守谷工房のリペア4へ                守谷工房Topへ

そのファンヒーターまだ使えます(2022.6.27)


工房にも何人かのお得意様がおられ、何度もご用命をいただきます。
かなり長い年月使われた家電品を送ってこられる方もいらして、何故
買い替えをなさらないのか不思議に思うことがあります。製品価格が
数千円くらいですと、修理代をお安くしても新品価格と拮抗してしまい
ます。しかし、金額の大小ではなく廃棄にお金を払うこと自体、馬鹿
げていると考えるのは不自然でしょうか。製造元が修理してくれない
ことは、少しの修理で元に戻る可能性と全く無関係です。さて今回は
このレトリックな電気ファンヒータ、修理できなければ・・即廃棄です。
 

操作はタイマーを兼ねたスイッチだけ
です。発売時定価は5000円です。

 

心臓部である620Wのセラミックヒーターが
切れていれば、修理の意味がありません。

 

逆にヒーター意外の部分が故障している
のであれば、修理しない手はありません。

 

ヒーター断線の判別は回路計を当てるだけです。
滅多に切れるものではありません、正常です。

 

外装カバーを外しタイマーの
ダイヤルを引き抜きます。

 

電源の配線や温度ヒューズにも問題が無い
ので、疑わしいのはこのタイマースイッチです。

 

ゼンマイによるタイマー自体は動作しています。
連動するスイッチ部分に問題がありそうです。

 

タイマーを取り外して点検します。
先に配線を抜いておきます。

 

2本のタッピングネジで樹脂製
本体に固定されています。
 

同型補修部品は難しいにせよ、同機能の
代替部品であれば入手可能でしょう。

 

シャフトを強く回すとゼンマイが巻き上げられ、タイマーが機能します。
必ず、タイマーが電源スイッチをON・OFFする機構があるはずで、
その機構あるいは、ON・OFF用電気切片に不具合がありそうです。

 

ダイヤルが空回りしないように
シャフトにピンが打たれています。

 

ON・OFF用電気切片は、タイマー上部の
樹脂製ホルダー内に組み込まれています。

  

本体固定ネジを緩め、ロック爪を
押し込むことで脱着できます。
 

ロック爪の反対側が回転軸になり、上方向に開く構造
です。明らかにメンテナンスが考慮された設計です。

 

電気切片部分を点検すると、接触不良を通り越して接触不能状態です。
接触不良が続く間に相当発熱があったようで、周囲が溶けかけています。
切片が劣化した際に簡単に部品交換できる設計のようですが、果たして
そのような消耗部品が本当に供給されているのでしょうか。販売されて
いるのを見たことも、実際に交換したという話を聞いたこともありません。

 

完全に焼き切れている状態ですと無理ですが
その手前であれば接点を切削して修復します。
 

金工ヤスリである程度思い切りよく
浸食部分を削り落とします。

 

固定切片に続いて可動切片側も切削します。
接点金属がまだ十分残っているのが幸いです。
 

両接点とも金属の地金が露出しています。火花による
摩耗は避けられないのでこれ以上の研磨は見合わせます。

 

メーカー希望小売価格5000円の製品では、電気火花が出ない
半導体スイッチ(サイリスタやトライアック)などコスト的に採用でき
ないでしょう。ですが、接触不能に向かって摩耗しながらも数十年
問題なく機能してきたわけです。しかも、この簡単な修復により
さらに今後も機能することになれば、半導体スイッチとて大して
優位性はないことになります。コストを抑えながら必要な機能を
実現する技術の成果が、このような場面にも見え隠れします。
 

修復結果を確認します。先に
開放状態での絶縁を確かめます。
 

次に切片を閉じて導通を確認します。
確実に接触しふらつきもありません。

 

ですが、樹脂製ホルダーを閉じると導通しなくなります。
シャフトと共に回転するカムがレバーを押し上げるのですが、
 

切片金具が変形したせいで、接触位置に
到達していないようです。金具を調整します。

 

摩耗により接点の位置が後退した
ことも、原因の一つかも知れません。
 

今度は大丈夫です。タイマーをセットすると
ONになり、切れるとOFFになります。
 

分解した本体を途中まで組み上げます。
タイマーを取り付けダイヤルを差し込みます。
 

タイマーをセットするとファンが
回転し始めます。快調です。
 

セラミックヒーターのユニットから熱気が上がってきます。
ファンの気流が引き込まれていないので、動作確認を
早々に切り上げます。ヒーターが過熱して断線でもしよう
ものなら、何のための修理なのか分からなくなります。
タイトルの「そのファンヒーターまだ使えます」は、工房の
キャッチフレーズではございません。お得意様ご自身が
そのように理解されていることが素晴らしいと思うのです。

 
守谷工房のリペア4へ                守谷工房Topへ