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PanasonicレシーバーCDチェンジャー部の復元2(2019.7.3)


台のPanasonic製レシーバーをお預かりしたままです。1台(写真左)は知人から依頼された
SA-PM930DVD、CDラベル(粘着シール)が剥がれ、トレイ内に挟まれて開閉できなくなって
いました。CDは簡単に取り出せたもののCDチェンジャー部を元通り復元できず、状況は変わり
ません。元々トレイ部分の不具合なので、それをいいことに半年近くも放っていました。もう1台は
その後ご依頼のあったPanasonic製SA-PM57MDです(写真右)。不具合はCD読み取り不良
なので、ピックアップユニットの交換だけで済むはずでした。迂闊にもCDチェンジャー部の設定を
狂わせてしまい、半年放置の1台と同じ状況を招いてしまいました。CDチェンジャー部の恐ろしく
複雑でタイミングの難しいメカニズムは、サービスデータ(マニュアル)なしでは復元不可能です。

 

SA-PM57MDはお預かりした後で工房が問題を広げてしまったので、ただでは済みません。
サービスデータを求めて連日連夜ネット検索を続けたところ、Youtubeに組立て手順を説明した
動画を見つけました・・が、何とスペイン語です。スペイン語が分からなくても映像を見るだけで十分
手順を理解できます。動画によるチュートリアルのようなものです。気を取り直し作業を再開します。

 

動画に加えてPDFファイル版のマニュアルも見つけました。
CDチェンジャー部の詳細なアセンブル図も掲載されています。

 
 
こちらはピックアップユニットを含むCDトレイ周りの
アセンブル図です。機構が手に取るように分かります。

 

マニュアルに沿って分解からやり直します。トップカバーに
付いているこのピニオンギヤの使途がようやく分かりました。

 

ドライバーの先にピニオンを差し込み、
CDチェンジャー底部の穴に通します。

 

制御基板・底部フレームを通った先のUD
ラック(UpDownラックギヤ)に噛み合います。

 

ピニオンを回転させるとUDラックがスライドし、同時に
側面の溝付きプレート(セレクトラック)もスライドします。

 

セレクトラックが左端の
初期位置にあります。

 

この時点でピックアップユニットは最も下がった
状態にあり、1段目のトレイが選択されます。

 

ドライバーを回しピニオンギヤでUDラックをスライド
させます。セレクトラックが右へ移動してきます。

 

UDラックのスライドでピックアップユニットが
昇降します。途中まで昇ってきました。

 

さらにピニオンを回転し、セレクト
ラックを右端まで移動させます。

 

ピックアップユニットは最上段に来ました。
5段目のトレイが選択されています。

 

マニュアルはここでトレイブロックを取り外す
よう指示しています。正しい手順があります。
 

トレイ中央の開口部から、ギヤをロックしている
レバーのような部品(スピードアップロック)を外します。
 

トレイブロック脇のツメの並んだ樹脂製
部品(オープンスイッチレバー)を外します。

 

マニュアル無しでは機能も理解せず
手順も無視して分解してしまいます。

 

トレイガイド(左右でトレイをまとめている部品)の
ロックツメを解除しトレイブロックを引き抜きます。

 

ピックアップユニット最上段の位置にあるUDラックは、
ストッパーを解除することによりもう少し移動します。

 

ドライバーの先で押しているのがストッパーです。
右側UDラックの端にあり、これ以上スライドさせません。

 

ストッパーを解除することで右側UDラックがさらに
押し込まれ、ピックアップユニットの固定を解除します。

 

ピックアップユニット最上段の位置にあるだけでは、
昇降支持シャフトはまだハウジング内にあります。

 

UDラックがさらに奥へ移動すると、昇降
支持シャフトがハウジングから出てきます。

 

マニュアル通りの手順に従えば、フレームを無理に
変形させる必要もなく簡単に取り外すことが出来ます。

 

ピックアップユニットを引き上げます。最初からこのような
手際のよい作業手順を紹介できると良かったのですが・・。

 

それにしても何故スペイン語版マニュアルが存在して、英語版がないのでしょうか。
日本語版に至っては製造元が頑なに提供を拒み、ネット等への公開を強力に阻止
しているのが現状です。Panasonic社の製品は世界中に行き渡っていますが、
販売先(国・地域)の事情により現地法人の対応が異なるのでしょう。マニュアルの
ニーズが高ければ、いつか誰かに公開されることになります。Panasonic本社の
姿勢以前に、日本国内ではサービスデータなど必要とされないのが現状です。

 

ピックアップユニットを外した後のフレーム側面です。
UDラックがピックアップユニット固定解除の位置にあります。

 

ピックアップユニットには、もう一つ
昇降機構が組み込まれています。

 

底面側に突き出たこの爪は、
スライドするバーの一部です。

 

反対側にも同様のバーおよび突き出たツメがあり、
2本のバーは互いにシーソーのように往復します。

 

バーが一方に寄った状態です。
ツメがスリット内に収まっています。

 

バーが他方に寄った状態です。
ツメがスリットから出た位置にあります。

  

2本のバーはユニット後方のレバーに連結されており、
レバーを介して互いにシーソーのようにスライドします。

 

レバーが一方に傾くと、別の昇降機構により
ピックアップが持ち上がりディスクを挟みます。

 

レバーが他方に傾くと、
ピックアップが下がります。

 

ディスクを開放して
出し入れ可能にします。

 

ピックアップユニットの外装を分解します。外装には先ほどの昇降機構が
組み込まれています。篏合を解除すると上下のピースに分離します。

 

ピックアップユニット本体は、下側の外装に
スプリングを介して樹脂製ピンで固定されています。
 

4本の樹脂製ピンを
全て引き抜きます。

 

