高齢化社会を迎え老人介護施設の必要性が高まっています。守谷市内でも徐々に
施設数が増加し、現在15か所ほど(Google検索)を数えます。ところが、竣工の瞬間
から施設や設備は確実に劣化が進み、ご高齢の方々が過ごされる居住空間では、
僅かな汚損や破損も直接生活環境を低下させます。規模の大小にかかわなく、その
維持・管理には大きな人的資源と運営資金が費やされると聞きます。工房の持つ
ささやかな技術により、これら福祉施設が抱える問題を少しでも解決したいものです。
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お手伝いさせていただける施設が少しずつ増えてきました。隣のつくばみらい市に
ある介護施設からのご依頼です。長い廊下沿いにアルミサッシ製の窓枠が続き、
お年寄りの方々が通行される際、このサッシを手摺り代わりに使われるそうです。
剥き出しのサッシは寒い時期には冷たく、金属の感触は人に優しくありません。
手触り感を改善するため、何かシートのようなものを貼って欲しいとのことです。
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感触的には厚手のもの、施工的には薄手のもの、ホーム
センターを探し回るも適当な材料が見つかりません。
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ようやく手に入れたのは、ポリエチレン製キッチン用マット
(5mm厚)です。表面にエンボス加工が施されています。
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ロールごと搬入し現場でカットします。
折り返しを含め85mm幅とします。
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作業が簡単でかつ短時間で施工するため、両面
テープにより貼り付けます。費用も抑えられます。
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折り返す短辺はシート側に
両面テープを貼ります。
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カットしたシート長は1m弱です。両面
テープの喰い付きは悪くありません。
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接着強度を確保するため短辺はサッシ側にも貼ります。
折り返す長辺は2列に分けてサッシ側のみに貼ります。
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平滑な金属表面なのでテープの接着力は
十分です。不安が残るのはシート側です。
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両面テープの保護シートを剥がし、正確に位置決めしながらシートを貼り付けて行きます。
シートが立った状態で先に短辺を貼り付け、その後折り曲げながら長辺を貼り付けます。
・・が、この施工方法は失敗です。5mm厚ポリエチレンシートは、折り曲げに対して相当の
反力を生ずるので、貼り付けた瞬間に十分な接着力で固定されなければなりません。両面
テープの接着強度は最大に達するまでに時間がかかり、その間材料を圧着しておく必要が
あります。この状態では圧着のしようがなく、逆に時間をかけてゆっくり剥がれてきます。
両面テープの性能も疑いましたが、「強力タイプ」・「超強力タイプ」でも剥がれてきます。
施工部分を全て撤去し、いったん工房へ引き上げることにします。施工方法変更です。
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ロールを伸ばしてシートを点検すると、切断線が
エンボス加工のラインにまるで合っていません。
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施工後の見栄えが悪くなるので
エンボスに合わせて端を切り落とします。
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日を改めて、再度現場へ乗り込みます。
工房でシートを85mm幅にカット済みです。
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両面テープを諦め、作業は大変ですが接着剤による
貼り付けに変更します。先にサッシ表面を脱脂します。
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クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、500g缶を用意
しました。両面塗布+乾燥+圧着で施工します。
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ゴム系接着剤を均一に塗り付けるのは簡単では
ありません。小型の糊ヘラ(ステン製)を使います。
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カットしたシートに先に接着剤を塗ります。
そのまま放置して別の作業を進めます。
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サッシに接着剤を塗ります。先に短辺側を作業します。
垂直面なので接着剤を引き延ばし難く、時間がかかります。
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次に長辺側に塗り付けます。水平面は比較的簡単
ですが、どうも糊ヘラが作業に合っていません。
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先端が櫛刃ではなく直線のヘラの方が作業しやすいよう
です。あるいは溶剤を加えて接着剤の粘度を下げても?。
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サッシに塗り付けた接着剤を乾燥させる間、次のシートに接着剤を塗っておきます。
10分以上乾燥させ、手にべとつかない状態で貼り付けます。手前の垂直面(短辺)
から合わせて行きます。接着剤同士が触れた瞬間、両面テープでは比較にならない
強烈な接着力が生じます。万一ずれても貼り直しができません(剥がせません)。
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無理に剥がそうとするとシートが破れてきます
(工房で実験済み)。サッシの下端で位置を決めます。
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腰をかがめ目線をサッシ下端の高さに
してシートを合わせます、・・辛いです。
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正確に位置を決めるような場面では、
感触を損なわないため素手で作業します。
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位置が決まりずれる心配がなくなれば
軍手をはめてひたすら押し付けます。
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短辺側を十分に圧着した後、シートを広範囲に
捻りながら長辺側を折り曲げて行きます。
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強烈な接着力により、押さえ付けた
直後にシートが完全に固定されます。
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サッシ1枠あたり3枚のシートを貼り付けて、最後に20cmほど
残ります。シートの余りを利用して、後で仕上げることにします。
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接着剤の塗布に時間がかかり、なかなか作業が
進捗しません。サッシ2枠目まで進みました。
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サッシ1枠の貼り付けに1時間近くを
要し、ようやく3枠目に到達します。
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サッシの端に20cmほど残してきた部分
です。余りのシートから必要な長さを取ります。
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接着剤を塗り、乾燥させ、残り部分を埋め
ます。軍手が接着剤まみれでべとべとです。
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2時間もあれば完了するつもりが、3時間以上を費やしてようやく作業終了です。
500g缶入りの接着剤は空です・・接着剤の塗布テクニックに課題を残しました。
最初に貼り付けたシートを点検するも、剥がれる様子もなく大丈夫・・だと思います。
後日再度点検に伺いますし、剥がれてくればすぐ連絡が来て怒られるでしょうから。
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厚手(5mm厚)のポリエチレン材シートは感触が抜群です。手触りが柔らかく
温かみがあります。車椅子などの接触にも衝撃を緩和し安全性が向上します。
通りかかる職員の方々が、「とても良い」と声をかけて下さいます。施工上の
都合を優先し、下手に薄手のシートで妥協などしなくて良かったと思います。
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