に戻します。新品同様とは
なりませんが、接触は十分復活しているはずです。

 

お断りするまでもなく、このような状態に陥ったスイッチ
(部品)は間違いなく新品に交換です(手に入ればですが)。

 

スライドスイッチの上側カバーです。内側にスライドプレートが組み込まれており、プレート
表面の突起がスライド位置に合わせて3枚の切片を押し込みます。停止と弱風の間で
違和感がある原因が分かりました。写真中矢印の部分が摩耗によりえぐれています。

 

ツマミをスライドさせると、突起が切片を
押し下げて電源を入れるはずですが・・

 

突起の一部がえぐれているため、切片を押し下げ切れず電源が
確実に入りません。クリック感も得られずスパークが飛びます。

 

えぐれている部分に接着剤を盛り修正します。もうひとつ、
これまで使われていなかった中間の切片を利用します。

 

3回路分の端子が出ている側で、2枚の切片を短絡します。
これで損傷のない接点をON・OFFに加えることができます。

 

スイッチの修復を終え、
上側カバーを被せます。

 

停止・弱風・強風でのクリック感は多少損なわれて
いますが、スイッチとしての機能は問題ありません。

 

マウントを取り付け、元通り基板に半田付けし本体を組み上げて作業完了です(本体の
分解・組み立て作業は以前にもアップしているので略します)。スライドスイッチは最も
酷使される可動部品で、今回のような不具合は不可避でありほぼ時間の問題です。
製造メーカーは、特に業務用製品に関してサポート体制を充実させて欲しいものです。

 
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