国内有数の大病院(分院)から、失敗のできない難しいご用命を
頂戴しました。採血室用アクリルパーティションの設計と製作です。
写真は別の病院の採血室の風景ですが、検査技師と患者さんの
ディスタンスは、至近・密着そのものです。大病院での1日当たり
採血作業回数は、おそらく数百から数千のオーダーでしょうから、
採血する側、受ける側の双方にとって飛沫防止対策は急を要します。
https://www.seichokai.or.jp/bell/dept/page.php?ct=Mw==&sc=NzQ=&no=NDUz
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ご依頼のあった病院に下見に伺います。テーブルを挟んで
手前に患者さんが座り、向こう側に検査技師の方が立ちます。
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採血枕、採血帯、トレイ、滅菌用ティッシュなどが
並ぶテーブルが、計5台設置されています。
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検査技師側からみたテーブルです。引き出し内に翼状針やシリンジの
セットが保管されています。テーブルの右サイドには、既に横方向(隣り
同士)を遮るパーティションが設置されています。新たに必要となるのは
もちろん、検査技師の方と患者さんを遮る正面方向のパーティションです。
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採血作業中の写真をネットで探してみます。採血
箇所(患者さんの腕)へのアクセスが必須です。
https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/shigoto/
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採血作業ができるよう下部に開口部を設ければ良いので、
その構造は簡単なものです。市販品から探すことも可能
です。取りあえず200mm開いたデザインを考えました。
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看護師さんたちとお話ししているうちに、大事なことに気づき
ます。採血帯を装着するには200mmでは狭いのです。
https://www.kango-roo.com/mv/39/
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採血帯を装着しようと患者さんの方へ腕を伸ばすには、高さ
400mm近い開口部が必要です。開口部を修正したデザインを
お示しすると、「これでは飛沫を防止できない」とのご意見です。
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これで仕様が一挙に難しくなりました。ネットを調べてみると
市販されている採血室専用のパーティションを見つけました。
https://pr.hyojito.co.jp/saiketsu-guard/
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各所に工夫が凝らされたデザインですが、患者さんに
大きく腕を出し入れしてもらわなければなりません。
https://pr.hyojito.co.jp/saiketsu-guard/
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「えらいことになった・・」と無い知恵を絞ります。
工房が編み出した解決策は、フリップを追加します。
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高さ150mmほどのフリップを上下することで、
必要に応じて開口部の高さを変化させます。
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フリップを可動式にするため、ポリカーボネート製の蝶番を介して
パネル本体と連結させます。持ち上げたフリップが落ちてこない
よう、どこかにマグネットキャッチャーを取り付けることにします。
このパーティションを実際に利用するのは看護師や検査技師の
方々ですので、出力した図版を何度かフィードバックして細部の
寸法を決定します。最終的に上図の仕様で了解をいただきました。
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採血する側から見た、フリップを下げた状態と上げた状態の
ビューです。マグネットキャッチャーは、フリップ左サイドに
スチール片を、支柱の途中にマグネットを取り付けます。
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大学図書館用パーティションの設計時と同様に、こちらも簡単な
パースを作成してスタッフの皆様に確認してもらいました。
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今回は製作過程の紹介は略します。工房で
組み上げた5セットを採血室に運び込みます。
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この日は既に採血業務は終了しており、スタッフの皆様が
片付けの作業をされている中を施工させていただきます。
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5セットを各テーブルに載せていきます。保護
シートが付いた状態では圧迫感があります。
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支柱・底板の固定は、前回と
同様に両面テープを使用します。
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患者さんの側から、フリップが
閉じた状態を見ています。
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フリップを上げると、通常250mmの
開口部が高さ370mmに拡大します。
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保護シートを一挙に剥がします。空気が乾燥しているので
凄まじい静電気が生じます。手足を湿らせながら作業します。
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非常に確認しづらいのですが、支柱のこの
部分にマグネットがネジ固定されています。
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看護師さんや検査技師さんは、ほとんど立った状態で作業されます。一方
患者さんは椅子に腰かけた状態で採血を受けます。両者の頭部の位置
関係を確認すると、病院側から修整指示のあったパーティション各部の
サイズが実に的確であることが分かります。一線の方々は凄いものです。
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保護シートを剥がした状態で
フリップの開閉動作を確認します。
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フリップを上げると「カチッ」と小気味良くマグネットに
吸い付きます。下げる時の吸着抵抗も程良い感じです。
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写真奥から手前にかけて5台のパーティションが
並んでいます。やはりなかなか写真に写りません。
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単に撮影技術が低い
せいかも知れませんが。
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長引くコロナ禍の影響で、アクリルパーティション製品が店頭にもネット上にも
溢れ返っています。それらは原則的に既製品であり、サイズもデザインもお仕着せ
でしかありません。現場のご要望に合わせて、サイズ・デザインは勿論のこと
今回のフリップのような新機能を加えることも必要になります。フリップを備えた
パーティションは、ネットで調べた限り他に類似品が見当たりません。現時点で
守谷工房のオリジナル製品といえそうです。実用新案くらいになりませんか・・
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