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ニコイチニコトモ(2022.7.17)


SONY製ワイヤレスイヤホンを修理します。本体にストラップが
付いており、それを首にかけながら途中から分岐する左右の
イヤーパッドを耳に入れて使用します。2セットが送られてきて
1台はケーブルの断線で、もう1台は内蔵バッテリーの劣化で
いずれも使用できません。バッテリーを入れ替えることで1台を
使えるようにして欲しい、いわゆるニコイチ修理をご希望です。
 

この小さなモジュール内に、ワイヤレス受信回路、
増幅アンプ、バッテリー等が組み込まれています。

 

ワイヤレス規格はBluetoothで、
おそらく標準のVer.2.0でしょう。

 

2セットのうち1台は、この通りケーブルの
本体引き込み部が傷んでいます。

 

金属メッシュで保護された丈夫な
ケーブルですが、切れかけています。

 

充電スタンドに載せると、LEDが
点灯して正常に充電できます。

 

裏蓋を開けてみます。精密
ドライバーでネジを緩めます。

 

多聞に漏れず回路基板はこの通りです。スマートホンレベルの
高密度に部品が実装された回路基板です。もし、基板上の部品に
問題があれば(守谷工房に限らず)手の打ちようがありません。
 

ケーブルに問題のないもう1台です。こちらは
充電ができません。バッテリーの劣化でしょう。

 

試しに最初の1台からバッテリーを
取り外し、移し替えてみると・・

  

正常に充電できるようになります。後者の1台に内蔵されていた
リチウムイオン電池は完全に寿命のようです。2セットを組み合わ
せて1台を復活できたので(いわゆるニコイチ)、ご要望に従えば
この時点で修理完了です。しかし、ケーブルが切れかけている
前者の1台も何とかしたいものです、ニコトモを目指します。

 

本体内部に引き込まれたケーブルの回路
基板取り付け部です。半田付けされています。
 

ケーブル引き込み部には、かなり厳重な
ホルダー部品が取り付けられています。

 

ケーブルを外すため
半田ごてを当てます。
 

片チャンネルの信号線
(赤側)とアース線を外します。

 

他方の信号線(緑色)と
アース線も外します。
 

スイッチパネルの脱落を
防止する部品です。

 

スイッチパネルをいったん
取り外しておきます。
 

ホルダーごとケーブルを
引き出すことが出来ます。

 

ホルダーは2ピースからなり
ケーブルを挟み込んでいます。
 

キャップ側の部品を
引き抜きます。
 

ホルダーの中からようやく出てきたケーブルは、金属ネット製
外被膜の終端部が樹脂でモールドされています。首に掛けて
使用されることで大きな外力が加わる可能性があり、よほど
耐久性を高めておきたかったのでしょう、実に入念な設計が
施されています。が、残念ながら断線したことは事実です。
 

4本の芯線がモールドの先まで延びて
います。根元を束ねるスリーブを抜きます。
 

外被覆を出たところ、つまり保護が及ば
なくなるところで芯線はズタズタです。
 

モールド部分はホルダーの内部形状に合わせて
成形されています。再利用せざるを得ません。
 

ケーブルを通し直すために、
ドリルで穴を広げます。
 

何と穴の内部に金属片が隠れています。
モールド内でケーブルを固定していたバンドです。
 

ケーブルを束ねた状態でモールド成形された
のでしょう。ルータービットで取り除きます。
 

金属片を取り出すとようやく2本のケーブルが外被覆ごと
モールドを通ります。配線に必要な長さ分を引き込みます。
 

外被覆を丁寧に除去し
芯線を取り出します。
 

予め芯線の先端を半田上げしておきます。
エナメル処理されているので加熱するだけです。
 

片チャンネル分2本を半田付けします。
何とか半田ごてを取り回せるスケールです。
 

他方のチャンネルも半田付けします。
赤色と緑色でL・Rを区別します
 

モールド部はまだ簡単に移動できます。
固定位置ギリギリに合わせておいて、
 

ケーブルの出る根元に瞬間接着剤を
流し込みます。十分な強度が得られます。
 

そのままホルダーに収めます。
外観的には修復の痕が残りません。
 

キャップを嵌め込み本体内に戻します。外被覆が
引き込まれているので強度的に有利です。
 

LEDの導光板をセットします。
忘れると点灯の有無が分かりません。
 

回路基板も内部に戻します。基板上部の
空間にリチウムイオン電池が入ります。
 

ケーブルの芯線を確認します。程良く
感覚を取るよう位置を整えます。
 

手配しておいた新品のリチウムイオン電池です。
30×20×6mmの製品をようやく見つけました。
 

問題なく充電できます、LEDの赤色が消えると充電完了
です。劣化したバッテリーでは、充電開始後に間もなく
赤色が消えてしまい、もちろん全く充電されませんでした。
 

最後に、実際にBluetooth接続してワイヤレスイヤホンとしての
機能を確認します。スマートホンを取り出してペアリングさせて
みます。「DR-BT20NX」製品名がそのままデバイスとして
表示されています。スマートホン内の音楽が綺麗に再生される
ので、完全に修理できているようです。ニコイチは1台を犠牲・
ゴミにするわけで、2台とも修復(ニコトモ)できて何よりです。

 
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