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ガス式ヘアアイロンのメンテ(2019.5.8)


カートリッジに封入された可燃ガスを熱源とするヘアアイロンです。どこかで聞いた
ことがありますが、初めて手にしました。製造元のBRAUN社には部品がないことを
理由に修理を断られたそうです。ダメモトを了解いただいた上で修理に挑みます。

 

電気ではなく可燃ガスが熱源とは
少々恐ろしい雰囲気がします。

 

コーム部キャップ、ガスカート
リッジカバーを外します。

 

本体グリップ内にガス
カートリッジを装填します。

 

カートリッジカバーを元に
戻せば準備完了です。

 

「0・1」の刻印があるレバーで
ガスの供給と停止を操作します。

 

レバーを「1」にセットし、
燃焼室にガスを供給します。

 

隣のスライドレバーを引くと、途中で
「カチッ」と音がして点火されます。

 

扱い方はまるで100円ライターです。多少
恐怖感が和らぎました・・が、暖まりません。

 

点火されないのか、そもそも
ガスが供給されていないのか・・

 

コーム(櫛)部を引き抜くと
そこから先は「分解」です。

 

表面に小さな穴が開けられた
パイプがネジで固定されています。

 

ネジを緩めパイプを抜きます。
内部は燃焼室のようです。

 

パイプ内でライターのようにガスが燃焼し、
穴から高温の燃焼ガスが出てくるようです。

 

グリップ部の上面にガスの噴出ノズルが
見えます。いよいよ100円ライターです。

 

ノズルの横に点火装置が組み込まれています。
レバーを下げると圧電素子が高圧を発生させます。

 

点火装置の反対側から電極を
引き出すための金属部品です。

 

ピンク色のレバーはガスを供給・停止します。
内部に開閉機構が組み込まれているようです。
 

グリップ上面に見える
部分を分解します。

 

どこぞの100円ライターとは様相が異なります。精密に加工された金属
プレートが、小ネジで堅牢に固定されています。精密ドライバーが必要です。

 

プレート面に何やら長く伸びる金属棒が取り付け
られています。下端はプレート下に突き出ています。

 

ネジを緩めていくとプレートが持ち上がって
きます。バネで押し上げられているようです。

 

プレートが外れました。その下にも
何か精密な部品が覗いています。

 

プレート下部の構造です。クリップのような部品が、
スプリングで押さえ付けられながらも上下します。

 

プレートの下部はダイキャスト製のベース(台座)が支えており、
その中心にガスが吹き出すノズルが組み込まれています。

 

ノズルはスプリングを介して真鍮製の
スリーブ内に差し込まれているだけです。

 

ガスの供給系統を把握するため、
ダイキャスト製台座も外してみます。
 

グリップ部をカートリッジ装填側から見ると
ガスを取り込む細いパイプが出ています。

 

台座の下に小さな空間があります。ここに
燃焼前のガスを一時的に貯留するようです。

 

ノズルの根元にはゴム製シールが嵌め込まれ、
スプリングによりノズルが上下する構造です。

 

ノズルが押し込まれるとゴムシールがスリーブの外に
出て、ノズル周囲を通ってガスが噴出するのでしょう。

 

真鍮製スリーブは、気密性の維持やゴムシールとの
摩擦低減のため、台座とは別に作り込まれたようです。

 

台座下部の貯留室との気密性を保つため、台座から
突き出た部分にもゴムシールが嵌められています。

 

貯留室を覗くと、ガスを取り込むパイプの上端が見え
ます。通路の中心線は僅かにオフセットされています。

 

ガスを確実に導くには通路のクリーニングが有効
です。0.45mmのステンレス線を用意します。

 

ガスを取り入れる細いパイプから
本体内にステンレス線を通します。

 

貯留室内にステンレス線が出て
います。この状態で数往復させます。

 

台座のスリーブにもステンレス線を通します。
数往復させて通路壁面の汚れを落とします。

 

ノズル下端に加工された小さな穴にも通します。
ノズルの正確な構造は今一つよく分かりません。

 

ノズルの先端は、ガスが噴き出すべく穴が開いているわけではありません。
逆にガラス質のような材料で塞がれています。単に想像ですが、ノズルの
中心ではなく、ノズル周囲の壁面を伝ってくるのではないかと思います・・。

 

手が入る範囲をひと通りクリーニングしま
した。部品を元通りに組み付けていきます。

 

隙間にゴミなどを挟まないよう
注意深くノズルを差し込みます。

 

上部プレートを取り付けます。クリップの
ような仕組みは、ノズルの開閉機構です。

 

スプリングを押さえ付けながら
固定ネジを締め込みます。

 

長く突き出ている金属棒の役割もよく分かりません。
異常な高温に達した際、ノズルを戻すのでしょうか?

 

ノズル開閉用、つまりガス供給・
停止用のレバーを取り付けます。

 

点火装置を組み込みます。
先に電極板を入れます。

 

点火レバーを取り付けます。レバーを操作して
みると、間違いなくスパークが飛んでいます。

 

燃焼室となるパイプを取り付けます。
小型のトーチランプのような構造です。

 

根元をネジで固定します。以前に修理が試みられ
たのでしょうか、ネジ山が壊れかかっています。

 

あらためて動作確認を行います。
グリップ内にカートリッジを装填します。

 

100円ライターと同じような燃料でしょうが、
BRAUNの純正カートリッジしか使用できません。

 

ノズルを開けます。かすかに「シュー」という
音が聞こえ、ガスが出ていることが分かります。

 

点火してみます。パイプの温度が上昇し触っていられなく
なります。放射温度計の表示が100℃を超えています。

 

可燃ガスを導いて点火するだけなので、構造は単純そのものです。しかし、ガスを
安定して通過させるには、高精度の部品と組み立てにより導通と密閉性を同時に
達成する必要があります。精度が高いだけに、僅かな汚れやゴミが燃焼を妨げる
ことになるのでしょう。定期的なメンテ(分解+クリーニング)が不可欠のようです。


 
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