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ジェットバスユニットのビルトイン化1(2023.8.15)


かれこれ10年近く前に、自宅のお風呂にジェットバスを追加する
製品を探したことがあります。浴室関係の製品を散々当たったの
ですが、バスユニットを丸ごと交換、すなわちリフォームする以外に
方法がないことが分かりました。既存の浴槽に後から追加できる
製品や工事は皆無のようです。それでもネットを調べていると、
ある会社から浴槽内に投げ込んでジェットバスを楽しめる製品が
販売されていることを知り、大枚をはたいて購入することに。
 

群馬県みなかみ町にあるデンボー工業株式会社
製造・販売していたポータブル・ジェットです。

 

大型の電気湯沸かしポット(古っ)みたいな
本体を、丸ごと浴槽内に投入して使用します。

 

本体底面にお湯の取り込み口があります。
ポンプを保護するフィルターは着脱式です。

 

取り込まれたお湯はポンプで加圧され、空気を
混合されて手前のノズルから吐き出されます。

 

DC20V、最大8.5Aの電力を供給する
ため、外部電源装置が用意されています。
 

安全のため浴室外に設置し、長い
電源ケーブルを介して接続されます。

  

付属するリモコン装置です。本体上部の受信部に
信号を送り、ON・OFFやタイマーを制御します。

 

浴室内に設置し入浴しながら操作するため
完全防水仕様です。背面に吸盤が付いています。

 

使用の度にフックを介してこの辺りに本体を設置します。家庭風呂で
気泡浴を楽しめるなど、それはもう極楽気分です。ですが、購入後
本当に数回使用しただけで本体は脱衣場の置物に。義理の両親が
いらした時にもう一度使用したのが最後となります。単純な理由で、
浴槽内に本体を入れると狭くなるからです。足を伸ばすことができ
ません。本来のジェットバスはビルトイン仕様で、ユニットは浴槽の
外に取り付けられ、浴槽壁面の開口部からジェットが噴き出します。
何とかユニットを改造してビルトイン化できないか、長年の夢でした。

 

悶々とした構想を打ち破り、作業に着手したのが
3年ほど前。屋外から浴槽の点検口を確認します。

 

家屋北側の玄関横、トイレの並びに浴室があり、
点検口から手が届く位置に浴槽側面が見えます。

 

本体から取り出したポンプユニットを設置
可能かどうか、空間のサイズを確認します。

 

上下方向に300mm弱のスペースがあり、
配管類との干渉は避けられそうです。

 

左右方向には200mm以上のスペースが
あり、ユニットを取り付けるには十分そうです。

 

浴槽の側面は傾斜しているので
アングルメーターで傾斜角を測ります。

 

約87度の傾斜では、浴槽の上下端で片方に16mmほど
(CAD上で)広がるだけです。ポンプユニットの取り付けに
際し、傾斜角を特に考慮する必要はないと判断します。

 

本体の分解に取りかかります。どのような装置が
組み込まれているのか、この時点では全く未知です。

 

本体外装の半分を外します。ポンプユニットを
中心に配管やセンサー類が見えます。

 

ポンプユニットを下部の
ベースプレートごと取り出します。

 

ジェットの噴き出し配管の先に、
樹脂製ノズルが組み込まれています。

 

本体上部にリモコン受光部を含む制御
ユニットが、完全防水で収まっています。

 

ネジによる固定がないので
簡単に取り出すことができます。

 

本体内部に組み込まれていた全ての装置です。使用時は
ポンプユニットの半分あたりまでが水中に没します。制御
ユニットから出る黄色の配線とその先の部品は、浴槽内の
水位を検出するフロート式センサー(リードスイッチ)です。

 

ポンプユニット周りの構造をほぼ把握できましたが、
取り出した状態で動作するかは分かりません。

 

円筒形のポンプユニットを固定・支持する、特殊な
形状のベースプレートが組み込まれています。

 

本体外装に合わせて成形されている
ので、再利用は難しいと思われます。

 

ベースプレートに挟み込まれるように、
ポンプ吸水口に集水ダクトが付いています。
 

ポンプユニットの大部分は水没しているので、特に
集水ダクトのような部品は必要ないと思われますが。
水流が吸い込まれる際の効率が改善されるのでしょうか。

 

