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BFB 3D Touch ジャンク品の再生(2017.5.14)


3Dプリンターの模索が続いています。デルタ型・XY型いずれも中国製の低価格製品では思う
ような成果が得られません。ホットエンドやエクストルーダ、制御ボードおよびソフトウェアには
格段の進歩があるものの、低価格に抑えるため駆動筐体(フレーム)に十分な配慮がされて
いません。低剛性の部材が必要最小限にしか使われていないため、各駆動軸とも静的かつ
動的に剛性と安定性を欠き、それらは出力品質に大きく影響します。販売を終了した旧型で
本格的な筐体設計のされた中古品(ジャンク品)を見つけました。研究を兼ねて再生します。



英国で開発・製造され、日本では武藤工業
代理店になり販売されていた「3D Touch」です。
 

まだネット上に多くの情報が残っています。
YouTubeにも紹介や使用例があります。
 

3D SYSTEMS社」WEBでLegacy printersの
カテゴリーにマニュアルやソフトウェアがあります。

 

使用説明書、各部の調整方法、メンテナンスなど
詳細な資料を参照することができます(全て英文)。

 
 ・各部の点検


520mm(横)×520mm(奥)×600mm(高さ)の
大型の筐体で、自家用車のトランクにぎりぎり入ります。
 


外側にアクリル製のカバーが被ります。造形サイズも
275mm×275mm×210mmと大型です。
 

フレームは12mm径のステンレス製シャフトと
43mm径のアルミ製ハブで組み立てられています。

 

Y軸方向駆動用のハブは左右とも長さ100mm、
内部にリニアブッシュが組み込まれています。

 

Y軸は同期回転する左右2個のステップモーターで駆動
されます。ハブの刳り抜き部分に取り付けられています。

 

X軸方向駆動用のハブは手前側が長さ120mm、
奥側が60mmあります。全くぐらつきがありません。

 

Z軸方向駆動用のひと回り大きいステップモーターです。
カップリングを介してリードスクリューを回転させます。

 

本体底部にフィラメントロールのリール台が
あります。3ロールセットできる設計です。

 

フィラメントエクストルーダおよびホットエンド周りです。ヘッドの装着数によりシングル・
ダブル・トリプルの仕様があり、最大3色(3種類)のフィラメントによる成型が可能です。
本機はダブルヘッド仕様です。プレートを介してX軸ハブに強固に取り付けられています。

 

フィラメントエクストルーダはネジ溝による送り出し方式を
採用し、アルミブロック材削り出しによる頑強なものです。

 

ステッピングモーターが、プーリとタイミング
ベルトを介して送り出しネジを回転させます。

 

手前にエクストルーダ冷却用(小径)、フィラメント
冷却用(大径)のファンが2基ずつ並びます。

 

下から覗き込むとホットエンドを確認できます。
上部のエクストルーダに対応して2基並びます。

 

ヒーターと一体になった構造で、ノズル周りは耐熱ゴムの被膜により覆われています。
ヒーターへの電力供給配線、および温度計測用サーミスタへの配線が見えます。
これまで専ら使われてきたのか、写真奥側のホットエンドは状態が良くありません。

 

エクストルーダ背面側に小さな基板があり
各部への配線を集約・中継しています。

 

3D Touch全体を制御する専用基板です。
出力の際にホストPCを必要としません。

 

PCの代わりにこの小型パネルからあらゆる操作を
行います。必要な(最小限の)機能が備わっています。

 

本来はカバー正面上部にパネルが取り付けられています。
5mm厚アクリル製カバーにより本体剛性がさらに高まります。

 
 ・ホットエンドの整備


長時間高温に晒されることでホットエンドは
劣化が速く進行します。分解整備が必要です。

 


エクストルーダとホットエンドを取り外しました。販売元からの
部品供給は終わっていますが、深刻な損傷はないようです。

 

専ら使い続けられてきたと思われる1段目のホットエンドです。ノズル周辺の耐熱
ゴム被膜が部分的に切れています。金属部も炭化物が付着して汚れています。

 

ヒーターおよびサーミスタの導通は問題ありません。
上部プレートとの間に断熱用のMDF部品が入ります。

 

