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ボイスコイルへの配線修復(2019.8.7)


ラジオを修理します、スピーカーから音声が出ません。ヘッドホンを接続すると
問題なく聞くことが出来るそうです。基板上のヘッドホンジャック、あるいは
その近くの配線に何か問題があるのでしょう。何とかなりそうです。

 

Panasonic製、RF-U09。1992年発売の
選局エリアバンク機能を搭載した出張用ラジオ。

 

持ちやすい大きさとシックな印象は、SONYが
意識されているのでしょうか。電源を入れてみます。

 

AM・FM切り替えや選局など問題なく
動作しますが・・、確かに音が出ません。

 

ヘッドホンを接続してみます。全く問題ありません。
受信感度が高くクリアな音声が流れてきます。

 

本体の分解にかかります。
先に乾電池を抜きます。

 

数本のネジが前後の本体
カバーを固定しています。

 

乾電池ホルダー部にもう1本
固定ネジがあります。

 

前後本体カバーの篏合は
さほどタイトではありません。

 

カバーを傷付けないよう
慎重に分離します。

 

収められているラジオ回路基板です。配線
パターンの雰囲気がSONYとは異なります。

 

回路基板を持ち上げると、スピーカーへの
配線方法が一風変わっています。

 

回路基板から突き出た細い金属板が、スピーカー端子に
接触する構造です。基板がコードを引きずりません。

 

点検すると金属板に音声信号が出ています。
ヘッドホンジャックや配線の問題はなくなりました。

 

そうすると、スピーカー端子と単に
接触不良を起こしているだけでは・・

 

回路計を当ててみると、スピーカーのボイスコイルに導通がありません。
ボイスコイルの断線であれば、スピーカーを交換する以外にありません。

 

しかし、取り付け用の鍔が付いた特殊な製品
なので、補修部品の入手が難しそうです。

 

口径だけを合わせ、接着剤で
強引に固定するしかありません。

 

スピーカー前面を確認します。振動板(コーン)の前に
フィルム製のダストカバーが取り付けられています。

 

金属板との接触端子の内側に、ボイスコイルの
リード線が接続される小型の端子があります。

 

保護用に塗り付けられた接着剤を丁寧に取り除き、リード線を固定している
半田も除去してみました。2本あるリード線の片方が途中で切れています。

 

ボビンに巻き付けられた途中で切れた場合はお手上げ
ですが、リード線が切れただけであれば望みがあります。

 

ACコードの芯線を2本取り出し、
ねじり合わせて半田上げします。

 

一端をスピーカーの小型
端子に半田付けします。
 

1cmほど残して
切り詰めます。

 

もう1本、ねじり合わせた
芯線を半田付けします。
 

同じように1cmほど
残して切り詰めます。

  

ボイスコイルのリード線が出ている
方向に折り曲げ、リード線に絡めます。

 

リード線が根元から切れたりしない
うちに、両者を半田付けで接続します。

 

一番強い老眼鏡をかけるか拡大鏡を通すかして、何とかこの微細な
作業を乗り切ります。最近、半田ごてを握る手が震えて困ります。

 

ボイスコイルの導通を調べます。導通が回復し
回路計の電圧でガリガリ音が出ます。

 

リード線を接続した繊細な部分を
安全に保護しなければなりません。

 

接続部分の周りに瞬間
接着剤を流し込みます。
 

硬化促進剤を吹き付けながら、接続
部分が埋没するまで肉盛りします。

 

元のスピーカーを再利用することができ
ました。ラジオの音質を損なわずに済みます。

 

本体を元通りに
組み付けます。

 

前面側カバーは化粧パネルとの2重構造です。
パネルをめくると夥しい埃が侵入しています。

 

歯ブラシにアルコールを
付けて汚れを掻き出します。

 

すっきりした状態で
パネルを戻します。

 

SONYを意識した・・、いやSONYに
負けない精悍さが蘇りました。

 

スピーカーを交換してしまえば修理は簡単で結果も確実です。しかし、元の部品を
再生して捨てずに済ませることが出来ると、何となく得をしたような嬉しい気分に
なります。もちろんご依頼者に余分な費用負担をお願いすることも避けられます。

 
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