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海外製FMラジオの受信帯域変更 その1(2018.3.22)


海外向け仕様の製品を購入されたのか、あるいは海外に実際に出向いて
行った先で購入されたのか、日本国内ではFMを受信できないラジオです。
何とか日本の放送を聴けるようにして欲しいとのご依頼をいただきました。

 

日本製品にはあまり見かけない
シンプルな形状と斬新な色使いです。

 

イエロー光沢の表パネルに玩具ライクな
操作ボタンが並びます。洗練されています。

 

米国ボストンにあるTivoli Audio社製、アラーム
機能付きAM・FMレシーバーSong Bookです。



現在日本国内に代理店がありますが、
Song Bookは既に販売終了しています。
 

販売当時、日本国内向け仕様は
用意されていなかったのでしょう。

 

取扱説明書です。全て英語表記ですが、
操作が簡単なので眺めるだけで分かります。

 

それでも確認しておかなければならないのはここです。FMラジオの受信周波数が
87.5MHz~108MHzです。これでは日本国内の主要な放送は受信できません。

 

乾電池を入れて動作を
一応確認してみます。

 

セレクターをFMラジオに切り替えます。
モバイル用AUX入力が付いています。
 

チューニングを操作し最低受信周波数に
合わせます。確かに87.5MHzです。

 

最高受信周波数に合わせると108.0MHzです。
きっかりデジタル表示で変えようがありません。

 

実を言いますと、守谷工房はRF(高周波系)には
強くありません。何の方策もなくバラしてみます。

 

4本のネジを緩めるだけで簡単にカバーが
開きます。爪による凝った篏合などありません。

 

Henry Klossによって培われた高品質なアナログ
オーディオが、現在の実装技術と合体しています。

 

手前パネル側にスピーカー、デジタル表示、操作ボタン、
背面側本体にメイン基板とバッテリーホルダーがあります。

 

RFに弱い工房がどこから手を付けて良いのか・・、ネットを検索すると
海外版FMラジオを日本国内仕様に改造する記事がいくつかあります。

 

どの記事にも共通するのは、FM電波の受信
部分が旧来のアナログ方式であることです。

 

特徴としていくつものRFコイルが使われ、
局部発信や周波数変換・・をやっています。

 

コイルの径や巻数でキャリア周波数を
決めているのであれば、この辺の部品でしょう。

 

基本はコイルの仕様変更ですが、数100pFの
コンデンサを並列に入れる方法もあります。

 

数MHzでも受信周波数を変更できるか、
有り合わせのコンデンサで実験してみます。

 

結果は・・あっさり失敗です。理由は明白、
今時のFMラジオですからPLL方式です。

 
専用チップが使われるPLL(シンセサイザー)方式では、RF系の部品を調整したところで
受信周波数の変更ができるわけがありません。ご依頼主様が「特に急がない」と仰って
いるのをいいことに、ディスクリート部品を変更する方法に失敗して以降、1年以上も放った
ままにしてしまいました。正確には、しばしば思い出しては改造方法を探しておりました。
 

そして最近になり、全く別の方法にたどり着きました。いつものように「周波数」、「変換」
あたりでネット検索していると、カー用品の中に面白いパーツを見つけました。輸入された
外国車に装備されているオーディオシステムは、そのままではFMラジオも海外仕様です。
この「FMバンドの周波数コンバーター」は、外国車のFMラジオで日本国内のFM放送を
受信できるようにするパーツです。カー用品なので車上仕様のコネクタやコードが使われ、
それなりのケースに収まっています。近所のカー用品店で見かけた覚えはありません。

 

中国で製造されており、パッケージも
中国語表記、Amazonで販売されています。

 

車のアンテナ配線を入力するメスコネクタ、変換された
電波を出力するオスコネクタ、電源コードが出ています。

 

いかにもカー用品風情の小さなケースです。
内部の基板のみ必要なので分解します。

 

ネジ固定でもなく、まともに接着されて
いる様子もなく、ドライバでこじ開けます。

 

なんとなく予想していましたが、「これで
大丈夫か?」という寂しい回路基板です。

 

回路基板を取り出しました・・、取れてきた感じです。周波数を
シフトさせるため14MHzのクリスタルが組み込まれています。
 

14MHzあれば十分国内の放送帯域に入ります。
アンテナの入出力コネクタ・ケーブルを取り外します。

 

アンテナケーブルの代わりにビニルコードを接続し、
Song Book内部でアンテナ配線に割り込ませます。

 

周波数コンバーターは12Vの電源を必要とします。
Song Book内部で電源の取り出し先を探します。

 

ACアダプタ・乾電池いずれの使用時も、電源スイッチ
ON・OFFにより電力が供給される必要があります。

 

コンバーター基板から出ている
電源の配線を接続します。

 

利得を確保するため、アンテナの入出力
配線をシールド線に変更することにします。

 

外部ロッドアンテナの引き込み端子が、本体内部で
メイン基板のアンテナ入力端子に接続されています。

 

接続コードを取り外し、両端の金具を
残した状態で切断し2分します。

 

アンテナ入出力を引き出したシールド線に
接続すれば、本体への配線が簡単です。

 

配線も含めてこのサイズであれば
十分本体内に収めることが出来ます。

 

表パネル側のカバーと干渉しない空間に基板を
取り付けます。グルーガンで簡単に接着します。

 

コンバーター基板から出した
アンテナの入出力を配線します。

 

この方法が成功すれば、Song Book本体には
何ら変更を加えず改造できることになります。

 

元の海外仕様に戻すことも簡単です。
アンテナ周りの配線を整えます。

 

本体を元通りに組み付けます。内部の
配線を整理しながらカバーを閉じます。

 

長い月日を無駄に費やしましたが、
合理的な解決方法に行き着きました。

 

本体をネジ固定し、いよいよ動作確認に入りますが・・。
そう言えば改造前にコンバーターのテストをしていない・・

 

全く何も変わっていません、90MHzを超えるFM
補完放送ばかり受信されます。またもや失敗です。

 
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