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アクリルパーティション 病院採血室用(2021.4.4)


国内有数の大病院(分院)から、失敗のできない難しいご用命を
頂戴しました。採血室用アクリルパーティションの設計と製作です。
写真は別の病院の採血室の風景ですが、検査技師と患者さんの
ディスタンスは、至近・密着そのものです。大病院での1日当たり
採血作業回数は、おそらく数百から数千のオーダーでしょうから、
採血する側、受ける側の双方にとって飛沫防止対策は急を要します。
https://www.seichokai.or.jp/bell/dept/page.php?ct=Mw==&sc=NzQ=&no=NDUz
 

ご依頼のあった病院に下見に伺います。テーブルを挟んで
手前に患者さんが座り、向こう側に検査技師の方が立ちます。
 

採血枕、採血帯、トレイ、滅菌用ティッシュなどが
並ぶテーブルが、計5台設置されています。
 

検査技師側からみたテーブルです。引き出し内に翼状針やシリンジの
セットが保管されています。テーブルの右サイドには、既に横方向(隣り
同士)を遮るパーティションが設置されています。新たに必要となるのは
もちろん、検査技師の方と患者さんを遮る正面方向のパーティションです。
 

採血作業中の写真をネットで探してみます。採血
箇所(患者さんの腕)へのアクセスが必須です。
https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/shigoto/
 

採血作業ができるよう下部に開口部を設ければ良いので、
その構造は簡単なものです。市販品から探すことも可能
です。取りあえず200mm開いたデザインを考えました。

 

看護師さんたちとお話ししているうちに、大事なことに気づき
ます。採血帯を装着するには200mmでは狭いのです。
https://www.kango-roo.com/mv/39/

採血帯を装着しようと患者さんの方へ腕を伸ばすには、高さ
400mm近い開口部が必要です。開口部を修正したデザインを
お示しすると、「これでは飛沫を防止できない」とのご意見です。
 

これで仕様が一挙に難しくなりました。ネットを調べてみると
市販されている採血室専用のパーティションを見つけました。
https://pr.hyojito.co.jp/saiketsu-guard/
 

各所に工夫が凝らされたデザインですが、患者さんに
大きく腕を出し入れしてもらわなければなりません。

 https://pr.hyojito.co.jp/saiketsu-guard/
 

えらいことになった・・」と無い知恵を絞ります。
工房が編み出した解決策は、フリップを追加します。

 

高さ150mmほどのフリップを上下することで、
必要に応じて開口部の高さを変化させます。

  

フリップを可動式にするため、ポリカーボネート製の蝶番を介して
パネル本体と連結させます。持ち上げたフリップが落ちてこない
よう、どこかにマグネットキャッチャーを取り付けることにします。
このパーティションを実際に利用するのは看護師や検査技師の
方々ですので、出力した図版を何度かフィードバックして細部の
寸法を決定します。最終的に上図の仕様で了解をいただきました。

 

採血する側から見た、フリップを下げた状態と上げた状態の
ビューです。マグネットキャッチャーは、フリップ左サイドに
スチール片を、支柱の途中にマグネットを取り付けます。

 

大学図書館用パーティションの設計時と同様に、こちらも簡単な
パースを作成してスタッフの皆様に確認してもらいました。

 

今回は製作過程の紹介は略します。工房で
組み上げた5セットを採血室に運び込みます。
 

この日は既に採血業務は終了しており、スタッフの皆様が
片付けの作業をされている中を施工させていただきます。
 

5セットを各テーブルに載せていきます。保護
シートが付いた状態では圧迫感があります。
 

支柱・底板の固定は、前回と
同様に両面テープを使用します。

 

患者さんの側から、フリップが
閉じた状態を見ています。

 

フリップを上げると、通常250mmの
開口部が高さ370mmに拡大します。

 

保護シートを一挙に剥がします。空気が乾燥しているので
凄まじい静電気が生じます。手足を湿らせながら作業します。

 

非常に確認しづらいのですが、支柱のこの
部分にマグネットがネジ固定されています。

 

看護師さんや検査技師さんは、ほとんど立った状態で作業されます。一方
患者さんは椅子に腰かけた状態で採血を受けます。両者の頭部の位置
関係を確認すると、病院側から修整指示のあったパーティション各部の
サイズが実に的確であることが分かります。一線の方々は凄いものです。

 

保護シートを剥がした状態で
フリップの開閉動作を確認します。

 

フリップを上げると「カチッ」と小気味良くマグネットに
吸い付きます。下げる時の吸着抵抗も程良い感じです。

 

写真奥から手前にかけて5台のパーティションが
並んでいます。やはりなかなか写真に写りません。

 

単に撮影技術が低い
せいかも知れませんが。

 

長引くコロナ禍の影響で、アクリルパーティション製品が店頭にもネット上にも
溢れ返っています。それらは原則的に既製品であり、サイズもデザインもお仕着せ
でしかありません。現場のご要望に合わせて、サイズ・デザインは勿論のこと
今回のフリップのような新機能を加えることも必要になります。フリップを備えた
パーティションは、ネットで調べた限り他に類似品が見当たりません。現時点で
守谷工房のオリジナル製品といえそうです。実用新案くらいになりませんか・・

 
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