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SONY製CDラジオカセットコーダ修理(2016.12.14)

ご近所の方からのご依頼で、SONY製CDラジオカセットコーダの修理です。今に
続く需要に応えるため、かつてSONYが生産していた実にバランスの良い製品です。
購入後ほとんど使用していないのに、気が付くと故障していたそうです。サービスに
問い合わせるも既に製造終了・補修部品がなく、修理不可能と言われたそうです。
 

ゆとりのある大型の筐体内に、2台のカセット
テープデッキとCDプレーヤを内蔵しています。


背面の銘板で型番を確認します。
CFD-W77、2008年製です。
 

動作確認を行います。ラジオとCD再生は問題
ありません。迫力のあるクリアな再生音です。
 

ご依頼者から伺っていた問題は
カセットテープの再生です。
 

2台のデッキが使い易く配置されて
います。両方とも動作確認します。
 

市販のミュージックテープを
探し出し、視聴用音源にします。
 

再生ボタンを押すと音楽が流れ出します・・が、明らかに異常です。音程(音の高さ)が
不規則に変化して音楽になっていません。テープが伸び縮みしているか、再生速度が
一定に保たれていないようです。多くの場合、駆動ベルトや軸受部の劣化が原因です。


8割方修理可能だろうと簡単に
考えながら分解作業に入ります。
 

筐体に矢印のあるネジを緩めると
筐体を分解することができます。
 

一部のネジはシャフトの長い
ドライバーが必要です。
 

デッキのカバーを開けた内側にも
ネジが入れられています。
 

筐体が前後に分離してきました。精密に組み
合わされているので慎重に引き離します。
 

筐体の前後にケーブルが配線されています。
無理に引き抜かないよう注意を払います。
 

束ねられたビニルコードに加え、FFCも数枚使用
されています。SONYらしい巧妙な実装です。
 

筐体が完全に前後に分離しました。背面側に
電源部・チューナ基板・CDドライブが残ります。
 

全面側の筐体内部です。手前の基板が信号処理・制御関係の
主回路部です。不具合の含まれるデッキ部はその奥にあります。
 

メイン基盤を取り外します。FFCが絡まり
ビニルコードも長さが最小限です。
 

ほとんどのコネクタを抜き、コード類を
解放してようやく基板が倒れてきます。
 

1個のモーターで2台のデッキを駆動して
います。モーター不良の可能性もあります。
 

フライホイールの回転がやや重い
印象です。軸受に潤滑剤を差します。
 

年月が経っているのでゴムベルトの
劣化(伸び)も考えられます。
 

この時点でデッキ内部へのアクセスが
限界です。さらに筐体を分解します。
 

デッキカバーを取り外しデッキの操作
パネルを固定している小ネジを緩めます。
 

デッキの機構部が外れてきました。これで
モーター周辺部のメンテが可能になります。
 

金属製のベースの上にモーターマウントがネジ止めされ、
モーターはそのマウントに内側からねじ止めされています。
 

4本のゴムベルトを取り外して点検します。深刻な
劣化はないようです。保護剤を吹きかけます。
 

4端子の一般的なDCサーボモーターです。使用
時間が少ないので劣化は考えにくいのですが・・
 

モーター(キャプスタン)の回転数を調整
するトリマーです。正常に機能しています。
 

モータからの配線は、このコネクタの
端から4ピンに接続されています。
 

モーターの電力を制御している辺りに軽く指を
触れてみると、回転数が不自然に変化します。
 

モーターのサーボ系が正しく機能していないようです。
端子部分を詳しく点検すると、半田付けが怪しい感じです。
 

配線の半田付けをいったん除いて、パターンを清掃し再度付け直します。
モーターの取り付け位置を120度変更し、配線長に余裕を持たせます。
 

モーターからの回転数信号(パルス)が正しくフィードバックされていなかったようです。
SONY本来の性能が復活し、音程がふらつくどころかワウフラッターの少ない力強くかつ
澄んだ再生音が聞こえてきます。カセットテープが意外と高音質だったことを再認識します。

*内部の実装(特に配線)が非常にタイトで、元通りに組み上げるのに多くの労力を
費やしました。写真撮影の余裕などなく作業記録が残っていないのはそのためです。

 
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