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BOSE PLS-1210複合するトラブル(2020.2.22)

 
BOSE製PLS-1210の修理記事を初めてアップします。修理自体は
既に数台経験しております。この1台は、前面の液晶表示の不具合
(表示が暗い)修理で工房に届きましたが、実際に作業を始めてみると
あれこれ不具合個所が続出することに。総力戦で修理に挑みます。

 

PLS-1210は、唯一チューナーを内蔵
しないCDプレーヤーのみのコンポです。

 

PLS-1310、PLS-1410に比べ
背面端子の配置に余裕があります。

 

外側カバーを開けます。筐体平面と
ほぼ同じサイズのメイン基板が現れます。

 

銅メッキ鋼板をプレスしたシャシーです。
呆れるほど贅沢な材料使いであります。

 

最初の問題は、電源が入りません。正確には
電源を入れると5Aのヒューズが飛びます。

 

ヒューズを交換しても同じように切れます。
パワーデバイスが破損・短絡しているようです。

 

パワートランジスタの表側にも銅板製のカバーが取り
付けられています。放熱用?それとも化粧でしょうか。
 

破損しているパワートランジスタを探し出し、
補修用部品に交換しなければなりません。
 

メイン基板を取り外したいのですが、
何本ものケーブルが接続されています。

 

本体右側面のサブ基板との
接続コネクタを抜きます。

 

電源トランスからの接続コネクタを抜きます。電源
回路自体はメイン基板上に組み込まれています。

 

前面の表示・操作パネルへの
接続コネクタを抜きます。

 

後方の入出力端子基板への
接続コネクタを抜きます。

 

スピーカー出力が短絡した際に電源を遮断する
ための信号線です。リレー基板に接続されます。

 

ボリューム基板への接続コネクタです。アッテネータを
自動調整するための制御信号線が含まれます。

 

コネクタを破損しないよう全てのケーブルを
慎重に引き抜き、メイン基板を取り外します。

 

メイン基板の表側(部品側)です。実装状態では表裏が逆に取り付けられるので、
部品取り付け側で気流が滞る可能性があります。放熱条件が非常に悪く、電子
部品の経年劣化が早く進みそうです。実際、基板が部分的に変色しています。

 

ほとんど黒変してしまったプリアンプの
ブロックです。各部品は大丈夫なのでしょうか。

 

中央のAN7062は2チャンネルの高耐圧入力増幅回路
ICです。電源の定格は+74V、-16Vにも及びます。

 

破損しているのは電流増幅段(パワーアンプ)の片チャンネル。
コンプリを成すC3180とA1263がCE間で短絡しています。

 

国内に在庫は皆無です。海外から調達した
ところ10組ものセットが届きました。

 

何らかの原因でスピーカー出力が短絡し、運悪くプロテクションが機能しなかった
ようです。ここまで作業したところで、ドライブ内に残されていたCDを取り除きます。
ローディング機構の故障により取り出せなくなっていたものです。修理を続けます。

 

CDドライブを取り外します。PLS-1210・1310・
1410、それぞれ取り付け方法が少しずつ異なります。

 

前方右側のシャシー面に
固定ネジがあります。

 

反対側左側のシャシー面にも
固定ネジがあります。

 

実際にはCDドライブを覆う金属製カバーの一部が
固定されています。柄の長いドライバーで緩めます。

 

ドライブ後方の中央に、ドライブ本体を貫通
する構造で固定ネジがもう1本あります。

 

この段階でもドライブを引き出せるですが、
右隣に残る放熱器が何かと邪魔します。

 

手間ではありますが、点検も兼ねて放熱器を
取り外します。底部のネジを緩めます。

 

金属板をプレスしただけの
意外と簡素な放熱器です。

 

内部にCDが残されて取り出せないくらいですから、明らかにドライブの機構に
不具合があります。おそらくピックアップも劣化が進み、交換が必要でしょう。

 

ローディングトレイを引き出します。
ゴロゴロ音をたてながらスライドしてきます。

 

トレイを駆動するギヤセットとプーリです。
左側のモーターと連動しません。

 

プーリを連結するゴムベルトが伸び切り、かつ固化して
回転が伝達されません。新しいものに交換します。

 

ゴロゴロ音の原因は、クラックの入った駆動ギヤです。
経年により樹脂材料が収縮することで破断します。

 

同規格のギヤが入手できれば良いのですが、
簡易的に修復します。シャフトの穴を僅かに広げます。

 

接着剤を入れてクラック部分を
圧着すると隙間がなくなります。

 

ピックアップの交換作業は、以前にもアップしているので省略します。パワートランジスタ
交換、ローディングベルト交換、ローディングギヤ修復、ピックアップ交換・・と作業を進めて
きて、最後に全体を組み上げ動作を確認してみると、何と液晶に「Err」と表示され操作を
一切受け付けません。確かオークション等で見かけるジャンク品に、この「Err」をジャンク
扱いの理由にしているものがあります。全く動作しないのですから止むを得ないところです。

 

あれやこれや試行錯誤に突入します。しかし、
修理以前には出ていなかった」とすると・・

 

試行錯誤で数週間が過ぎた後、まさかと
思うような原因が突然分かりました。

 

背面パネルのスピーカー端子を固定するネジを取り付けていませんでした。ネジを
締め込むと「Err」が消えて完璧に動作します。スピーカー端子自体ではなく、端子
取り付け基板
のアースがシャシーに接続されているか否かの違いです。何を検知
してプロセッサが「Err」を表示するのか、見当も付きません。オークション出品にも
ネジがない・・とは思いませんが、ネジの締め込み不足などがあるかも知れません。

 
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