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手摺り保護シートの貼付け施工(2020.1.25)


高齢化社会を迎え老人介護施設の必要性が高まっています。守谷市内でも徐々に
施設数が増加し、現在15か所ほど(Google検索)を数えます。ところが、竣工の瞬間
から施設や設備は確実に劣化が進み、ご高齢の方々が過ごされる居住空間では、
僅かな汚損や破損も直接生活環境を低下させます。規模の大小にかかわなく、その
維持・管理には大きな人的資源と運営資金が費やされると聞きます。工房の持つ
ささやかな技術により、これら福祉施設が抱える問題を少しでも解決したいものです。

 

お手伝いさせていただける施設が少しずつ増えてきました。隣のつくばみらい市に
ある介護施設からのご依頼です。長い廊下沿いにアルミサッシ製の窓枠が続き、
お年寄りの方々が通行される際、このサッシを手摺り代わりに使われるそうです。
剥き出しのサッシは寒い時期には冷たく、金属の感触は人に優しくありません。
手触り感を改善するため、何かシートのようなものを貼って欲しいとのことです。

 

感触的には厚手のもの、施工的には薄手のもの、ホーム
センターを探し回るも適当な材料が見つかりません。

 

ようやく手に入れたのは、ポリエチレン製キッチン用マット
(5mm厚)です。表面にエンボス加工が施されています。

 

ロールごと搬入し現場でカットします。
折り返しを含め85mm幅とします。

 

作業が簡単でかつ短時間で施工するため、両面
テープにより貼り付けます。費用も抑えられます。

  

折り返す短辺はシート側に
両面テープを貼ります。

 

カットしたシート長は1m弱です。両面
テープの喰い付きは悪くありません。

 

接着強度を確保するため短辺はサッシ側にも貼ります。
折り返す長辺は2列に分けてサッシ側のみに貼ります。

 

平滑な金属表面なのでテープの接着力は
十分です。不安が残るのはシート側です。

 

両面テープの保護シートを剥がし、正確に位置決めしながらシートを貼り付けて行きます。
シートが立った状態で先に短辺を貼り付け、その後折り曲げながら長辺を貼り付けます。
・・が、この施工方法は失敗です。5mm厚ポリエチレンシートは、折り曲げに対して相当の
反力を生ずるので、貼り付けた瞬間に十分な接着力で固定されなければなりません。両面
テープの接着強度は最大に達するまでに時間がかかり、その間材料を圧着しておく必要が
あります。この状態では圧着のしようがなく、逆に時間をかけてゆっくり剥がれてきます。
両面テープの性能も疑いましたが、「強力タイプ」・「超強力タイプ」でも剥がれてきます。
施工部分を全て撤去し、いったん工房へ引き上げることにします。施工方法変更です。

 

ロールを伸ばしてシートを点検すると、切断線が
エンボス加工のラインにまるで合っていません。

 

施工後の見栄えが悪くなるので
エンボスに合わせて端を切り落とします。

 

日を改めて、再度現場へ乗り込みます。
工房でシートを85mm幅にカット済みです。

 

両面テープを諦め、作業は大変ですが接着剤による
貼り付けに変更します。先にサッシ表面を脱脂します。

 

クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、500g缶を用意
しました。両面塗布+乾燥+圧着で施工します。
 

ゴム系接着剤を均一に塗り付けるのは簡単では
ありません。小型の糊ヘラ(ステン製)を使います。
 

カットしたシートに先に接着剤を塗ります。
そのまま放置して別の作業を進めます。

 

サッシに接着剤を塗ります。先に短辺側を作業します。
垂直面なので接着剤を引き延ばし難く、時間がかかります。

 

次に長辺側に塗り付けます。水平面は比較的簡単
ですが、どうも糊ヘラが作業に合っていません。
 

先端が櫛刃ではなく直線のヘラの方が作業しやすいよう
です。あるいは溶剤を加えて接着剤の粘度を下げても?。
 

サッシに塗り付けた接着剤を乾燥させる間、次のシートに接着剤を塗っておきます。
10分以上乾燥させ、手にべとつかない状態で貼り付けます。手前の垂直面(短辺)
から合わせて行きます。接着剤同士が触れた瞬間、両面テープでは比較にならない
強烈な接着力が生じます。万一ずれても貼り直しができません(剥がせません)。

 

無理に剥がそうとするとシートが破れてきます
(工房で実験済み)。サッシの下端で位置を決めます。

 

腰をかがめ目線をサッシ下端の高さに
してシートを合わせます、・・辛いです。

 

正確に位置を決めるような場面では、
感触を損なわないため素手で作業します。

 

位置が決まりずれる心配がなくなれば
軍手をはめてひたすら押し付けます。

 

短辺側を十分に圧着した後、シートを広範囲に
捻りながら長辺側を折り曲げて行きます。

 

強烈な接着力により、押さえ付けた
直後にシートが完全に固定されます。

 

サッシ1枠あたり3枚のシートを貼り付けて、最後に20cmほど
残ります。シートの余りを利用して、後で仕上げることにします。

 

接着剤の塗布に時間がかかり、なかなか作業が
進捗しません。サッシ2枠目まで進みました。

 

サッシ1枠の貼り付けに1時間近くを
要し、ようやく3枠目に到達します。

 

サッシの端に20cmほど残してきた部分
です。余りのシートから必要な長さを取ります。

 

接着剤を塗り、乾燥させ、残り部分を埋め
ます。軍手が接着剤まみれでべとべとです。

 

2時間もあれば完了するつもりが、3時間以上を費やしてようやく作業終了です。
500g缶入りの接着剤は空です・・接着剤の塗布テクニックに課題を残しました。
最初に貼り付けたシートを点検するも、剥がれる様子もなく大丈夫・・だと思います。
後日再度点検に伺いますし、剥がれてくればすぐ連絡が来て怒られるでしょうから。

 

厚手(5mm厚)のポリエチレン材シートは感触が抜群です。手触りが柔らかく
温かみがあります。車椅子などの接触にも衝撃を緩和し安全性が向上します。
通りかかる職員の方々が、「とても良い」と声をかけて下さいます。施工上の
都合を優先し、下手に薄手のシートで妥協などしなくて良かったと思います。

 
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