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車椅子用体重計の出張修理(2022.5.2)

 
県内石岡市にある介護老人保健施設にお邪魔します。工房のある
守谷市からゆうに50km以上の距離、常磐道利用でも1時間近く
かかります。車椅子用の体重計が故障しているとのご連絡です。
 

高齢者の方々が車椅子に乗ったまま、車椅子ごと体重を
測定することができる特殊な体重計です。以前にも他の
施設で修理したことがあります。どのような修理をしたか
既に忘れてしまいましたが、その構造は覚えています。

 

職員の方から不具合の
状況について説明を受けます。

 

電源スイッチを押すと、「88888」と
全セグメントが点灯し無反応になります。

 

かなり長い時間が過ぎると「-----」に
表示が変わり、以後完全にフリーズします。

 

故障原因を探るべく、取りあえず
体重計本体のカバーを外してみます。

 

今回の修理は、現場対応で何とか完了させたいものです。
片道50kmを超える距離は、何度も往復するには大変です。
また、工房に引き取って修理しようにも、この体重計では大きさ・
重量とも非常に困難です。しかし、およそ工房に舞い込む仕事の
多くは、実際に確認してみないと修理の可否など分かりません。
結果、「何とか直す」という意気込みくらいしか用意できません。
昨年10月の松山行を思い出します。カバーを開けた体重計の
内部は、歪ゲージを内蔵させたアルミ製ブロックを中心に、4方向
からの荷重を伝達させる分厚い鉄板のアームが延びています。

 

カバーを外すまでもなく気づいていましたが
センサーの接続コードが酷い状態です。
 

センサーから出る配線に、コネクタを
介してコードがつながっています。

 

手前の金属製フレームをくぐるところで、
タイラップによりコードが固定されています。
 

いずれにしても繰り返し過大な力がコードに加わり、
深刻な損傷を受けていることは明らかです。

 

他方のコード配線先である
制御計測装置を点検します。
 

背面側にカバーを固定
するネジがあります。

 

と、その前に乾電池を抜いておきます。
乾電池ボックスのカバーを取ります。
 

UM-2乾電池6本を内蔵します。15年ほど前の製品
だそうで、アダプターや充電には対応していないようです。
 

背面カバーの取り付けネジ位置に
このようなシールが貼られています。
 

シールを「はがさなくても」修理しない・・、
だから守谷工房に依頼が来るのでしょう。

 

背面側の固定ネジが外れると、実際には
表側のカバー(パネル)が分離してきます。
 

液晶表示器への信号線が
FFCで接続されています。

 

センサーからの信号線は、この
コネクタにより基板に接続されます。
 

センサー側のコネクタを持ち上げて並べます。最も
単純な原因として、接続コードの内部断線を調べます
 

赤・白・黒・緑・黄5本の両端間での導通を順に調べて
いきます・・が、いきなり最初の赤で導通がありません。
 

可能性としては、センサー側コネクタの
近くで断線している確率が高そうです。
 

接続を調べようとしてコネクタを軽く引っ張った途端、何と短い配線を
残して被覆内から抜けてきてしまいました。基板側に出ていた黄色の
配線は外被シールド線のアース接続なので、実際には赤・白・黒・緑の
4本です。その全てが見事に切れています。ほぼ不具合の原因でしょう。

 

4本をつなぎ直すことは難しい作業ではありませんが、
ズタズタになった外被も何とかしなければなりません。

 

途中から切り離れてしまったビニル製
保護外被をいったん取り出します。
 

外被表面にカッターナイフで長さ方向の
切り込みを入れると、簡単に外れます。

 

保護外被を取り去ると、その下から
金属製のスパイラルチューブが現れます。

 

強い引っ張り力が加わり、スパイラルが
破断・分離して伸び切っています。

 

伸びた部分はもはや使用できない
ので、切り離して取り除きます。

 

強い曲げや引っ張りに耐える外被を伴った
特殊なコードのようです。初めて見ます。

 

スパイラルを取り除いた区間は
強度的に無防備な状態です。

 

残っているスパイラルチューブを移動させて
元のチューブ位置まで引き寄せます。

 

出来るだけ隙間が残らない
よう密着させておいて、

 

接続部分に瞬間接着剤を
注し込んで固定します。

 

接続部分の前後を覆うように熱収縮
チューブを被せ、加熱して密着させます。

 

芯線の接続作業に移ります。コネクターのピンが
抜けそうにないので、残っているコードを利用します。

 

配線コード側も長さを整え、
各色ごとにつなぎ合わせます。

 

芯線を数mm剥き出して
半田上げしておきます。

 

双方とも芯線の準備を整えます。
確実で綺麗な作業を心がけます。

 

芯線同士の撚り合わせは見送り、
半田付けのみで接続します。

 

芯線間での短絡を防ぐため
熱収縮チューブを被せます。

 

接続作業完了です。メーカによる修理ならば、専用の
加工済み接続コードにそっくり交換するところでしょう。

 

まだ外被の保護処理など終わっていませんが、
ここで取り合えず動作テストをしてみます。

 

大丈夫です、電源スイッチを入れるとシステムの初期化動作の後、
0.00」が表示されてスタンバイ状態になります。そういえば、
線はひっぱり過ぎないように注意!」なんてシールが貼られて
いるではありませんか。でも、ここに貼ってもコードのどこを引っ張ら
ないようになのか?分からなくないですか・・余計なことでした。

 

外被保護の作業に戻ります。先ほど取り
外しておいたビニル製保護外被を戻します。

 

ビニル外被は長さを切り詰めたわけでは
ないので、ほぼコードの先端まで届きます。

 

長さ方向に入っている切り込みを閉じながら
ビニルテープを2重にしっかり巻き付けます。

 

金属フレームの穴を通るところで
タイラップで厳重に固定します。

 

これだけの措置をしても、ガツンと力が
加わればいずれ再び切れることでしょう。

 

その時はまた守谷工房が駆け付ける
までです。本体のカバーを元に戻します。

 

組み上がったところで再度
動作確認を行います。

 

初期化動作中「88888」が表示され
その後「0.00」となりスタンバイします。

 

試しに私自身が載ってみます。断じて71.4kgなんかありゃ
しませんので 着衣状態で手に道具も持った状態ですから。
ま、体重計としては正常に機能しているようなのでOKですが。

 

修理作業を終え、職員の方に報告し確認していただきます。
事務部長さんが直って良かったと胸を撫で下ろしています。
TANITA社の製品で、新しく入れ替えると現行製品でも
20万円以上するそうです。ともあれ、幸いにも現場修理で
完了でき、持ち帰ることも再訪問の必要もなくなりました。


 
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