側面から回路基板に接続されている
フラットケーブルを抜き取ります。

 

ピックアップユニット
本体を取り出します。

 

発注しておいた交換用の
ピックアップユニットが届きました。

 

専門業者に写真を送り
探し出してもらったものです。

 

レンズ部だけではなく、ユニット全体の補修
部品です。インシュレーターが付属していません。

 

元のユニットからゴム製
インシュレーターを外します。

 

新しいユニットに付け替えます。
押し込むだけですが上下があります。

 

下側外装に収めます。固定用ピンや
フラットケーブルを元に戻します。

 

ピックアップユニットの交換終了です。本来はこれだけの作業を行えば修理は
完了だったのですが、迂闊にも設定を狂わせてしまったCDチェンジャー部の
修復が残っています。手に入れたマニュアルを参考に、逆転に挑みます。

 

CDチェンジャー部を覆うカバー(ピッチプレート)を外し
ます。3本のネジと4か所のツメで固定されています。

 

左右UDラックの突起をコネクションレバーから
抜きながら、ピッチプレートを取り外します。

 

セレクトラック(再生するCDを指定する)が左端にあれば、
上下のフレームを軽く広げるだけで簡単に外れてきます。

 

セレクトラックに隠れていたセレクトドライブギヤです。
ラックギヤに噛み合いセレクトラックをスライドさせます。

 

マニュアルによると、セレクトドライブギヤに刻まれているこの
三角形マークが組み付け時に正面(手前側)を向いている必要が
あります。セレクトラック動作時にタイミングの基本になります。

 

セレクトドライブギヤの隣に、UDラックを駆動するUDドライブ
ギヤがあります。1枚だけ刃先の欠けた歯を正面に向けます。

 

この段階でセレクトラックを嵌め込みます。左端にセットし
軽く押さえ付けながら右へスライドさせると嵌まります。

 

そのままセレクトラックをスライドさせるとセレクト
ガイドが上昇し、関連するギヤが連動して回転します。

 

セレクトラックの右端が本体の前面端に
達した位置でいったん止めます。

 

セレクトラックが右端に移動した時、
ピックアップユニットは最上段に来ます。

 

予め外しておいたチェンジギヤを取り付けます。
下のピニオンギヤをチェンジレバーの間に入れます。

 

タイミングの初期設定が続きます。チェンジギヤのどちらか一方の突起位置を、本体の刻印に
一致させます。左隣にあるジェネバギヤは、溝の方向がUDラックに直角または並行になるよう
調整します。これだけ複雑なタイミング設定が、マニュアル無しで出来るはずがありません。

 

設定はまだ続きます。メインギヤの中ほどに
マーク(小穴)が付けられています。

 

メインギヤを回転させ、マークが本体
シャフトの方向を向く位置に調整します。

 

スピードアップギヤを取り付けます。マーク位置を
メインギヤのマークと同じ方向に合わせます。

 

構成部品の設定位置が狂わないよう
ピッチプレートを慎重に被せます。

 

正確にツメを嵌め込み、3本のネジを締めます。左右
UDラックの突起をコネクションレバーにつなぎます。

 

この段階でピックアップ
ユニットを組み込みます。

 

右側のUDラックが、ピックアップユニットの
固定解除位置にあることが必要です。

 

UDラックが固定解除位置にあるため、ピックアップの
支持シャフトがハウジングのり欠きから見えています。

 

右側UDラックを手前に引き戻し、ピックアップ
ユニットがハウジングから出ないようにします。

 

UDラックが右方向へ移動し、ピックアップ支持
シャフトがハウジングの中に隠れています。

 

トレイブロックを取り付けます。オープンスイッチレバーや
スピードアップロックがないので簡単に移動できます。

 

トレイの前縁を本体前縁に揃え
スピードアップロックを取り付けます。

 

ロックの先端がスピードアップギヤに噛み合い、他端が
メインギヤのカム溝に入っていることを確認します。

 

オープンスイッチレバーを取り付けて
CDチェンジャー部の復元完了です。

 

最低限のケーブルを配線し、
恐る恐る動作確認を行います。

 

最上部5段目のトレイが吸い込まれます。続いて
ピックアップが持ち上がりCDを読み出します。

 

CDがセットされていないことが検知
され、間もなくトレイが排出されます。

 

つかえることもなくスムーズに動作する
ようです。トレイを変更してみます。

 

ピックアップユニット全体が最下段まで
下降し、1段目のトレイが引き込まれます。

 

5枚のトレイを全て排出し、CDのセット状態を確認
するスイッチがあります。最も複雑な動作をします。

 

CDを確認しやすいように1段ずつずらしてトレイが排出され
ます。まるで生き物のように巧妙にかつ精巧に動作します。

 

トレイの開閉動作に目を奪われている場合では
ありません。実際にCDが再生されるか確認します。

 

一時はCDがセットされても、回転し始めない
深刻な事態に陥っていましたが、大丈夫です。

 

交換済みのピックアップにより問題なく
再生されます。CDの変更動作も完璧です。

 

ここで舞い上がらず、慎重に
本体を組み上げます。

 

組み上がったところで再び
動作確認を行います。

 

トレイの確認機能も
完全に動作します。

 

実際にはマニュアルが見つかった後も、数回にわたり分解・再組立てを繰り返して
きました。サービスデータ通りに組み立てても、構成部品の初期位置が僅かにずれ
たり、組立て手順を間違えるだけで動作不良を起こします。SA-PM930DVDの
修理経験をそのままSA-PM57MDの修理へ反映し、結果2台とも修理に成功
しました。それどころか、間もなくもう1台、3台目の修理が舞い込んできました。

 
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