
パナソニック社製ラジオカセット修理のご依頼です。壊れてしまった・・とだけ故障の
状況を伺っております。2007年頃の製品でアナログ時代の完成域にあった1台です。
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パナソニック社WEBの生産終了品ページに
現在もまだ製品スペックが紹介されています。
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取扱説明書もダウンロード
することができます(PDF)。
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テープを逆に入れ替える必要のない
オートリバース機構を備えています。
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テープを反転再生する際には、磁気ヘッドが機械
的に180度回転して再生トラックを変更します。
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お預かりしたこの1台は、長年の使用を経て外装が
汚れています。表面全体がべた付いた感じです。
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操作ボタン類の凹凸に埃が入り込み
奥まった所にはこびり付いているようです。
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背面のバッテリーホルダーのカバーを
開けてみると・・大変なことになっています。
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乾電池が劣化、ほとんど腐食しています。
かなりの年月入れられたままだったようです。
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ここまで腐食の進んだ乾電池は見たことがありません。電解
液が固化しており、意外と周囲への浸食が少ないようです。
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粉末化した乾電池の風化物を
先に取り除いておきます。
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バッテリーホルダー内のバネ端子が錆付いている
程度です。内部基盤にはほとんど影響がありません。
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電源を入れてみます。直接AC電源を利用することもできます。ラジオは(AM・FM
とも)正常に受信できます。つまり音声増幅回路にも問題がないということです。
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続いて音楽テープを再生してみます。
カセットテープに触るのは何年かぶりです。
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再生ボタンを押して数秒後に停止、
テープをイジェクトしてみると・・
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キャプスタンによりテープが引き出されて
ピンチローラーの奥に入り込んでいます。
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再生したままにすると、テープが延々と引き
出されて中でクラッシュ状態になります。
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テープを入れずテープホルダーを開けたまま再生ボタンを押すと、巻き取り側のリール
軸が回転していません。巻き取られていないから、引き出されたままになるわけです。
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リール軸の駆動系に何かトラブルがあるに
違いありません。分解にかかります。
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本体は典型的な前後2ピースからなる成形
筐体で、背面から長ネジで固定されています。
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計6本のネジを緩めると、本体は
簡単に前後に分離できます。
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分離した前後の各筐体です。相互に入り
組んだ結線もなくすっきりした設計です。
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前側筐体にスピーカが取り付けられており、スピーカ
への配線のみがコネクタを介して延びています。
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テープを駆動する機構部分が露わになり
ました。回転系は裏側に実装されています。
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入り込んでいる綿埃を軽くクリーナーで取り除いて
おきます。内部の劣化や汚れはさほどでもありません。
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裏側にアクセスするため駆動
機構をユニットごと取り外します。
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テープの再生方向を示すLEDの
下に固定ネジが隠れています。
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ラジオの受信周波数インジケータ(機械式)の駆動
レールが、駆動ユニット上に覆い被さっています。
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レールを外しておかないと
駆動ユニットは取り出せません。
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レールに渡されている細いコードに注意
しながら、駆動ユニットを引き出します。
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磁気ヘッドの信号用、各センサーの信号用
など、数本のコードが接続されています。
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ようやく駆動ユニットの裏側を点検することができ
ます。裏返した瞬間・・何となく違和感が漂います。
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巻き取り側・送り出し側のリール端、モータに近いユニットの
下部にプーリが見えます。が、ベルトが掛かっていません。
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後側筐体の下方隙間を見ると、何か
黒い紐状のものが落ちています。
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ピンセットで拾い上げてみると
黒色の立派なゴムベルトです。
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何らかの原因でプーリから脱落したのでしょう。
巻き取り側リールに回転が伝達されていません。
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原因が分かりました。取り付け直して
見ると、ベルトが極端に伸びています。
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純正部品は入手できないまでも汎用の
ゴムベルトに交換したいところです・・
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食品包装用の緑色の輪ゴムがぴたりと合います。文具用の普通の
輪ゴムよりもひと回り径が小さく、僅かに太くてしっかりしています。
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ここで電源を入れてテストします。正方向では左側
ピンチローラが下がり、左側のリールが回転します。
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逆方向では、右側ピンチローラが下がり、同時に磁気
ヘッドが反転し右側のリールが回転します。正常です。
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原因が判明し駆動ユニットを修理
できたので、元通りに組み直します。
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基板から駆動ユニットに延びる配線を
ユニット下部の隙間に丁寧に収めます。
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再生モードの切り替えスイッチ、正逆再生
切り替えスイッチをブラケットごと取り付けます。
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切り替えスイッチブラケットの
上から固定ネジを締めます。
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このスイッチレバーが下に出ている
爪を正しく上下させるか確認します。
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駆動機構周りの組み立てを終えました。磁気
ヘッドの反転機構など精緻なメカニズムです。
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折角機能の復元に成功したので、隙間に入り込み外装に
こびり付いた垢や汚れを落とし全体をリフレッシュします。
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スイッチ類は原則的に取り外して清掃します。
スイッチの入る溝の内部も綺麗にします。
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回転ツマミが2個、スライドツマミが3個使用
されています。いずれもベトついた感じです。
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クリーニング前のスライド
ツマミの表面です。
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家庭用洗剤と一部コンパウンドを
使用してクリーニングしました。
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ツマミのない状態で溝の内部を
丁寧にクリーニングします。
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クリーニング後の回転ツマミです。
綺麗な光沢が戻っています。
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回転ツマミの取り付け位置、
溝の中に埃が入り込んでいます。
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細いドライバーの先などを利用して
汚れを完全に掻き出しました。
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Panasonicのロゴが刻印されたキャリング
ハンドルです。非常に綺麗になりました。
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汚れがこびり付いてはいたものの、
材質自体はほとんど傷んでいません。
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前側筐体のクリーニングに入ります。
アクリル材が一挙に光沢を取り戻します。
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洗剤と樹脂用コンパウンドを併用し
柔らかいウエスで拭き取ります。
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カセットテープホルダーの表面を清掃して
います。新品に近い光沢が蘇りつつあります。
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スピーカの配線を接続し、前後の本体
筐体をゆっくりと合体させます。
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固定ネジを元の位置で締め込みます。強く締め
過ぎてネジの受け側を壊さないよう注意します。
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バッテリーホルダ内のバネ金具を研磨します。乾電池の
液漏れによる腐食で導通に支障があるはずです。
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修理作業完了です。この状態でカセットテープの両方向での
再生、念のためラジオの受信も再度動作確認を行います。
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パッキングしてご依頼主にお届けします。
ラジオカセットの時代、まだまだ終わっていません。
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