施設内仕切りドアの建付けが劣化し、ドアの開閉に支障が生じています。
ドアの前後には換気扇による強烈な風圧がかかり、隙間から風切音が
聞こえています。クローザーに長期間無理な力が加わり続けたせいで
しょう、オイルが漏れて表面を伝い空気中の煤が付着し汚れています。
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1.現状の確認 |
丁番の様子を確認します。大型の丁番が使用されて
います。その上にもう1枚小さな丁番が見えます。
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大型丁番はドア上下に2枚取り付けられて
います。見た目くたびれた印象があります。
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ドア上端の納まりを見ています。すぐ上の
アルミ製サッシと不均一な隙間があります。
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クローザーの動作を確認します。上部桟の下面に
汚れが広がり、サッシの縁に損傷が見られます。
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ドアの閉まり具合を見ます。ハンドルを
操作するとラッチは正しく出入りします。
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ストライカーも問題ありませんが、ラッチとの位置関係が
上下方向にずれており、ドアがロックされません。
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丁番の取り付け具合を見ます。以前に交換された跡が
あり、上方の小型丁番は破片が残っているだけです。
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大型の抜き差し丁番が使用されています。
目視で分かるほど傾いて取り付けられています。
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下側の丁番は当初のままのようですが、やはり傾いて
います。高さ調節のためワッシャが数枚入れられています。
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抜き差し丁番はドアの取り外しができて便利ですが、
強度的に不利で写真のようにシャフトが変形しています。
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2.丁番の交換 |
丁番の強度不足によりドアが傾き、シャフトにワッシャを
入れて高さを調節しながら何とか使用されてきたようです。
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ドアの取り外しはできなくなりますが、強度と安定性を
考えて、普通の120mm平丁番を使用します。
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上・中・下3か所に丁番を取り付け
ドアにかかる荷重を分散させます。
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丁番の交換を終えたところでドアの納まり具合を
確認します。スムーズに開閉し剛性感があります。
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ドアが正しい高さに取り付けられたことでラッチとストライカーが
噛み合いロックされます。ドアの隙間も一定に保たれています。
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3.上部サッシの補強 |
クローザーの周辺を確認します。漏れたダンパー
オイルがドア表面を伝い下方に流れています。
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隙間を通る空気に含まれる煤が漏れたオイルで
集積し、クローザー上部がひどく汚れています。
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上部サッシの縁に広範囲の損傷が見られます。
ドアの上端が繰り返し衝突し捲れたようです。
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上部サッシの下面にはドア上端面が擦れた跡が残って
います。アーム取り付けステーの固定にも無理があります。
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上部サッシがドアと衝突する原因が分かりました。隣の
垂直サッシとの固定が緩く、上下左右にぐらぐら動きます。
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天井に至るアクリル窓の重量が加わり、徐々に
落ちてきてドア上端と衝突したのでしょう。
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本来サッシを固定しているネジを増し締めするにはサッシ全体を分解しなければ
なりません。そこで5mm厚アルミ平行棒を使用して補強・固定板を製作します。
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サッシ材の両縁は高さ5mmの補強リブが
出ているので、それを回避する工夫が必要です。
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穴あけのためポンチを打ちます。小さな部材に荷重が
集中するので、周囲4か所のネジ止めとします。
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ボール盤で径4mmの穴を開けます。
アルミ材なので切削油なしで加工します。
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10mmのドリル刃で開口部
周囲のバリを削り取ります。
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バリが残っているとアルミ材を重ね
合わせた際に、密着しないからです。
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補強リブを回避するため、別に切り出した
高さ調整用の5mm厚アルミ板です。
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補強・固定板本体に瞬間接着剤を
用いて仮止めしておきます。
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高さ調整用アルミ板が途切れて隙間の
空いている部分に補強リブが入ります。
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瞬間接着剤で仮止めされている
状態でネジ穴を貫通させます。
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2枚のアルミ板に正確に同じ位置で
ネジ穴を開けることができます。
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補強・固定板の表側から、ネジ穴を皿モミします。
美観的にトラスネジ(丸頭)は使用しません。
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補強・固定板が完成しました。
これを携えて再度現場に赴きます。
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仕切りの表側・裏側両面から挟むように補強・固定板を取り
付けます。ぐらついていた上部サッシはびくともしません。
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4.通風孔取り付け |
仕切りは全面が密閉構造で、ドア閉鎖時は
通風の余地がなく大きな風圧が生じています。
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仕切りの一部に通風孔を設け、
風圧を緩和することにします。
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市販の通風孔グリルを使用します。平面取り付けに
対応していないため、内側周囲に材料を補います。
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仕切り平面部にネジ止めするため
グリルごとネジ穴を開けます。
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仕切りの通風孔設置位置に
必要な開口部を設けます。
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ドアや仕切りの表面はアルミ薄板で覆われて
います。ジグソーで一挙に切断します。
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内部は芯材に段ボール紙が使われており
ジグソーで同時に切断してしまいます。
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予め簡単な加工をしたグリルを取り付けます。
反対側にはシャッター付き(開閉式)を用います。
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グリルに開けてあるネジ穴位置で
仕切りに下穴を開け、ネジで固定します。
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通風孔の設置完了です。
風圧がかなり和らぎました。
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5.クローザーの交換~修理完了 |
元のクローザーを取り外します。ダンパー
オイルにより煤が固着しています。
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家庭用洗剤を使い煤・油汚れを
丁寧に取り除きます。
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アームおよび取り付けステーを外します。100mm近い
ネジがサッシを貫通、反対側に突き出て固定されていました。
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上部サッシの下面に取り付けられていた化粧用
サッシです。損傷がひどいので取り除きます。
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化粧用サッシの折り曲げ部が干渉しないので
ステーを正しい位置に取り付けることができます。
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クローザー本体をドア上部に取り付けます。型紙が
用意されているので簡単かつ正確に作業できます。
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クローザー周辺の作業状況です。汚れの
除去も進み全体的にすっきりした印象です。
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アームを渡して長さを適切に調整します。
クローザーに樹脂製のカバーを被せます。
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最後にクローザーの速度調整をします。使用される
方々のお好みを伺いながら、数日後に再調整します。
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スムーズな開閉状態を取り戻すことができました。しかし、全体がアルミ製で
剛性が十分ではなく常時大きな風圧が加わるため、時々点検と再調整が必要です。
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一般的な施工業者に依頼した場合、ドアおよびサッシの一部を交換することになり高額な
費用が予想されます。クローザーの取り付けは、本体とステーの取り付け位置で決まる
アームのジオメトリックが重要です(添付の型紙を使えば簡単)。大変勉強になりました。
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