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beatspillの充電端子(2021.1.22)

初めて手にする(私にとって)妙なものが工房に届きました。既に高齢者(65歳以上)と
なった自分には訳が分からないものが沢山あります。ワイヤレススピーカーと呼ばれる
製品だそうで、WiFiやBluetoothで接続しスマートフォンなどの音楽を再生することが
出来ます。TechnicsPioneer時代のおっさんには、これをスピーカーだと認めるのは
困難です。充電が出来なくなり、修理不能であれば捨ててもよいとおっしゃっています。

 

beatspillなる製品で、手にした瞬間に
その品質の高さが伝わってきます。


Apple社の製品、ということも知りませんでした。お預かり
したのはbeatspill2.0で、既に新モデルが出ています。
 

その充電用端子はといえば・・、悪名高い
micro USB Type-Bが付いています。
 

内側の端子板を点検すると、内部で
破損しているようでぐらぐらします。

 

タブレットPCでUSB端子を修理したことが
ありますが、非常に難度の高い作業です。
 

その時は、USB端子は修理できたのに
PCの電源が入らない残念な結果に。

 

本体の分解を進めます。最初は分解のきっかけすら
分かりませんでしたが、ネット上に手順があります。

 

ゴム製カバーを引き剥がし、
隠れていた固定ネジを緩めます。

 

最初の2本を外すと、本体中央に巻き
付けられているベルトを起こせます。

 

無理をせず本体に沿わせ
ながら引き抜きます。

 

音量を増減する押しボタン
スイッチのカバーを外します。

 

ソースとの優先接続用のUSBtype-A端子です。
その両側に化粧バンド固定用のネジがあります。

 

ネジを緩めると2本の化粧
バンドを外すことが出来ます。

 

引き剥がしたゴム製カバーの下に本体を
組み付けている4本のネジがあります。

 

ネジ穴の位置、その形状にも
成型品質の高さが感じられます。
 

ようやく本体が上下に分離します。精密な
勘合により両者は隙間なく合体します。

 

途中まで本体を分離したところで
2本のケーブル接続に気付きます。

 

フラットケーブル、コネクタ
とも慎重に引き抜きます。

 

片側に4個構成のスピーカーユニット、反対側に回路基板と
2個のバッテリーが組み込まれています。実に精巧な作りです。
スピーカーは口径に対して大型で磁力の強そうなマグネットを
備え、見た目以上に本体を重くしているのはこのためです。

 

破損したUSB端子はこの基板の
裏側にあります。基板を取り外します。

 

USBtype-A端子は回路基板上に含めることが出来ず
別の小型基板を用意してケーブル接続されています。

  

小型基板は差し込んであるだけです。
回路基板を固定しているネジを緩めます。

 

基板を固定する本体内面の傾斜に合わせ、
ネジを固定する角度をセットするワッシャです。

 

回路基板を引き出します。コネクタを介して
バッテリーとケーブルで接続されています。
 

コネクタを引き抜くと、回路基板が
本体から完全に分離します。
 

Apple社が作る(作らせる?)製品らしく
高密度で高品質な回路基板です。

 

タブレットPCやスマートフォン並みの
SMD(表面実装部品)が多用された基板です。

 

基板の裏側(実装時の下側)です。左側に赤色樹脂製のアナログ入出力端子、
そして右側にプロセッサチップと問題のmicro USBtype-B端子が見えます。
壊れているとはいえUSB端子には樹脂製の補強カバーが取り付けられています。

 

充電プラグの抜き差しに対し、補強カバーはあまり
役立たなかっということでしょうか、取り外します。

 

micro USBtype-B端子が露わになりました。取り
付け方向を変えるため補助基板が使われています。

 

USB端子は小型の補助基板に固定し、あらためて補助基板を
回路基板に取り付けることで方向を変えています。みるからに
強度がなさそうな実装です。本当に壊れているのでしょうか?

 

USB端子の端に指をかけてみると、奥側が浮き上がります。5本の信号用端子と
その両側にあるフレームの足、全てが基板から剥がれています。半田付けがこのように
簡単に剥がれるものでしょうか・・、USB端子とはいえ組み立て工場の自動ソルダーで
精密に半田付けされます。使用される半田量が厳密に(最小限に)管理されているので
手作業による半田付けよりも層厚が極端に薄く、強度が出ないのではないでしょうか。

 

さて、補助基板が介在するためUSBの信号端子部分に
手が届きません。いったん取り外す必要があります。

 

回路基板との半田接続部分は何か粘着性の
コーティング樹脂でがっちり覆われています。

 

このコーティング樹脂が予想外に強力です。引き剥がすことも
削ることも出来ず、半田ごての熱で溶かしながら取り除きます。

 

ようやく接続端子の半田付け部分が出て来ました。
盛られている半田を出来るだけ吸い取ります。

 

補助基板の両面に端子があり、半田付けを
徐々に解除しながら補助基板を引き抜きます。

 

補助基板が差し込まれているスリット
です。上下に接続端子が並んでいます。

 

回路基板から分離した補助基板です。信号用端子が完全に離れている
ことが分かります。この方向からであれば何とか半田ごてを入れられそう
です。しかし、並みの半田ごてではとても作業できそうにない狭さです。

 

実は工房ではこの年明けから新しい半田ごてを使用しています。セラミック
ヒーターと自動温度調節機能を備えた、しかも格安の製品です。自動温度
調節は、こて先の温度が上がり過ぎないようにすることよりも、作業による
温度低下を食い止める働きが重要です。熱が奪われかけるとヒータ電流が
瞬間的に増加するので、こて先の温度変化がかなり小さくて済みます。

 

狭い隙間で作業するため先端の細いこて先を使用します。
熱容量が小さいので自動温度調節機能が効果を発揮します。

 

少量のフラックスを塗りつけてから、5本の信号用端子に
一息で熱を加えます。油断すると隣同士を短絡させます。

 

上手く・・・行ったようです! ルーペを使って確認すると、信号用
端子に5本とも半田がまとわりついています。すぐ手前に表面実装
されているチップ部品(TR)も、こて先が触れた痕もなく無事のようです。

 

信号用端子はそれ自体にほとんど強度があり
ません。両側を支える金属フレームも固定します。

 

左右とも半田を盛り付けて
しっかり補強します。

 

実際に修復できているのか、USB
プラグを差し込んで確認します。

 

補助基板側に電圧が出ています。
信号用端子の接続は修復できたようです。

 

基板を元通りに組み上げ、本体に取り
付けた状態で動作確認してみます。

 

さすがにApple社の製品です。充電が開始
されるとプラグの根元が赤く点灯します。

 

この小さなプラグの内部にLEDが組み込まれています。どこまで高品質に
こだわるのでしょうか・・・USB端子が簡単に壊れなければの話ですが。

 
   
本体を組み上げたところで、本来の機能を動作確認します。スマートフォンとBluetoothで接続し
実際に音楽を送り込んでみます。Bluetooth接続が完了すると、充電ソケット隣の白色LEDが
点灯します。相互のリンクはほとんど瞬時で、どこか(ト〇タ)のカーナビとは格段の違いです。
音楽再生が始まった瞬間、その音量、音場(音の広がり)、艶やかな中高音域と迫力のある
低音域に度肝を抜かれます。手の平に乗るでかい風邪薬のカプセル(だからPill?)の印象が
目に焼き付いているので、卓袱台をひっくり返されるほどの驚きです。世の中にはいつの間にか
こんな凄いものが広まっていたとは・・。しかし、故障でお困りの際は守谷工房へご用命下さい。

 
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