さて、取り出したポンプユニットを浴槽外に
設置する方法を考えなければなりません。
 

ポンプの吸水口にお湯を導くダクトを製作します。ホーム
センターの水道用品コーナーで塩ビ管を調達してきます。
 

浴槽の壁面に新たに穴を開け、塩ビ管製
ダクトを接続してお湯を取り込みます。

 

ポンプユニットは、逆に完全にお湯の外に出されます。
ダクトと吸水口の接続部で、漏水を防ぐ工夫が必要です。

 

吸水口周囲の補強リブに合わせ、
塩ビ管の周囲に溝を刻みます。

 

最終的な組み立て時には、接合部に
シール材を充填することで防水します。

 

ポンプ自体は垂直方向に取り付けられるので、
エルボ管を使って水流の方向を90度変えます。

 

エルボ管の先にねじ込み式の
ジョイントを接続します。

 

噴き出し口と方向を揃え、いずれも
浴槽壁面の穴に接続します。

 

あり合わせの塩ビ管で構成しているので、吸い
込み口と噴き出し口の位置が離れすぎています。

 

塩ビ管を途中で切断し
長さを調整します。

 

既に確認した浴槽外側の空間を考慮すると
このくらいの位置関係が適当かと思います。

 

ねじ込み式ジョイントの先に金属製の大径ナットを入れ
ます。パッキンを挟み浴槽壁面の内外で固定します。

 

浴槽内側には樹脂製キャップがもう1枚入ります。
ゴミをキャッチするフィルターをセットするためです。

 

ポンプごと水中に没していて直接吸い込む状況と、延長された
塩ビ管製ダクトの先から吸い込む状況で、果たしてお湯が同じ
ように取り込まれるか見当も付きません。モーターにかかる負荷が
極端に増加し、過熱するなど問題が起きなければよいのですが。

 

次に、ジェットの噴き出し口部分の構造を考えます。吸い込まれた
お湯が加圧されて送り出されることは確かですが、それだけでは
単なるお湯の循環装置に過ぎません。加圧・加速された水流に
空気を混合する仕組みが必要で、噴き出し口を覆うハウジングの
横方向に、垂直方向に延びるゴム配管が取り付けられています。

 

上方に延びた配管の先は大気中に開放されており、
ハウジング内の負圧により空気が取り込まれます。

 

ハウジング内で水流に空気が混入され、
大量の気泡が作り出されジェットとなります。

 

ハウジング内に収められているノズルです。
球体側面のスリットから空気が入り込むようです。

 

ノズルを内蔵した状態で、ハウジングが
本体外装の開口部にネジ固定されます。

 

本体外装から取り出してしまうので、浴槽壁面に
固定する方法を別途工夫しなければなりません。

 

開口部の周囲にはパッキンが嵌め込まれて
おり、防水ではなく気密性を保っています。

 

ノズルおよびハウジングを浴槽壁面に固定するフランジを
製作します。精密な採寸に基づいてCAD上で設計し、3D
プリンターで出力します。強度を保つため積層時の充填率は
100%で出力します。ネジ穴位置はハウジングに合わせます。

 

本体外装の開口部に嵌められていた
パッキンを再利用し、防水を図ります。
 

フランジ外側と浴槽壁面の間にもシート状の
パッキンを挟み、3本のネジで浴槽に固定します。

 
 

ポンプユニット全体を支えるベースプレートは、
5mm厚のアクリル材から新たに製作します。

 

ポンプ本体のネジ穴を再利用して固定し、
空気取り入れ用配管との干渉を避けます。

 

ベースプレートおよびポンプユニットを浴槽壁面に
固定するため、CADで設計した部品です。
アクリル材からレーザー加工で切り出します。

 

ダクトの接合部にシール材を充填し、ベース
プレートの通過部も接着剤で強く固定します。

 

浴槽の外側に取り付けてビルトイン化するための
ポンプユニット側の改造が進みつつあります。

 

水位を検出するフロート式センサーは、思い切って短絡させて
常時ONの状態にします。後から判明しますが、浴槽にお湯が
ない状態で運転しても、致命的な負荷はかからないようです。
実は、ここまで作業した後、2年ほど計画が中断します。浴槽
壁面に穴を開けることを想像すると、位置を間違えたり、しばらく
湯船に浸かれなくなるなど、心配事が次々に浮かんできます。
電源ユニットをどこに収納するか、電源や制御信号のケーブルを
どこに這わせるのか、リモコンの受光部はどうするのか等々、
解決すべき課題は山積みで、なかなかその気になれません。

 

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