高温によりMDF材が変色し、全体的に
変形しています。一部は炭化しています。

 

中心にフィラメントを導くテフロンチューブが
通っています。その外側に短いアルミスリーブと、

 

エポキシ樹脂でしょうか、アルミスリーブの下に
耐熱樹脂製のスリーブが差し込まれています。

 

樹脂製スリーブはヒーターに近い下部が変色・
変形しています。高温にさらされた結果でしょう。

 

2段目ホットエンドから取り外したスリーブと
比較すると、劣化の具合が良く分かります。

 

テフロンチューブも抜いて見ます。
先端部分が黒く変色しています。

 

やはり高温に晒された結果でしょう。
変形により出口部分が狭くなっています。

 

フィラメントが通過できないので、同径の
ドリルを使って内径を元通りに広げます。

 

交換したいところですが、同サイズ(内外径)の
チューブが見つからず、このまま再利用します。

 

比べてみると2段目のホットエンドはほとんど使われておらず、ほぼ新品状態だと
思われます。1・2段目の位置を交換し、新品に近い2段目を1段目として使用します。

 
 ・エクストルーダの整備


アルミブロック材からNC機で削り出し加工されたもので
しょう。とにかく頑丈で重量のあるエクストルーダです。

 


最大3基のエクストルーダが、5mm厚アクリル製
プレートを介してX軸ハブに取り付けられます。

 

フィラメントはプーリ形状のガイドによりネジ溝に押し
当てられます。ガイドの下に送り出しネジが見えます。

 

150mmほどのシャフトの上端に
駆動用プーリがネジ固定されています。

 

ナットを緩めプーリを取り外します。そのすぐ
下にベアリングが精密に嵌め込まれています。

 

下方向にシャフトを抜き取りました。下端に小径の
ベアリングが2個入り、やはりナットで固定されています。

 

ベアリングが焼き付いていて回りません。これでは
エクストルーダとして機能していなかったはずです。

 

潤滑剤を吹き付けるもまるで改善しません。ベアリングを
新品に交換したいのですが、固定ナットも固着しています。

 

止むを得ずベアリングをバーナーで加熱します。
中で固着したグリスがようやく溶け出してきます。

 

潤滑剤を吹いては焼く作業を繰り返し、何とかスムーズに回る
ようになりました。ナットが緩まない以上、このまま使用します。

 
 ・出力テスト


ダウンロードしたソフトウェアをセットし、含まれていた
サンプルデータを出力してみます。最低限の調整ですが、

 


最初の出力でアヒルの成形に成功しました。
カバーを外していたせいか、かなりの動作音でした。

 

ノズル径が大きく(口径は不明)、積層痕が太く明瞭に残っています。0.4mm径
ノズルによる標準的な出力に比べかなり大雑把な印象です。しかし、構造全体の
高い剛性の恩恵なのか、連続する積層レイヤー間にほとんど乱れがありません。

 

凸曲面には規則正しい積層痕が干渉縞を描いています。残念ながらオーバーハング部(喉の
あたり)のフィラメント充填には難があります。積層の連続性が失われ、一部でフィラメントが途切れて
います。温度管理、フィラメント送り出し速度、冷却特性などを気長に調整していくしかありません。

 

同じ設定で招き猫のデータを出力しました。Prusaでは
小判や右腕がなかなか綺麗に出力できない難題です。

 

全体的に悪くない出力結果です。所どころに積層の
ずれが生じており、これから細かな調整が必要です。
 

猫の表情や手前の小判を確認します。「金運」の文字を明瞭に
描くことはなかなか難しいのですが、それなりに出力されています。

 

3D Touch用のフィラメントには、2.5mm径のABSまたはPLAが使われます。この
フィラメントに合わせて径の大きなノズルが装着されています。時間当たりの積層量が
大きく短時間で大きな出力を得られますが、フィラメントの吐き出し径や積層ピッチが
大きく、成型が大雑把になるのは当然です。今後の計画としては、ホットエンドや
エクストルーダを交換し、制御基板もArduinoやMelzi、Mach等に移行させようと
思います。本機の高い剛性と大きな出力サイズは低価格機では得られません。

 

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