連休前から延々と修理が続いているデスクライトです。連休中は休業して
いたものの不具合の原因をずっと考えておりました。インバーターや
コンバータなどパワーエレクトロニクスの知識の低さを痛感させられます。
いくら「ダメモト」でも、依頼主をこれ以上お待たせするわけには行きません。
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この半月間に手を入れた箇所です。FETの異常発熱はドレイン電流を減少させれば抑制できると
仮定して、各部の回路定数を在庫部品の範囲内で変更してみました。蛍光灯を点灯させる特殊な
発振回路なので、どれも効果はなく、大きく変更すると点灯しなくなります。FETに放熱器を取り付ける
こともできますが、抵抗器や電解コンデンサまで過熱しているため、いずれ破損する危険があります。
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インバーター回路に関する情報を探し回っていると
ある獣医さんが蛍光灯を修理した記事を見つけました。
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200V20W用の回路を100V用に改造しています。抵抗を
僅か2本変更するだけですが、詳しく説明されていません。
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それでも200V仕様を100V用に転用する方法があるという
ことです。Amazon経由で中国から基板を取り寄せました。
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近年LED化が進行し、このような簡単な基板は国内から
姿を消してしまいました(一部OEM品が5000円もします)。
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100V用に転用する方法を探り、変更する必要のある部品を特定します。やはり
回路図がないと分かりにくいので、基板から回路図を起こします。保護回路などが
省かれたかなり簡略的な設計です。FETではなくパワーTRが使われています。
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雑なこと極まりない手書き回路図をエディタで清書します。元の回路に比べ半分程度の部品で
構成されています。試しにこのままの状態で通電してみると、かろうじて蛍光灯は点灯します。
しかし、当然のことながら半分の10W程度に落ちたかのような暗さです。大学時代の先輩に
相談した際に、「元の回路の電源は倍電圧だ」と指摘されたのを聞き、思い付きました。
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200V仕様インバーター回路の電源部は、整流ダイオード4本を組んだブリッジ回路
です。AC200Vの入力をほぼ同電圧の直流(脈流)に変換します。つまり、AC100Vの
入力に対しては、元の回路と同じように倍電圧回路を適用すれば等価になるはずです。
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改造は簡単です。4本の整流ダイオードのうち
2本を電解コンデンサに置き換えるだけです。
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電解コンデンサは前回余分に購入して
おいた、22μF200Vを使用します。
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整流ダイオードを外します。「基板は100V用も200V
用も同じだ」、先輩が言っていましたが確かにそうです。
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2本の電解コンデンサが気味
悪いくらいぴたりと収まります。
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裏側でしっかり半田付けします。上手く
すると実質的な修理作業はこれだけです。
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電源と口金へ仮配線を行い
ここで点灯試験を行います。
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正常に点灯しました。不具合の残る元のインバーター回路では蛍光管両端の
フィラメントに一部電流が流れ続け、赤く光って発熱していました。そのような
問題もありません。パワーTRを始め基板上の部品にも発熱はありません。
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口金の根元にコンデンサがあり2線式なので
基板上のフィルムコンは取り除いておきます。
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元の基盤と入れ替え作業を終えました。
基板のサイズまでほぼ同じです。
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倍電圧回路の出力電圧を測定しています。
デジタル回路計の交流電圧で236Vです。
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元の基板に付いていたブラケットをそのまま利用
します。ネジ穴がないので接着剤で固定します。
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本体ボックス部に元通り収まりました。実は今頃になり「TK8A50D」を見つけたので、
入手して元の基板も再修理しようと思います。先輩の話では、耐圧と許容電流だけでなく
FETの僅かな動的特性の違いが、回路の安定性を損ない発熱に結び付くそうです。
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不具合を解決するのに多くの日数を費やしました。が、
グッドデザイン賞を受賞している高品質の照明器具です。
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急速にLED管への移行が進み、発光部の小型・軽量化に
よりZライトのデザインはさらに進化しているようです。
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