平成28年新年最初のリペア案件です。家庭用オーブントースターの修理を依頼されました。
重量感のある筐体で室内も広く、全体的に造作の大きい製品です。リゾートにあるキッチン付
コンドの雰囲気がします。ご依頼の修理内容は、調理終了時に「チン」という鈴音がしなく
なった・・とのことです。(おそらく)修理は簡単でしょうけれど、現代の家電製品は、筐体の
構造を理解して、故障個所まで辿り着くのが大変です。2次災害を起こさないよう分解します。
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ゆとりのある前面ドアを開けてみます。プレートが静かに
せせり出てきます。日本製のようにカチャカチャしません。
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前面右端に縦方向に揃えられた操作ダイヤルです。
調理中は室内で15Wの電球が穏やかに点灯します。
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背面の左下に製品シールが貼り付けられています。
Delonghi社(イタリア)製です。確かにデロンギの雰囲気です。
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Delonghi internationalの
WEBページです。
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デロンギ ジャパンの
WEBページです。
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分解に先立って、前面パネルにある
操作ダイヤルを全て取り外します。 |
ダイヤル内側の軸周りにスプリングが巻き
付けられており、シャフトに固定されます。
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ベルは本体右端のスペースに組み込まれて
いるので、右側面パネルを取り外します。
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上の操作ダイヤル内側のネジは
右側面パネルを固定しています。
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パネルの背面を固定している2本のネジは溝が星形の特殊
ネジです。専用のドライバが必要ですが・・何とか緩めます。
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本体に固定されている金具にスリット加工が
あり、右側面パネル内側の爪が嵌っています。
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爪がスライドして外れるよう
パネルを後方に移動させます。
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ここまで来るのがひと山です。
内部の電気配線が現れました。
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「チン」という音がするのはこの鈴です。
これが鳴らない・・分かりやすいです。
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鈴は真中にある操作ダイヤルに取り付けられて
います。正面側からネジを緩めて取り外します。
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調理時間を決める機械式タイマーです。時間が経過すると
何か槌のようなものが鈴に当たって音がするのでしょう。
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小さなナットを緩めて鈴を取り外しました。内側に
見える丸形の金属部品が槌代わりのようです。
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表側を分解していきます。爪やネジによって
なかなか堅牢に組み立てられています。
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外側の金属カバーを取り外すと
タイマーの機構が見えてきました。
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驚くことに・・そこに組み込まれているのは「時計」
です。ゼンマイ・ガンギ・テンプ・・が見えます。
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(たかが?)調理時間設定用のタイマーに、ほとんど本物の時計メカが
使われています! ウェストミンスター置時計の修理が甦ります。
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シャフトが裏側に飛び出た部分に、精巧なカムが取り付けられています。
カムの溝にストッパーが落ちて、回転が止まり電源スイッチを切ります。
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電源が切れる際に、ストッパーから
伸びる突起が槌を動作させるようです。
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槌の代わりをする小さな金属部品です。窓の手前に
かかるアーム部が、ストッパーの突起と交差します。
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金属部品を鈴から遠ざけておくために、
繊細なスプリングが取り付けられています。
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しかし、分解直後のスプリングの状態(位置)には
違和感を覚えます。槌を引き戻す力が強過ぎます。
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スプリングの右端はシャフトにかかるのではなく、鈴の内側に
大人しく収まって極小さな力で槌を引き戻しているはずです。
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スプリングの小さな力を押しのけて槌を叩くのは、電極
切片に取り付けられているこのコイルスプリングです。
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コイルスプリングとのバランスを取るには、引き戻し用
スプリングがシャフトにかかっていてはいけません。
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表側の部品を元通り組み戻します。爪折に
よる固定とネジ止めが併用されています。
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ツメを折り曲げるとダイヤルとして
部品全体の強度が高まります。
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スプリング同士の微妙なバランスの上で槌が作動します。ダイヤルを
操作すると、置時計にも似た繊細な「チン」が聞こえてきました。
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各部を丁寧に組み戻して修理完了です。クリスタル発振子で無用に精密な時間を測り、
電子合成の耳障りな「ピピピッ」を鳴らす日本製家電とは世界が異なります。華美にあらず
精悍でもなく、程良い品とゆとりを感じさせるDelonghi社の普通で秀逸な製品でした。
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