県内にある大学の、こちらは図書館の中です。司書カウンターの前におります。
背面側に広大な開架書庫が展開し、学生さんたちがここで図書の貸し出しと
返却の手続きをします。5mを超える長いカウンター全体にパーティションを設置
したいとのご用命です。写真の右端に見えているのは、これまで使用されてきた
ビニルシート製、手作りのパーティションです。受注の可否判断も含め下見します。
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・現場の下見、設計 |
学生さんたちとのやりとりは完全に対面方向です。中途
半端なパーティションでは完全な飛沫防止になりません。
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パーティションはカウンターテーブル面の
利用者側ぎりぎりに設置することになりそうです。
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カウンターの両サイドは半径750mmの4分の1
円弧を描いています。どのように処理しましょうか。
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カウンターの高さは700m、開口部の
高さを差し引いて全高を決定します。
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工房に戻りパーティションの構造とデザインを考えます。右サイドは
プリンタをパーティションの外側に置く関係で、円弧の手前で90度
折り曲げることになります。左サイドはテーブル形状に沿って円弧に
加工しなければなりません。当初は、テーブル面上に置くのではなく
天井から吊り下げる希望もありましたが、パネルが気流に煽られる
心配があるので、脚を介してテーブル面に固定する方法を提案しました。
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CADによる3D画像を表示させます。材料のプロパティに半透明を
設定することで、パネルのサイズを確認し支柱の本数や間隔を
調整します。取り付け時のイメージを把握することもできます。
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ご依頼者にも設置後のイメージをご理解いただくため、CADに
カウンターテーブルや床面・背面の実測データを加えます。
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各部分を簡単に着色し、光源を設定してレンダリングをかけます。
この程度の規模になると、ご依頼側も(実は設計側も)具体的に
どのようなパーティションになるのかなかなか見当が付きません。
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左サイドの円弧部分手前からのビュー
です。冒頭の写真に揃えてみました。
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パーティションの間際まで寄ったビューです。
利用者からはこのように見えるはずです。
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・材料加工、部品製作 |
ご依頼者の了解を得て製作に入ります。
脚を製作する5mm厚アクリル板です。
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120mmに設計した脚長をその後100mmに
短縮したものの、レーザー加工機には入りません。
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長手方向は昇降盤で切断するしかありません。
樹脂材料やアルミ材に適したチップソーを用意します。
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木工用のチップソーでは、切り始めた瞬間に
アクリル材が砕け散ることがあり危険です。
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音もなく滑らかに切り込んでいきます。
そして、素晴らしい切れ味です。
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危ない思いをしながらバリバリ音をたてて
切断していたことが嘘のようです。
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支柱部品は先端ほど細くなるテーパーに切り出さなければ
なりません。複数枚を正確にカットするためジグを作ります。
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切断時にジグを併用することで、テーパーの
角度に合わせてオフセットを与えます。
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ジグを見た目よろしく作る必要はないので、
アクリル端材を接着剤で継ぎはぎします。
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大きな三角定規のようなジグになりました。レーザー
カッターで部品を切り出しているので角度は正確です。
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ジグを材料の下端に揃えて当て、切断中に
ずれないようマスキングテープで固定します。
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昇降盤のフェンスを正確にセットすれば
1回の切断で2枚の支柱部品が得られます。
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いざ、切り始めます。ほとんど
音もなく切れ込んでいきます。
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アクリル材を前方に押し出しながら
反発抵抗(キックバック)を全く感じません。
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丸鋸で切断するとどうしても切断面が荒れます。
しかし、切断面の垂直が保てるメリットがあります。
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他の部材との接合面を含む場合は、垂直な
切断面を得られると非常に助かります。
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専用チップソーが存分に威力を発揮し、必要枚数に予備を加えた10枚を
「楽しく」切り終えました。切断面は決して綺麗な状態とは言えませんが、
軽くペーパーをかけて大きな鋸目を取り除く程度にしておきます。幅の
狭い支柱の側面なので光沢仕上げが求められる部分ではありません。
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支柱と底板を接合する作業に入ります。正確な位置で
垂直に取り付けるため、ここでもジグを工夫します。
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支柱とは別に切り出した底板です。
5mm厚のアクリル製です。
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三角のスコヤ、曲尺、工作台・・を組み
合わせたジグに、底板をセットします。
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現場設置の直前まで保護シートを
そのままにしておきたいのですが・・
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シートの一部が接着に巻き込まれると
厄介なので、接合部付近だけ剥がします。
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ジグに合わせて底板の
上にセットします。
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とにかく垂直に接合されることに注意を注ぎ込みます。
三角スコヤに仮止め用のマスキングテープが付いています。
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曲尺の長手に密着した状態で
テープで仮止めしておきます。
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接合面にアクリル専用接着剤を流し込みます。
支柱側の接合面は切断後に平面調整済みです。
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断面が三角形のアクリル成形材を
接合面と同じ長さに切り出します。
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接合面の両側に接着することで
支柱の接合強度を向上させます。
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片側に補強材を
セットします。
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隙間なく接着剤を
流し込み接合します。
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この時点で支柱と底板は既に十分な強度で
接合されています。ジグから解放します。
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反対側にも補強材を
取り付け、接着します。
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接合面の強度は、周囲の材料強度を上回っているはずです。
過大な外力が加わると、先に支柱か底板が破断します。
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必要な9本の支柱が組み上がりました。目測では
垂直が狂っている様子は確認できません。さて、
問題はパネル本体をこの支柱に、どのようにして
取り付けるかです。色々と思考した結果は・・
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長さが支柱上端からパネル下端に及ぶ
細長い部材(短冊)を切り出します。
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短冊の途中に等間隔で
3か所の穴を開けます。
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短冊を支柱の前端に揃えて
2枚を重ね合わせます。
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位置がずれないように
クリップで固定します。
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短冊に開けた穴をテンプレートにして
支柱側にも同位置に穴を開けます。
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この短冊はパネル本体側に
取り付けることになります。
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パネルと支柱の固定方法を説明します。短冊をパネル本体に接着しておき、支柱を
挟んでネジを通して固定します。取り付け作業が簡単になり、パネル単位で脱着が
可能になります。万一パネルを交換する必要が生じた場合にも対応できます。
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パネル本体を用意します。切断が難しい長手方向は、できるだけ
(工賃が生じない範囲で)材料屋さんでカットしておいてもらいます。
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短冊の取り付け位置は、パネル両端では
端から正確に2.5mmだけ後退させます。
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支柱の厚み5mmに2分の1ずつパネルが被るから
です。簡単なジグを使用して位置決め、接着します。
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折り曲げや湾曲を含む全長5mを超えるパーティションを、果たして
正確かつ綺麗に据え付けることができるでしょうか。このパネル固定
方法がうまく機能するか、実際に現場で作業してみないと分かりません。
過去に同様の施工実績などあるわけがありません。ですが、他の業者
さんとてアクリルパーティションに関しては同じような状況でしょう。
ご期待に沿うべく、無い知恵を絞り工夫を凝らすしかありません。
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