守谷工房のリペアへ                守谷工房Topへ

ラジオカセット修理(2016.10.22)

パナソニック社製ラジオカセット修理のご依頼です。壊れてしまった・・とだけ故障の
状況を伺っております。2007年頃の製品でアナログ時代の完成域にあった1台です。
 

パナソニック社WEBの生産終了品ページに
現在もまだ製品スペックが紹介されています。


取扱説明書もダウンロード
することができます(PDF)。
 

テープを逆に入れ替える必要のない
オートリバース機構を備えています。


テープを反転再生する際には、磁気ヘッドが機械
的に180度回転して再生トラックを変更します。
 

お預かりしたこの1台は、長年の使用を経て外装が
汚れています。表面全体がべた付いた感じです。
 
 
操作ボタン類の凹凸に埃が入り込み
奥まった所にはこびり付いているようです。
 

背面のバッテリーホルダーのカバーを
開けてみると・・大変なことになっています。
 


乾電池が劣化、ほとんど腐食しています。
かなりの年月入れられたままだったようです。
 

ここまで腐食の進んだ乾電池は見たことがありません。電解
液が固化しており、意外と周囲への浸食が少ないようです。
 

粉末化した乾電池の風化物を
先に取り除いておきます。
 

バッテリーホルダー内のバネ端子が錆付いている
程度です。内部基盤にはほとんど影響がありません。
 

電源を入れてみます。直接AC電源を利用することもできます。ラジオは(AM・FM
とも)正常に受信できます。つまり音声増幅回路にも問題がないということです。


続いて音楽テープを再生してみます。
カセットテープに触るのは何年かぶりです。
 

再生ボタンを押して数秒後に停止、
テープをイジェクトしてみると・・
 

キャプスタンによりテープが引き出されて
ピンチローラーの奥に入り込んでいます。
 

再生したままにすると、テープが延々と引き
出されて中でクラッシュ状態になります。
 

テープを入れずテープホルダーを開けたまま再生ボタンを押すと、巻き取り側のリール
軸が回転していません。巻き取られていないから、引き出されたままになるわけです。
 

リール軸の駆動系に何かトラブルがあるに
違いありません。分解にかかります。
 

本体は典型的な前後2ピースからなる成形
筐体で、背面から長ネジで固定されています。
 

計6本のネジを緩めると、本体は
簡単に前後に分離できます。
 

分離した前後の各筐体です。相互に入り
組んだ結線もなくすっきりした設計です。
 

前側筐体にスピーカが取り付けられており、スピーカ
への配線のみがコネクタを介して延びています。
 

テープを駆動する機構部分が露わになり
ました。回転系は裏側に実装されています。
 

入り込んでいる綿埃を軽くクリーナーで取り除いて
おきます。内部の劣化や汚れはさほどでもありません。
 

裏側にアクセスするため駆動
機構をユニットごと取り外します。
 

テープの再生方向を示すLEDの
下に固定ネジが隠れています。
 

ラジオの受信周波数インジケータ(機械式)の駆動
レールが、駆動ユニット上に覆い被さっています。
 

レールを外しておかないと
駆動ユニットは取り出せません。
 

レールに渡されている細いコードに注意
しながら、駆動ユニットを引き出します。
 

磁気ヘッドの信号用、各センサーの信号用
など、数本のコードが接続されています。
 

ようやく駆動ユニットの裏側を点検することができ
ます。裏返した瞬間・・何となく違和感が漂います。
 

巻き取り側・送り出し側のリール端、モータに近いユニットの
下部にプーリが見えます。が、ベルトが掛かっていません。
 

後側筐体の下方隙間を見ると、何か
黒い紐状のものが落ちています。
 

ピンセットで拾い上げてみると
黒色の立派なゴムベルトです。
 

何らかの原因でプーリから脱落したのでしょう。
巻き取り側リールに回転が伝達されていません。
 

原因が分かりました。取り付け直して
見ると、ベルトが極端に伸びています。
 

純正部品は入手できないまでも汎用の
ゴムベルトに交換したいところです・・
 

食品包装用の緑色の輪ゴムがぴたりと合います。文具用の普通の
輪ゴムよりもひと回り径が小さく、僅かに太くてしっかりしています。
 

ここで電源を入れてテストします。正方向では左側
ピンチローラが下がり、左側のリールが回転します。
 

逆方向では、右側ピンチローラが下がり、同時に磁気
ヘッドが反転し右側のリールが回転します。正常です。
 

原因が判明し駆動ユニットを修理
できたので、元通りに組み直します。
 

基板から駆動ユニットに延びる配線を
ユニット下部の隙間に丁寧に収めます。
 

再生モードの切り替えスイッチ、正逆再生
切り替えスイッチをブラケットごと取り付けます。
 

切り替えスイッチブラケットの
上から固定ネジを締めます。
 

このスイッチレバーが下に出ている
爪を正しく上下させるか確認します。
 

駆動機構周りの組み立てを終えました。磁気
ヘッドの反転機構など精緻なメカニズムです。
 

折角機能の復元に成功したので、隙間に入り込み外装に
こびり付いた垢や汚れを落とし全体をリフレッシュします。
 

スイッチ類は原則的に取り外して清掃します。
スイッチの入る溝の内部も綺麗にします。
 

回転ツマミが2個、スライドツマミが3個使用
されています。いずれもベトついた感じです。
 

クリーニング前のスライド
ツマミの表面です。
 

家庭用洗剤と一部コンパウンドを
使用してクリーニングしました。
 

ツマミのない状態で溝の内部を
丁寧にクリーニングします。
 

クリーニング後の回転ツマミです。
綺麗な光沢が戻っています。
 

回転ツマミの取り付け位置、
溝の中に埃が入り込んでいます。
 

細いドライバーの先などを利用して
汚れを完全に掻き出しました。
 

Panasonicのロゴが刻印されたキャリング
ハンドルです。非常に綺麗になりました。
 

汚れがこびり付いてはいたものの、
材質自体はほとんど傷んでいません。
 

前側筐体のクリーニングに入ります。
アクリル材が一挙に光沢を取り戻します。
 

洗剤と樹脂用コンパウンドを併用し
柔らかいウエスで拭き取ります。
 

カセットテープホルダーの表面を清掃して
います。新品に近い光沢が蘇りつつあります。
 

スピーカの配線を接続し、前後の本体
筐体をゆっくりと合体させます。
 

固定ネジを元の位置で締め込みます。強く締め
過ぎてネジの受け側を壊さないよう注意します。
 

バッテリーホルダ内のバネ金具を研磨します。乾電池の
液漏れによる腐食で導通に支障があるはずです。
 

修理作業完了です。この状態でカセットテープの両方向での
再生、念のためラジオの受信も再度動作確認を行います。
 

パッキングしてご依頼主にお届けします。
ラジオカセットの時代、まだまだ終わっていません。

 
守谷工房のリペアへ                守谷工房Topへ