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スピーカーコーンキャップ修復(2020.6.26)

 
BOSE製プレーヤーの修理と一緒に、付属するスピーカーも修理するようご依頼が
ありました。潜望鏡のような一風変わった形のスピーカーで、片方は音が出ません。
スピーカーユニットを外してみるとすぐに原因が判明し、配線の1本が切れています。
 

実は配線以上に深刻な問題があります。振動板(コーン)の
中心に取り付けられているはずのコーンキャップがありません。


到着した直後は、ズタズタに破れたコーンキャップが
残っていました。写真は破片を取り除いた後のものです。

 

修復方法をあれこれ考えた末、近所の
100円ショップでピンポン玉を買ってきました。

 

ピンポン玉の球面が、コーンキャップを
代替するのに丁度良さそうです。

 

球面の一部を切り取ればコーンキャップになる
はずです。直径を計測すると39.5mmです。

 

一方、コーンキャップがスピーカーに取り付けられて
いた位置の直径を計測します。30mmくらいです。

 

ピンポン玉球面の一部を正確に切り出す方法を考えます。
2mm厚アクリル板に穴を開け、穴にピンポン玉を当てます。

 

アクリル板の厚み分だけ後退した位置で
CADから開口部の直径を読み取ります。

 

簡単な図形問題なので計算で求めることも出来ますが、
どのみちデータをレーザーカッターに送るのでCADに任せます。

 

アクリル板をレーザー
カッターにセットします。

 

ヘッドが動き瞬時に切断
加工が終わります。

 

保護紙をはがします。ピンポン玉
切り出し用の治具のようなものです。

 

ピンポン玉を嵌め込んでみます。突き出た
部分の底面直径が30mmになるはずです。

 

突き出し部分のカットに先立ち、ピンポン玉が
動かないよう接着剤を入れて固定します。
 

一部が突き出た状態で
固定されています。
 

切り出しにはカッターナイフを使用します。
刃厚0.2mmの薄い替え刃を選びます。

 

ホルダーから外してアクリル板表面に密着
させた状態で、突き出し部分をカットします。

 

力を入れて切り出すと、切断面が荒れて綺麗な円になり
ません。また、ピンポン玉の接着が剥がれてしまいます。

 

変形させることなく正確に切り出すには、ピンポン
玉がしっかり固定されている必要があります。

 

ピンポン玉とアクリル板の接触部
全体に接着剤を流し込みます。
 

ピンポン玉をアクリル板ごと回転させながら、
周囲を少しずつ均一に切り込んで行きます。

 

カッター刃を徐々に喰い込ませ
周全体を均一に切り離します。

 

今度は綺麗に切り
離れたようです。

 

切断面が均一で正確な
平面を成しています。

 

残った側の切断面も綺麗なものです。
接着し直してもう1個切り出します。

 

右上の1枚が最初に切り出した失敗作です。2枚目と3枚目は
切断面が整っており、コーンキャップとして利用出来そうです。

 

スピーカーコーンに合わせ
艶消し黒で塗装します。
 

接着剤の喰い付きを良くしようと軽くペーパー
がけしたので、その傷が少し残っています。

 

3・4回吹き付けを繰り返し
傷を目立たなくします。

 

とてもピンポン玉から出来て
いるようには見えないでしょう。

 

スピーカーコーンへの接着には、乾燥後も
柔軟性を残すため「スーパーX」を使います。

 

接着時にこの部品をどのように
保持するか、工夫が必要です。

 

マスキングテープを貼り付けて
手で持てるようにします。

 

切断面全体に最小限の
接着剤を塗り付けます。

 

瞬間接着剤ではないので時間を
かけて落ち着いて作業できます。

 

コーンの中心部を狙って慎重に
位置を合わせます。1発勝負です。

 

うまく収まりました。コーンキャップを失ったことで何とも間の抜けた感じ
でしたが、無事に修復されてみるとスピーカーらしい引き締まった印象です。

 

2台とも修復完了です。艶消しの
黒は全く違和感がありません。

 

配線を半田付けし直し、
潜望鏡内に戻します。

 

周囲の金属製フレームを
本体にネジ固定します。

 

潜望鏡(?)の完成です。実に
面白いデザインをしているものです。

 

念のためアンプに接続して音声出力を確認します。キャビネットの形状や容積
からして中高音域に重点のある、すなわち低音域が控えめのユニットのよう
です。もっとも、低音域をイコライザ補正して出力するBOSEレシーバーを前提
としているので、実際にはそれなりの音響を楽しむことが出来るのでしょう。


 
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